[年末調整 2016 チートシート]従業員への「扶養控除申請書」説明

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

チェック項目を理解している女性

年末といえば、年末調整。

従業員が提出する、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下「扶養控除申告書」)は、記入が間違っていることも多く、毎年苦労することも多いのではないでしょうか。

今回はより多くの従業員の方が正しく扶養控除申告書を提出できるような、説明資料の作り方に役立つ情報をご紹介していきます。

こちらも参考にしてください:『[年末調整]2016年(平成28年)分で気を付ける点のおさらい

扶養控除申告書とは(おさらい)

扶養控除等申告書は年末調整において所得税などを正しく計算するために、従業員に個々の状況を申告してもらう大切な書類です。正しい申告がないばかりに税控除を受けられなくなり、損をする従業員が出てきてしまうので、必ず提出してもらいましょう。

「扶養控除申告書」を提出する必要のある従業員とは

  1. 給与を支払っている従業員全員が提出
  2. 12月の給与計算に間に合うタイミングに提出期限を設定
  3. 平成28年から、従業員本人と扶養家族のマイナンバーが必要
  4. 平成28年からフォーマットが変更

【注意】 平成28年からマイナンバーの導入で、フォーマットが変更されています。以下の国税庁URLよりPDFファイルを開いて印刷できます。ダウンロードは不要です。

従業員への説明時に気を付ける3点

  1. 注意事項を列挙して注意を促し、間違いのないように確認してもらう
  2. 記入場所が明確にわかる実際のフォーマットを使用した記入例を作成する
  3. 扶養親族の定義や収入要件などをまとめたQ&A集を作成して基礎知識を補足する

平成28年分から変更になった、扶養控除申告書

今年から扶養控除申告書は新しいフォーマットになっています。マイナンバーも導入されましたし、内容の修正や確認期間を考えると、今年は11月の早い段階を提出期限に設定し、それを元に12月の給与計算を行うのが無難でしょう。

変更ポイント

  1. マイナンバーである個人番号を記載する欄が追加になった
  2. 非居住宅者である親族であるかどうか、またその際の送金金額の記載欄が追加
  3. 住民税に関する事項に16歳未満の扶養親族の個人番号を記載する欄が追加

記入欄作成の際の注意点

  1. 個人番号を扶養親族の分まで正しく記入してもらう
  2. 国外居住親族がいる場合は必要事項を記入してもらう
  3. その年に子供が産まれた場合には必ず16歳未満の扶養親族の欄に記載してもらう
  4. 配偶者が扶養親族なのかどうかを正しく理解してもらった上で申告してもらう

国外居住親族の適用について

平成27年度の改正により、国外に住んでいる扶養家族について「親族関係書類」や「送金関係書類」を提示することが必要になりました。以下、ポイントを抜粋して説明します。(※詳しくは、国税庁「国外居住親族に関する扶養控除等の適用について」をご確認ください。)

国外居住親族の適用対象となる「非居住者である親族」とは

  1. 日本国内に住所を有していない人
  2. 日本国内に住所がなく、かつ、日本国内に引き続き居所を有している期間が1年に満たない人

簡単に言うと海外留学をしている扶養家族がいる場合などです。

収入の欄には仕送りなどの事実があれば、ここに仕送り金額を記載することになります。住所にも留学先の住所を記載することになります。この場合には以下のような添付書類が必要になります。

従業員の親族であることを証明する書類

  1. 戸籍の附表の写しその他の国または地方公共団体が発行した書類および国外居住親族の旅券(パスポートの写し)
  2. 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるもの。具体的には戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など)

送金の事実を証明する書類

  1. 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことが明らかな書類(外国送金依頼書の控え等)
  2. いわゆるクレジットカード発行会社の書類又は写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、又は受領することになることを明らかにする書類(クレジットカードの利用明細書等)

16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象とはなりませんが、障害者控除を受ける場合で国外居住者である場合には上記添付書類が必要になりますので注意して下さい。

