仕事をする上で、時間を守るというのは大切なことです。納期やノルマなど様々な約束ごとがありますよね。その時間の縛りは、会社と従業員の間でも当然に発生している概念です。例えば従業員の方は、雇用契約などで決められた時間は労働することが要求されます。また会社側も、雇用契約や協定で決めた時間を超えて、従業員に労働を強要することはできません。

このように、雇用関係においても労働時間という基準で、時間を管理しておくことが求められています。この「勤怠管理入門」シリーズで紹介する情報によって、勤怠管理を行うにあたって知っておきたい基礎知識を体型的に学ぶことができ、新人の労務担当者の方でも全体イメージをつかむことができます。

少しでも皆様が勤怠管理・労務管理を効率的に行うことに貢献できれば嬉しく思います。まず記念すべき第1回目の内容は、そもそも勤怠管理はなぜ必要なのかという点と、勤怠管理を正しく行うための基本知識について紹介していきたいと思います。

 

勤怠管理ってそもそも何なの?

勤怠管理という言葉を耳にする機会は多いと思います。最近では大手企業における長時間労働を原因とした過労死の問題などで、ずさんな勤怠管理が行われていたことなども話題となっています。そもそも勤怠管理とは何のことを言っているのでしょうか。

 

一言でいえば、

勤怠管理とは「使用者が労働者の労働時間を適正に把握すること」です。

いきなり難しい言葉が並んでいますので、まず簡単な用語集を作りました!下の表を確認してください。

 

専門用語 用語の意味
使用者 事業主、事業の経営担当者、人事部長・総務課長などの事業主のために労働者に関する業務を行う人
労働者 使用者の指示や命令を受けて、労働力を提供し、その対償として賃金を受ける人
労働時間 使用者の指示や命令を受けている状態に置かれている時間
適正に把握する 労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録する。そして賃金台帳という資料を作ること。

 

つまり「会社の中で管理職のようなポジションにいる人が、自分の部下が会社・上司の指示や命令を受けて仕事をしていると言える時間を記録しておくこと」が勤怠管理をやるということになります。

 

なぜ勤怠管理をやらなければいけないのか?

勤怠管理とは何か、については先ほどの説明でご理解いただけたと思います。しかし、そもそもなぜ勤怠管理が必要なのでしょうか。労働時間を把握し続けるというのは地味に大変なことです。毎日、従業員一人一人からどれくらい働いたのか、いつ休んだのかなどを提出してもらい確認をしていかなければなりません。

その理由は、法律で定められているからです。労働基準法には下記のような条文があります。

 

(労働時間)

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働さ せてはならない。

 

労働時間には法律で上限が定められているので、その時間を超えて仕事をさせてはいけないのです。この労働時間の上限を超えたかどうかは、勤怠管理をやらなければわかりません。労働基準法は、労働者の健康や自由を守るために、労働時間に上限をもうけ、その時間管理を行うことを使用者に要求していると言えますね。

ちなみにその他の基準として、原価計算基準というルールがあります。会計のルールですが、この基準には下記のような記載があります。

 

一二 労務費計算

直接賃金等であって、作業時間又は作業量の測定を行なう労務費は、実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。

 

正しくコストを計算するために、作業時間などを測定して計算することが求められる場合があります。この時間も勤怠管理によって把握した時間で行われることが多いので、原価計算基準としても正しい勤怠管理を推奨していると言えますね。

 

勤怠管理を正しく行うために知っておくべき知識

勤怠管理とは何か、そしてなぜ行わなければならないのかを説明してきました。その上で、どのように勤怠管理を進めていけば、正しい手続きを行うことができるのでしょうか。

 

これについては厚生労働省が、ガイドラインを公開しています。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」という名前で公表されていますので、ぜひご参照ください。

そのガイドラインに記載されている部分で特に注意しておくべき箇所をご紹介していきます。

 

労働時間の管理が強く要求されないケースもある

このガイドラインでは、労働時間の把握が強く要求されていない労働者もいるとの説明がなされています。具体的には下記のような記載があります。

対象となる労働者は、 労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者です。

上記の内容としては、「一部の人を除くすべての労働者は適切な勤怠管理が必要ですよ」ということです。この一部の人というのが下記の2つのタイプの人です。

 

管理監督者など 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者のこと
みなし労働時間制の適用者 みなし労働時間制とは、

①事業場外で労働する者であって、労働時間の算定が困難なもの(労働基準法第38条の2)

②専門業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の3)

③企画業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の4)

 

上記の方は通常の労働者と違って、他の労働者を管理する立場にある方や、いつ働くのかという時間管理を労働者本人に一定以上任せている人なので、そもそも勤怠管理をやることが性質と合わないと言えます。

 

ただし最後に下記のような説明が捕捉されています。

 

本基準が適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があります ので、使用者は過重な長時間労働を行わせないようにするなど、適正な労働 時間管理を行う責務があります。

 

よって、労働時間の管理は全くやらなくていいわけではなく、健康面の配慮は必ず必要ということですね。

 

これって労働時間なの?判断が難しいケース

ガイドラインでは、労働時間なのかどうか判断が難しいケースについても考え方を紹介してくれています。

使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務を行う時間は労働時間にあたります。

 

まず使用者が言葉や文章で「この時間からこの時間はこの作業をしてください」と伝えてなかったとしても、実態として、指示をしていることと同様だと考えられる場合には、具体的な指示がなくても、労働時間とみなすという考え方が示されています。

 

