[2016年分]年末調整の攻略スケジュール・手順まとめ

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

2016年分の年末調整は、先手必勝!これでバッチリ!

年末調整の作業は資料の収集から申告書のチェック、計算、年末調整後の書類作成と短期間に様々なことを行わなければなりません。したがって、計画的に作業を行い、具体的な計算手順をよく理解しておく必要があります。そこで、2016年の年末調整を行う場合のスケジュールと手順について、確認してみましょう。

スケジュールと作業内容一覧

年末調整はこのスケジュールに沿って進めていきます。各作業内容を詳しくみていきましょう。

時期作業内容
11月中旬ごろ年末調整の書類確認と準備
11月中旬〜11月下旬年末調整の回報と書類の配布
11月下旬〜12月上旬給与所得の源泉徴収簿の作成と申告書の回収とチェック
12月上旬〜12月中旬年末調整の計算と法定調書の作成
翌年1月10日〜1月31日源泉税額の納付と法定調書の提出

 

年末調整の書類確認と準備

11月中旬ぐらいの時期になると、税務署から年末調整の手引き、説明会の案内、源泉徴収簿、年末調整の申告書などの書類が送付されてきます。まずは、これらの書類を確認します。年末調整初心者は、戸惑うことが多いと思うので、年末調整の手引きは必ず保存し、できるだけ説明会には参加するようにしましょう。(平成28年分 年末調整のしかた:国税庁)

この時に平成29年分の「給与所得者の扶養控除申告書」があるかも確認します。そして、年末調整を行う人と行わない人の区分をしていきます。書類の準備ができて、年末調整を行う人が絞り切れたら、関連する書類を配布する準備をします。

年末調整の回報と書類の配布

年末調整を行うにあたって、提出してもらう必要な書類をリストアップして、回報を作成して一緒に配布します。この時に必要な書類は、平成28年分の「給与所得者の扶養控除申告書」、「配偶者特別控除申告書兼保険料控除申告書」、「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」(該当者のみ)になります。

提出書類

平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(国税庁Webサイトでの、記入例は公開終了しました。)

平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書記入例

平成28年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書記入例

(参考元:国税庁)

この時、会社名と住所の欄はまとめて、会社のゴム印で押印しておきます。また回報には提出期限と注意点を記入します。平成28年分の「給与所得者の扶養控除申告書」は既に回収済みなはずですが、年末調整を行う人の分があるかどうかを確認します。ここで、配偶者と扶養親族の異動がないかどうかを確認し、異動があった場合は提出してもらいます。平成28年で新たに配偶者控除や扶養控除を受ける場合には、申しでてもらうようにします。そして、平成29年分の「給与所得者の扶養控除申告書」も配布して、一緒に回収します。中途入社がいる場合は、年収を確定するために、合算が必要なので、前職の会社の源泉徴収票を提出してもらいます。これらの作業は11月中旬から下旬にかけて行います。

給与所得の源泉徴収簿の作成と申告書の回収とチェック

11月下旬から12月上旬にかけて、給与所得の源泉徴収簿を作成します。この源泉徴収簿には、個人ごとに給与および賞与、社会保険料、源泉徴収額を記載します。

また、年末調整を行う人の申告書を回収します。回収もれがないように、リストを作成しておくとよいでしょう。

この時に申告書の記入チェックを行います。特に平成28年分の「給与所得者の扶養控除申告書」のチェックは大事です。「給与所得者の扶養控除申告書」のチェックポイントを確認してみましょう。

本人欄と住所欄は給与計算ソフトでマスタ登録してあるはずなので、その情報と相違がないかどうかを確認します。特に、住民税は平成29年1月1日現在の従業員の住所地が納税地となります。年末調整後に、給与計算担当者はこの住所地に給与支払報告書を作成して送付するので、この住所地の確認は必ず行うようにします。

また、控除対象配偶者の欄に平成28年中の所得の見積額の欄に記入があるかどうかを確認します。

この所得金額が38万円(給与収入103万円)を超えている場合は、配偶者控除の対象ではなくなるので、注意が必要です。この配偶者の合計所得金額は、配偶者控除の対象でない場合でも、所得金額が38万円超76万円未満(給与収入103万円超141万円未満)の場合は、配偶者特別控除を受けることができるので、「配偶者特別控除申告書兼保険料控除申告書」に記入して、提出してもらいます。

また、控除対象扶養親族には、配偶者以外の16歳以上の親族、19歳以上23歳未満の特定扶養親族、老人扶養親族の情報が記入されているかどうかを確認します。

これらの欄の記入次第で、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の計算が違ってくるので、よく確認し、不明な場合は本人に確認します。

年末調整の計算と法定調書の作成

12月上旬から中旬にかけて、年末調整の計算を行います。ここで個人の所得税額を確定して、源泉税額との過不足を精算します。この過不足の精算は12月の最後の給与に調整して行いますが、超過の場合は還付、不足の場合は徴収することになります。

