従業員や家族に、氏名・生年月日・住所の追加・変更・訂正が発生したときの社会保険手続き

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

従業員の結婚や子供の出生、離婚など、ライフイベントに応じて様々な手続きが必要となります。家族構成や住所等が変更になった場合、会社は従業員及び被扶養者に係る社会保険の変更手続きをする必要があります。

同時に会社内においても様々な変更手続きがあり大変ですが、チェックしながら順序立てて行っていきましょう。

氏名を追加・変更した場合

従業員本人のみの氏名変更

従業員が結婚、離婚等により氏名変更をした場合で変更者が従業員本人のみの場合は、変更手続きは2か所となります。

一つ目は年金事務所です。健康保険被保険者証を添付の上、「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更届」を提出します。

もう一つはハローワークです。新氏名の確認できる住民票等を添付し「雇用保険被保険者氏名変更届」を提出します。

届出書類添付書類等提出先
雇用保険雇用保険被保険者氏名変更届住民票等事業所管轄の公共職業安定所(ハローワーク)
健康保険・厚生年金保険健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届健康保険
被保険者証
事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

従業員の被扶養者・家族に関する氏名の追加・変更の場合

従業員の家族に関する氏名の追加・変更が必要となるケースは、被扶養者の増減が関係してきます。まずは、追加・変更がある者についての状況確認を行いましょう。増加する場合の主な事例は、結婚や、子供の出生などです。扶養に入るためには、年間収入130万円未満(60歳未満)という要件がありますので、従業員に必ず確認しましょう。

反対に減少する場合とは、配偶者の収入増、離婚等が該当します。

次に、届出手続きを行います。被扶養者の氏名の追加・変更が必要となる場合は「健康保険 被扶養者(異動)届」(3枚複写)を年金事務所に提出します。

健康保険被扶養者異動届 1枚目

引用元:日本年金機構

 

この届の3枚目は被扶養配偶者の国民年金第3号被保険者該当届となっています。被扶養者となる者が、子どもや親である場合等、配偶者以外の場合はこの書類を提出する必要はありません。

被扶養者となる配偶者が20歳から60歳までの場合、国民年金第3号への変更手続きも会社が行わなければならない手続きとなりますので、3枚目も忘れずに年金事務所に提出しましょう。ここで注意点ですが、3枚目の書類には、右下に被扶養者となる配偶者(従業員が男性の場合その妻)の署名捺印欄があります。従業員(夫)が誤って自分の氏名を記入する場合が多いので、付箋などで注意書きをして差し上げると分かり易いと思います。

被扶養者の氏名変更・追加の場合、雇用保険の手続きは必要ありません。

添付書類について

追加する場合:収入を確認する書類(事業主の証明がある場合は、添付不要)
変更・削除する場合:健康保険被保険者証を添付(返却)

※漢字に変更がある場合は、従業員のみの変更の場合でも被扶養者の分も併せて健康保険被保険者証を添付

※年金手帳については、被保険者は事業主へは提出する必要がありますが、事業主が年金事務所等へ届け出る際には、添付不要です。年金事務所への氏名変更の手続きが完了したら、会社側で年金手帳の従業員氏名欄を変更(訂正)しておいてあげると、親切です。

記入上の注意点

変更(訂正)の場合、氏名欄に変更(訂正)前の氏名を記入し、二重線で抹消しそのすぐ上に変更(訂正)後の氏名を記入しましょう。

届出書類添付書類等提出先
健康保険・厚生年金保険健康保険 被扶養者(異動)届・健康保険 被保険者証
・収入を確認する書類
事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

 

住所変更した場合

従業員本人のみ住所変更した場合

従業員が住所変更した場合は氏名変更と同様、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」を提出します。添付書類は必要ありません。

 

健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届

引用元:日本年金機構

届出書類添付書類等提出先
健康保険・厚生年金保険健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届なし事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

