有給休暇の基礎知識。法律と罰則を詳しく解説

執筆: 田中靖子(たなかやすこ)

そもそも「有給休暇」とは?

有給休暇とは、「一定期間勤続した労働者に対して、ゆとりある生活を保障するために、賃金を支払った状態で休暇を与える制度」のことです。

会社が従業員に有給休暇を与えることは、法律上の義務です。
従業員の有給取得を妨害した場合には、労働基準法違反となり、厳しい罰則も定められています。

しかし、日本人の有給休暇の平均取得率は、厚生労働省の発表によると、わずか約50%にとどまります。アメリカの有給消化率は70%を超えており、フランスやスペインでは100%を達成しています。

世界的に見ても、日本の有給取得率は著しく低く、厚生労働省は有給取得を推進するように繰り返し注意喚起を行っています。有給休暇のルールを正しく理解して、従業員には適正な有給休暇を付与しましょう。

有給休暇の基本的なルールは?

それでは、従業員から有給休暇を請求された場合には、どのように対応したらよいのでしょうか?

まずは3つの基本ルールを確認しておきましょう。

(1)有給休暇を取得する理由を尋ねてはいけない

有給休暇は、従業員のリフレッシュのために設けられた制度です。従業員がどこで何をしようと、会社が関与する権利はありません。忌引きや介護などの正当な理由が無くても、会社は有給休暇を与えなければいけません。

もちろん、雑談の話題として、「昨日の有給は何をしていたの?」と尋ねることはできます。しかし、従業員が有給を取得する際に、上司がしつこく理由を尋ねてしまうと、心理的な圧迫となってしまい、有給休暇の取得妨害となるおそれがあります。

有給休暇を何に使おうと、従業員の自由です。映画を観に行こうが、家で一日中ごろごろしていようが、会社が口をはさむことはできません。従業員が有給休暇を希望する場合には、理由を問うことなく無条件に承認しましょう。

(2)繁忙期の有給休暇については変更することができる

有給休暇の大原則は、「労働者の希望する通りに与えなければいけない」ということです。

ただし、会社の正常業務が滞ってしまうような重大な場合に限っては、例外的に有給休暇の日程を会社が変更することができます。

これを、「使用者の時季変更権」と言います。

たとえば、工場の機械が突然故障して製造スケジュールが大幅に遅れている場合や、想定外の大量注文が入ったことにより人手が著しく不足している場合などは、この例外に該当します。

(3)有給休暇を取得した従業員に不利益な扱いをしてはいけない

有給休暇を取得した従業員に対して不利益な扱いをすることは、労働基準法附則で禁止されています。

有給を取得した従業員の給与を減額することは、あからさまな不利益な扱いですので、当然に違法な行為です。

あからさまな不利益扱いに限らず、間接的な不利益扱いも禁止されています。たとえば、ボーナスの計算方法として、有給を取得したかどうかを考慮に入れることはできません。

他にも、有給休暇を取得しなかった者だけに精勤手当を与えてしまうと、有給を取得した者に間接的な不利益を与えてしまうので、許されない行為です。

間接的にも直接的にも、有給休暇を取得した従業員を不利益に扱うことのないように注意しましょう。

有給休暇の「計画的付与制度」とは?

有給休暇の計画的付与制度とは、「あらかじめ会社が休日を指定して、その日を有給休暇として指定できるという制度」です。

「有給休暇をいつ取るか」は、原則として従業員が自由に決定することができます。しかし、会社がこの計画付与制度を導入すれば、会社が有給休暇のスケジュールを決めることができます。

つまり、分かりやすく言うと、「会社が休暇の日時を指定して、強制的に有給を消化させることができる制度」ということです。

注意すべき点は、「全ての有給休暇を会社が指定できるわけではない」ということです。有給休暇の日数のうち5日間は、従業員がいつでも取得できるように残しておかなければいけません。

たとえば、ある従業員の1年間の有給休暇が20日間であれば、そのうち15日間は、会社が自由に日時を指定することができます。5日分の有給休暇は、従業員が自由に日程を決めることができるように、必ず残しておかなければいけません。

計画的付与制度を導入するためには、就業規則に規定を定め、労使協定を締結することが必要です。労働基準監督署に届け出る必要はありません。

違反した場合の罰則は?

有給休暇のルールに違反した場合には、厳しい罰則が定められています。
労働基準法119条によると、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と定められています。

会社が労働法違反による罰則を受けてしまうと、社会的な信頼を一度に失ってしまいます。有給休暇のルールを正しく理解して、従業員には適正な有給休暇を与えましょう。

まとめ

有給休暇を取ることは従業員の権利であり、会社が有給休暇を与えることは法律で義務化されています。

従業員が有給休暇を希望する場合には、理由を問うことなく無条件に承認しなければいけません。もし会社の正常な業務が損なわれるおそれがあれば、例外的な措置として、会社が日程を変更することができます。

有給休暇を取得した従業員に対して、不利益な扱いをすることは許されません。これらのルールに違反した場合には、罰金や懲役などの厳しい罰則が定められています。ルールを正しく理解して、従業員には適正な有給休暇を与えましょう。

 

Profile

田中靖子(たなかやすこ)
田中靖子(たなかやすこ)
東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格、弁護士として会社設立や知的財産権等の会社法関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の記事の執筆や講演を行うなど、日常に潜む法律トラブルの情報を世界に発信している。