年次有給休暇取得のこんなときどうする!?10つのイレギュラーな問題を解決する

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

従業員を雇ったら、考えないといけないのが年次有給休暇(一般的に有給休暇や有給、年休、有給といわれることが多いです)のこと。あらかじめ計画している通常の年次有給休暇の取得ならいいのですが、従業員が増えてくるとイレギュラーなものも増えてきます。急に言われて、仕事に支障が出るケースもありうるでしょう。
今回は、そんな年次有給休暇の取得について知っておきたいことを、ケース別に解説します。

労働基準法は今どうなっている?

労働基準法とは原則、日本で働いているすべての人に適用される法律で、名前のとおり労働の基準となる法律です。労働時間や賃金、休日や年次有給休暇などを定めています。大手企業で、残業代の未払いや定められた勤務時間以上の労働をさせていたなどの問題が明るみに出たこともあり、厚生労働省をはじめとする関係機関は今後、指導の強化や労働条件の保護などを進めていくのではないかといわれています。

年次有給休暇もその1つで、会社が労働者に対し、強制的に年次有給休暇を取得させる案などが出ているほどです。そのため経営者は、今後ますます年次有給休暇についてきちんとした知識を身につける必要があります。

イレギュラーな有給休暇

ここでは、イレギュラーな有給休暇の申請があった場合にどうすれば良いかについて、ケース別にご紹介します。そもそもの有給休暇の基礎知識については、こちらの記事で詳しく解説しています。

有給休暇の基礎知識。法律と罰則を詳しく解説

 従業員に当日、急に有給をとると言われたら?

体調不良などで、当日急に有給を取りたいといわれることは、しばしばあるでしょう。
その場合どうすれば良いでしょうか? 従業員が有給休暇を取りたい場合は使用を認めるのが、有給休暇の基本です。しかし、当日であっても絶対に有給の使用を認めなければならないかというと、そうではありません。会社には時季変更権が認められており、事業に支障をきたす場合などは、有給休暇の取得時期を変更してもらうことができます。ポイントは事業に支障をきたすかどうかです。当日申請の有給休暇については、過去の判例では、代替えの人を探したかどうか等で判決が分かれています。まずは、業務に支障をきたさないよう代わりの人を探し、それでもダメな場合は、時期をずらしてもらうよう要請しましょう。

参考:http://shakaihou.com/paid-holiday/q&a-that-day-obtain.html
   http://jinjiroumunomado.com/yuukyuukyuuka-toujitsu/

 従業員に有給を取られると人が足りなくなる場合は?

この場合も、上記で説明した時季変更権を使いましょう。あくまで代替の人がいないことが条件ですが、会社は労働者に有給休暇の取得時期を変更してもらう要請をすることができます。あくまで要請です。強制することはできないので注意しましょう。

 従業員が仕事を休んだ後に有給を申請された場合は?

休んだ後に有給を申請された場合は法律上、会社がこれに応じる必要はありません。あくまで有給休暇の基本は事前申請です。また、判例でも事後申請に応じるかどうかは会社の自由となっています。しかし風邪で寝込んで連絡できなかった場合など、有給休暇にしなければ士気が下がる場合は、認めた方が良いかもしれません。判断しやすいように、あらかじめ就業規則等で事後申請を認める場合と、認めない場合を明記しておくのも良いでしょう。
参考:http://www.roumusi-af.jp/index.php?%E6%9C%89%E7%B5%A6%E3%81%AE%E4%BA%8B%E5%BE%8C%E7%94%B3%E8%AB%8B

 法定外休日を有給にすることはできるのか?

労働基準法では、原則労働者に1週間に1日は休日を与えないといけないと定められています。これを「法定休日」といい、これ以外の休日を「法定外休日」といいます。週休2日制の場合、1日は法定休日、もう1日は法定外休日になります。

では、この法定外休日を有給休暇にすることはできるのでしょうか。答えは会社の自由です。従業員から申し出があった場合は、認めても認めなくてもどちらでもいいです。しかし都度対応が異なると混乱するので、法定外休日を有給休暇にすることを認めるかどうかは、就業規則等にあらかじめ記載しておきましょう。

 就職して1年未満で退職する従業員の有給の扱いはどうしたらいいか?

有給休暇の日数は、労働基準法で次のように条件が定められています。

・6か月間継続して勤務していること
・所定の労働日のうち8割以上勤務していること
上記2つのことを満たした場合は10日間の年次有給休暇を付与しないといけない。

そのため、1年未満で退職する従業員であっても、有給を最低10日付与する必要があります。

 パートタイマーやアルバイトにも有給を与えないといけないのか?

先ほど述べた労働基準法の条件を条件を満たしていれば、パートタイマーやアルバイトであっても有給を付与しないといけません。

 怪我などで休職しなければいけなくなった従業員の有給を前倒し(前借り)することはできるか

年次有給休暇には前倒しで渡す制度はありません。例えば、あと5日しか有給休暇が残っていなかった場合に、翌年分から数日前倒しで渡すことは認められていません。有給休暇がダメということではなく、前倒しがダメなので、その期間に通常の有給休暇とは別に、特別な有給休暇を与えるということは可能です。

 有給をとった従業員が有給休暇日に出勤してしまったら?

従業員が有給休暇を申請している日に、どうしても出勤しなければならなくなった場合、どうすればよいでしょうか? この場合は原則、有給休暇の申請を取り消して通常の出勤日にし、改めて別の日に有給休暇を取得してもらいます。欠勤や早退扱いにならないように、できるだけ1日出勤してもらいましょう。半日単位や時間で有給休暇を付与している場合は、有給が使えるように勤務時間を調整してもらいましょう。

 定年後、従業員を再雇用した場合、有給を引き継ぐことはできるのか?

できます。労働関係が継続している場合は連続して勤務しているとみなされるので、退職者を再雇用した場合は有給を引き継ぐことができます。

参考:http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/yokuaru_goshitsumon/nenjiyukyu/q5.html

 

 現段階で有給を1年間で5日取得させないと会社に罰則はあるのか?

「労働基準法は今どうなっている?」の項でも少し触れましたが、会社が労働者に対し、強制的に年次有給休暇を取得させる案が出ています。これは日本の有給休暇の取得率を上げるために、「有給休暇の消化が5日未満の人に、会社が強制的に5日間の有給休暇を消化させないといけない」という文言を労働基準法に盛りこむというものです。2016年の秋にも法案が成立するといわれていましたが、まだ成立していません(2017年1月12日現在)。

そのため、現在は有給休暇を1年に5日取得させなくても罰則などありません。ただし、いつこの案が再浮上するかわかりませんので、注視しておいたほうが良いでしょう。

まとめ

今回は年次有給休暇の取得で知っておきたいことを、ケース別に解説しました。
年次有給休暇については労働基準法によって決まっていますが、個別のケースについてまでは記載されていません。しかし、会社と従業員の間で問題になるのは、記載がないものが多いのです。今は年次有給休暇などの労働問題で、訴訟も多く起きています。
そのような事態にならないためにも、しっかりとした知識を持つことがますます重要になってくるでしょう。

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『人事労務の基礎知識』編集部
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株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。