被扶養配偶者も一緒に住所変更をする場合

被扶養配偶者も一緒に住所変更をする場合は、2枚目の「国民年金第3号被保険者住所変更届」も併せて提出します。被扶養者の住所変更の手続き漏れがあると、日本年金機構から定期的に届く「ねんきん定期便」等が被扶養者だけ届かなくなるなど不備が発生してしまいますので忘れずに手続きをしましょう。

国民年金第3号被保険者住所変更届

引用元:日本年金機構

届出書類添付書類等提出先
健康保険・厚生年金保険国民年金第3号被保険者住所変更届(PDF)なし事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

住所変更の場合は、基本的には雇用保険に関する手続きは必要ありません。ただし、同じ会社内ですが、管轄が異なる支店等から転勤してきた場合は「雇用保険被保険者転勤届」が必要になる場合がありますので、転勤者の場合は手続きが必要かもしれないことを念頭に入れておくと良いでしょう。

その他の注意点

また、住所変更時に重要なチェック項目の一つとして、通勤に伴う交通費の確認があります。基本給等に変動がなくても、交通費が大きく変動すると健康保険や厚生年金の保険料額の基となる標準報酬月額が2等級以上変わってしまうことがあります。この場合は随時改定として年金事務所へ「月額変更届」の提出が必要となりますので注意しましょう。

生年月日を追加・訂正する場合

従業員や扶養している家族についての生年月日訂正の手続きは従業員の場合と、被扶養者の場合で少し異なります。

従業員が生年月日を訂正する場合

従業員については2か所について届出が必要となります。一つ目は年金事務所ですが、年金手帳と健康保険被保険者証を添付の上「健康保険・厚生年金被保険者生年月日訂正届」を提出しましょう。

健康保険・厚生年金保険被保険者生年月日変更届

引用元:日本年金機構

 

もう一つはハローワークで、雇用保険被保険者証と訂正・取消の根拠となる住民票等を添付の上「雇用保険被保険者取得・喪失等届訂正取消願」を提出しましょう。

届出書類添付書類等提出先
雇用保険・雇用保険被保険者取得・喪失等届訂正取消願(PDF住民票等事業所管轄の公共職業安定所(ハローワーク)
健康保険・厚生年金保険健康保険・厚生年金被保険者生年月日訂正届(ダウンロードのリンク 新規ウインドウで開きます。PDF)年金手帳と健康保険被保険者証事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

被扶養者が生年月日訂正する場合

被扶養者の場合は「健康保険 被扶養者(異動)届」を年金事務所に提出します。生年月日は個人を特定するために重要な項目です。生年月日が異なると別人として取り扱われ、給付を受ける際に不利益を被る可能性があります。従業員や被扶養者の届出手続が完了した際は、年金事務所やハローワークからの通知書に記載されている従業員及び被扶養者の氏名、生年月日等が誤っていないか再度確認しましょう。

【記入上の注意点】

生年月日訂正の場合、生年月日記入欄の上段に生年月日(訂正後)の欄がありますのでどちらの欄にも記入しましょう。

届出書類添付書類等提出先
健康保険・厚生年金保険健康保険 被扶養者(異動)届(PDFなし事業所の所在地を管轄する年金事務所にて確認

まとめ

従業員が結婚、離婚、出産等により氏名や住所、家族構成に変更が発生した場合、会社内の手続きに加え、社会保険に関する手続きも必要となりますので、変更となる人、変更となる項目を確かめ、手続き項目を確認しましょう。基本的に従業員の場合は住所変更を除いて年金事務所とハローワーク、被扶養者の変更は年金事務所と覚えておくと整理がしやすいでしょう。

また、住所や家族構成に変化があった場合、家族手当、住宅手当、通勤手当等に増減が発生することがあります。随時改定(月変)の対象に該当するかどうかのチェックはやや忘れがちですが、重要な手続きとなりますので、念頭に入れて、スムーズな手続きを行いましょう。最後になりますが、社会保険手続きに加え給与計算等に影響してくるのが給与所得者の扶養控除等(異動)申告書についてです。年末調整の際、翌年分も記載し一端保管している会社も多いと思われます。家族構成に変更があった場合は、申告書についても必ず追加訂正してもらうようにしましょう。