続いて下記の記載がされています。

労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。

 

つまり、労働時間であるかどうかは、労働契約に「何時から何時を所定労働時間とする」と書いてあるかどうかではなく、客観的に見て使用者の指示に基づいて労働したかどうかで判断するということです。

 

続けて例が説明されています。

たとえば、次のような時間は、労働時間に該当します。

①使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を 義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

②使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間 (いわゆる「手待時間」)

③参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

 

これらのケースでは、準備のための時間や、掃除の時間、待機時間、訓練・学習の時間も労働時間に含まれると記載されています。特に、学習時間についてはよく論点になる部分ですが、考え方としては「使用者の指示により業務に必要な」学習であるかどうかという点で判定をしていくことになります。

 

労働時間の管理は始業時刻と終業時刻を記録する方法で行う

ガイドラインに記載されている、勤怠管理のポイントを順に見いていきたいと思います。

労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

使用者は勤怠管理のやり方として、始業時刻と終業時刻を記録していくことが要求されています。それによって、何時間働いたかを計算する方法によって管理を行うということですね。

 

始業時刻・終業時刻の確認・記録方法は?

ガイドラインでは、下記の記載があります。

 

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として 次のいずれかの方法によること。

(ア)使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

(イ)タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的 な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

 

勤怠管理のやり方としては、使用者が自分で労働者の行動を確認して記録しておく方法と、タイムカードなどの記録によって行う方法の2つを原則的なものとしています。

 

もし使用者自らが労働者の始業・終業時刻を確認して記録する場合には、労働者本人にもその時刻を確認してもらうことが望ましいとされています。

またタイムカードなどを用いて勤怠管理を行う場合には、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報 告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突 き合わせることが要求されています。

 

自己申告制も併用した勤怠管理の場合

タイムカード等の客観的な記録に基づくことを原則としつつ、自己申告制も併用して労働時間を把握している場合には5つの措置をとることが要求されています。その5つを1つずつ見ていきます。

自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、 労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどにつ いて十分な説明を行うこと。

 

自己申告による勤怠管理をする場合には、上司の目などを気にして、実態と異なる始業・終業時刻が申告される可能性があります。そうならないように労働者に対してきちんと説明をすることが必要です。説明すべき事項としては、ガイドラインで示した労働時間の考え方、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取扱いが行われることがないこと、などがあります。

 

実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含 め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

 

労働時間の適正な自己申告を担保するには、実際に労働時間を管理する者がガイドラインの内容を理解する必要があります。説明すべき事項としては、 労働者に対するものと同様に、ガイドラインで示した労働時間の考え方や、 自己申告制の適正な運用などがあります。

 

自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致している か否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

 

使用者は自己申告制により労働時間が適正に把握されているか否かについて 定期的に実態調査を行い、確認することが望ましいとされています。労働者が事業場内にいた時間と、労働者からの自己申告があった労働時間との間に著しい乖離が生じているときは、労働時間の実態を調査することを求められています。

また、自己申告制が適用されている労働者や労働組合等から、労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がなされた場合などにも、実態調査を行うように求められています。

 

自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その 理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われてい るかについて確認すること。

その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

 

使用者は、自己申告による労働時間の把握とタイムカード等を併用し、自己申告された労働時間とタイムカード等に記録された事業場内にいる時間に乖離が生じているときに、その理由を報告させている場合、その報告が適正に行われていないことによって、労働時間の適正な把握がなされなくなるおそれがあるため、その報告の内容が適正か否かについても確認することが要求されています。

 

自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超 えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにす ることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的 に行われていないかについても確認すること。

 

使用者は、労働者の適正な自己申告を阻害する措置を講じてはならないのはもちろんのこと、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となる事業場 の措置がないか、また、労働者等が慣習的に労働時間を過小に申告していない かについても確認する必要があります。

 

賃金台帳などの作成義務

賃金台帳などの書類の作成・管理について下記のような記載があります。

 

使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者 ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。 また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円 以下の罰金に処されること。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等 の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、 3年間保存しなければならないこと。

 

労働時間の管理者について

労働者だけではなく、管理者も必要な知識を持っておかなければ勤怠管理は実現できません。管理者の役割についても言及されています。

事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること

人事労務担当役員、人事労務担当部長等労務管理を行う部署の責任者は、労働時間が適正に把握されているか、過重な長時間労働が行われていないか、労働時間管理上の問題点があればどのような措置を講ずべきかなどについて把握、検討すべきであることを明らかにしたものです。

 

労働時間等設定改善委員会等の活用

一度労働時間について決めれば終わりではなく、継続して改善していくことについて言及されています。

使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間 等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握 の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

自己申告制により労働時間の管理が行われている場合等においては、必要に 応じ、労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状の問題点や解消策等について検討することが望まれます。

 

勤怠管理の前提知識まとめ

いかがでしたでしょうか。厚生労働省のガイドラインを読んでおくことで、勤怠管理を適切に行うための方法をイメージしやすくなるとは思います。しかし、実際に勤怠管理の実務を進めていくと、ここに記載されていない多くの問題に出くわします。今回の説明の中ではあくまで基本知識を解説したにすぎませんので、今後この「勤怠管理入門」シリーズでは、勤怠管理を取り巻く様々なテーマを取りあげていきたいと思います。

複雑で面倒な勤怠データですが、皆様が少しでも効率的かつ効果的に業務を進められるように、お役立ちできるコンテンツを目指してまいります!

 

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『バックオフィスの基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。