最終的には、個人別に「給与所得者の源泉徴収票」(法定調書)を作成します。そして12月の最後の給与明細に、年末調整の計算明細と一緒に従業員に渡します。また、来年に提出する住民税の計算根拠となる「給与支払報告書」も作成します。

源泉税額の納付と法定調書の提出

翌年の1月10日に源泉所得税を毎月の納付と同じく、納付書を作成して税務署に納付しますが、納付書への記入は注意しなければなりません。年末調整により超過額又は不足額が生じるので、納付書の欄に記入して、」源泉徴収した金額から超過額の場合は控除、不足額の場合は加算(超過のケースが多い)して、納付します。この納付税額が0円の場合でも提出する必要があるので、注意しましょう。

そして、1月31日までに、「給与所得者の源泉徴収票」と法定調書の合計表を作成して、税務署に、さらに、従業員の住所地の市区町村に「給与支払報告書」と総括表を添付して、提出します。

また、平成29年分の「給与所得者の扶養控除申告書」も最初の給与の支払い日の前日までには、回収しなければならないので、年末調整時に回収してあるはずですが、再確認します。

年末調整の計算手続きの手順

 

ここからは、年末調整の具体的な計算手続きと手順について、確認します。

step1 給与収入、賞与、社会保険、源泉税の計算

年末調整の計算は給与所得の源泉徴収簿を作成することで行います。まずは、給料、賞与の金額と合計額、また給料、賞与に対する源泉税額と合計額を記入します。そして、年間の社会保険料は社会保険料控除額の給与からの控除分に記載します。社会保険料控除は、本人または本人と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられる控除です。本人以外の部分あるいは、過去の本人の国民年金の払い込み分は申告による社会保険料の控除分に、保険料控除の申告書の記入をもとに記載します。

step2 給与所得控除後の給与の金額

給料、賞与の金額と合計額が記入されたら、給与所得控除後の給与の金額を記入します。給料、賞与の合計額をもとに、「年末調整のための給与所得控除後の給与の金額の表」に当てはめて、記入します。給与所得控除とは給与収入のある人の必要経費になります。

step3所得控除額の計算

従業員から提出された申告書をもとに所得控除額を計算します。

配偶者控除は年間の所得合計額が38万円以下(給与収入103万円以下)の配偶者がいる場合には配偶者控除38万円が受けられます。扶養控除は16歳以上の扶養親族がいる場合に扶養控除38万円を受けることができます。(所得条件は配偶者控除と同じ)この扶養控除の金額は条件によっても異なり、19歳以上23歳未満の特定扶養親族の場合は63万円となります。

そして、配偶者特別控除と保険料控除です。

配偶者特別控除は、所得金額が38万円超76万円未満(給与収入103万円超141万円未満)の配偶者がいる場合に所得金額に応じて、受けられる控除です。所得金額により受ける控除金額が違ってきます。所得の段階により、控除額は3万円から38万円なっています。配偶者控除が受けられない人の特別措置といっていいでしょう。

保険料控除は生命保険に加入していて、保険料を支払っている場合、保険料の金額に応じて、受けられる控除です。契約年月日のタイミングで計算が異なります。具体的には、平成23年12月31日以前の旧保険契約で最高で10万円、平成24年1月1日以後の新保険契約で最高で12万円となっています。

所得控除は個人差があります。ただし、忘れてはならないのが基礎控除です。基礎控除は38万円ですが、独身の場合であっても、受けられる控除になります。

最終的に所得控除を記入し終えたら、所得の額の合計額を計算します。

step4課税給与所得金額の計算

課税給与所得金額とは給与所得控除後の給与の金額から所得の額の合計額を差し引いて計算します。

この金額は1,000円未満を切り捨てます。この課税給与所得金額が年税額の計算のもとになります。

step5算出所得税額と年調年税額の計算

課税給与所得金額をもとに「年末調整のための所得税額の速算表(平成28年分)」を用いて、算出所得額を確定します。

この算出所得税額から住宅借入金等特別控除額がある場合、差し引きします。この住宅借入金等特別控除額は住宅を購入して、借入金がある場合、借入残高に応じて受けられるものです。住宅借入金等特別控除の申告書をもとに計算しますが、所得控除ではなく税額控除と呼ばれます。算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を差し引きした金額が年調所得税額となり、この金額に102.1%(復興特別所得税)を乗じて、年調年税額を確定します。この金額は100円未満切り捨てとなります。

step6過不足額の精算と還付または徴収

最後に年調年税額から源泉税額を差し引きした金額がマイナスであれば還付、プラスであれば、徴収となり、12月の給与に調整することになります。

まとめ

年末調整は限られた期間で資料を収集して、正確な計算も要求されます。まずは所得控除を正しく計算することが大事であり、そのためには、申告書の回収もれや記入もれ、ミスがないかをしっかりと確認する必要があります。

あらかじめ、回報を作成して、期限厳守で資料を提出することを告知しておき、記入漏れやミスがないようにサンプルを作成して渡しておくとよいでしょう。

そして、最終的な計算ミスがないかの確認も必要です。また、スケジュールをきちんと守って確実に仕上げていくことも大事です。