残業を削減するために企業はどんな取り組みをしているか?

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

新聞やニュースなどで問題となっている残業時間。残業時間の上限を年720時間(月60時間)までにしようという改正も行われようとしています。厚生労働省もノー残業デーを設けることや、残業の事前申請制度などの導入による残業の削減を推奨しており、多くの企業も残業削減に取り組んでいます。

今回は、企業が残業の削減のためにどんな取り組みをしているのかをご紹介します。

残業を削減するために取り組みを行っている企業

SCSK株式会社-「スマートワーク・チャレンジ」で残業代を最初から支給

SCSK株式会社は東京都に本社を置く、ITインフラの構築など情報サービス業を営む企業です。この会社では、社員一人ひとりに幸せな企業人生を送ってほしいという思いから、平均月間残業時間20時間未満を目指した「スマートワーク・チャレンジ」制度を導入しています。

「スマートワーク・チャレンジ」は、残業削減の目標を達成すると、減少した残業代をインセンティブとして支給する制度として始まりました。現在は20時間の残業代をそもそもの月給に上乗せして支給し、残業を意識せず働くことができる制度に改良されています。「スマートワーク・チャレンジ」制度を導入した結果、平均月間残業時間が2012年には26時間程度あったものが、2015年には18時間まで削減することができています。

株式会社オーシスマップ-「定時退社を目指す企業」を社長自ら公言

株式会社オーシスマップは兵庫県に本社を置く、地図情報のコンサルタントを行う企業です。この会社はワークライフバランスに重点を置いており、厚生労働省から子育て応援企業の認定を受けたり、兵庫県から健康づくりチャレンジ企業の認定を受けたりしています。残業削減についても積極的で、社長自ら「定時退社を目指す企業」であることを公言。残業を申請制にするほか、施策の立案や実施を従業員主体で行うようにしました。その結果、残業時間が大幅に削減、退職者もここ数年出ていないそうです。

第一生命保険株式会社-「ワーク・スマート・デー」を設定

第一生命保険株式会社は、東京に本社を置く保険業を営む企業です。職員一人ひとりの個性を活かし、今までにない新しい取り組みにチャレンジしていくことによって、新たな「価値創造」の実現を目標に掲げている同社。そのためにはワークライフバランスが重要という考えのもと、終業時刻目標の設定や早帰り推奨日「ワーク・スマート・デー」の設定など残業削減に積極的に取り組んできました。入力端末の稼働を17時に一斉にシャットダウンする等も行ったようです。その結果、金融・保険業の月間平均残業時間が19時間のところ、同社では2015年の月間残業時間を7.7時間にまで抑えることに成功しています。

三州製菓株式会社-「一人三役」で助け合い残業を減らす

三州製菓株式会社は、埼玉県に本社を置く製菓の製造・販売を営む企業です。この会社は女性従業員の数が全体の8割を占め、技術やノウハウを持っている女性が結婚や出産などで退職するリスクをなくすため、多くの施策を行っています。経済産業省のダイバーシティ経営企業100選に選ばれたり、埼玉県のあったか子育て企業に認定されたりしています。残業削減についても積極的に取り組んでいます。

この企業の施策は「一人三役」。2~3年に一度の配置転換や仕事が落ち着いているときに、3か月担当外の仕事を経験する決まりを作っています。一人が3つ以上の仕事を本職としてできるようになることで、全体の残業時間を減らそうというものです。この施策のおかげで残業時間の大幅な削減だけでなく、長期休暇も取りやすくなったそうです。

株式会社ピコナ-「残業チケット」と福利厚生を組み合わせて残業を減らす

株式会社ピコナは東京に本社を置く3DCGプロダクションを営む企業です。平均月間残業時間が100時間とも言われているアニメーション業界。その中で株式会社ピコナは、平均月間残業時間が20時間を切ることに成功しています。

それを生み出したのが「残業チケット」。月初に1人あたり10枚のチケット配布され、残業をする際にそのチケットを使うというものです。しかし月6枚以上チケットを使うとペナルティがあり、「ピコナポイント」が5ポイントなくなります。ピコナポイントとは福利厚生の一環で、ポイントに応じて豪華賞品が当たるサイコロが振れる制度です。「残業チケット」という回数制限と、罰則ではなく、福利厚生を使ったペナルティを組み合わせたことによって残業を減らすユニークな制度ですね。

株式会社クラシコム-残業短縮方法を従業員自身が考えて行動

株式会社クラシコムは、東京に本社を置く北欧の家具やインテリアの販売を営む企業です。
この企業は、会社の方針で18時の定時退社を推進しています。会社のホームページには、従業員自身が、18時の定時退社をするために会議の時間の短縮方法を考えたり、仕事の集中を考えるコラムが多く載っており、会社全体に浸透しているのが分かります。

株式会社 お佛壇のやまき-ITを導入して作業の効率化で残業時間削減

株式会社お佛壇のやまきは、静岡県に本社を置く主にお仏壇や墓石の販売を営む企業です。
2007年にワークライフバランスを経営戦略に掲げ、会社をあげて残業削減に取り組んでいます。ITを導入し作業の効率化を図ったり、18時閉店を厳守してお客様の入店をお断りしたり、さまざまな取り組みを行った結果、定時に帰ることが当たり前になったそうです。業績も40%向上、従業員満足度も向上し離職率の低下にもつながっています。

まとめ

ご紹介したとおり、多くの企業が残業を削減するためにいろいろな施策に取り組んでいます。出ている効果を見ても、残業を削減することは企業にとっても、またそこでは働く従業員にとってもメリットのほうが大きいです。この記事を参考に、ぜひ残業の削減に取り組んでください。また残業を削減するためには、そもそもの残業の知識や世の中の動きを知っておく必要があります。関連記事もご確認ください。

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※参考サイト
社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集