扶養家族の範囲や条件

扶養控除申告書には扶養対象の親族のみ記載することになりますが、扶養の範囲に対する理解が従業員の方にとっても難しいところです。特に扶養控除の対象になる定義について確認してみましょう。

扶養親族の範囲とは(その年の12月31日の状況で判断します)

  1. 配偶者(民法上の規程にある人で内縁の妻は含まない)
  2. 配偶者以外の親族(6親等以内の血族及び3親等以内の親族)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人である
  3. 納税者と生計を一にしている
  4. 給与収入のみの場合は給与収入が103万円以下(年間の合計所得金額が38万円以下である)
  5. 65歳未満で収入が年金のみの場合は年収108万円以下(年間の合計所得金額が38万円以下である)
  6. 65歳以上で収入が年金のみの場合は158万円以下(年間の合計所得金額が38万円以下である)
  7. 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でない

引用元:国税庁 扶養控除

金額を超える収入がある扶養親族は、扶養控除申告書に記載する必要はありません。ここで実際に収入があるのに従業員が嘘の記載をすると後日、税務署より所得税の追徴の連絡が来る場合があります。正しく申告してもらうように心がけることで双方の無駄な手間も省けますね。

扶養親族において19歳以上23歳未満の人は特定扶養親族、70歳以上の人は老人扶養親族となり、控除額が同居の有無などの要件に応じて変わってきます。詳細は以下の内容を確認してみて下さい。

また、収入などは65万円の給与控除を差し引いた金額である「所得」を記入するので注意しましょう。年間見込みの収入が84万円(7万×12カ月)であった場合にはここに19万円(84万円-65万円)と記載することになります。そのために収入があっても以下の場合は収入欄にゼロという記載になります。

  • パート収入 36万円(3万円×12カ月)の場合
      → 65万円を引くとマイナスになるのでゼロと記載
  • パート収入 65万円の場合
      → 65万円を引くとゼロになるのでゼロと記載

【注意】 ここで65万円を引いた金額が38万円以上76万円未満である場合には「配偶者特別控除」の対象になるので扶養控除申告書ではなく「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者控除申告書」の「配偶者控除申告書」の欄に記入することになります。※年配の従業員でも、この事を知らない方が多いので注意しましょう。

扶養控除申請書の書き方

記入欄作成の際の手順は以下の通りです

  1. 配偶者が非居住者に当たる場合には必要事項を記入する(必要書類があります:国税庁
  2. 給与所得がある場合は平成28年中の給与の収入から、給与所得控除65万円を引いた額を「平成28年中の所得の見積額」に記入する

添付書類は特にはなく、自己申告になっています。他にも高校生の子供など16歳以上の扶養家族は扶養親族の欄に記載することになるので注意して下さい。

ただし、年度の途中で中途入社した場合などは前職での収入も併せて年末調整をすることになるので前職での収入の分の源泉徴収票を提出してもらいましょう。

また、16歳以上の扶養家族が職業訓練などを受けながら収入を得ている勤労学生である場合には、厚生労働省や職業訓練法人の代表者による「勤労学生であること」の証明書を提出してもらう必要があります。

住所は現住所か住民票の住所を書くか?

住んでいる住所が住民票と違う場合は、今住んでいる現住所を書いてもらい住民票上の住所は別で教えてもらいましょう。

従業員が記入後に、必ず自己確認して欲しい項目

扶養控除申告書は従業員の方も間違えて記入している場合が多く、事務手続き側も修正作業に手間を取られてしまうことが多々あります。間違えやすい注意事項をまとめてみましたので、記入の際の注意点として従業員の方にも注意してもらうようにして下さい。

  1. 世帯主の名前や配偶者の有無が正しく記載されているか
  2. 従業員の印鑑の漏れはないか(シャチハタ以外が望ましい)
  3. 個人番号は正しく記載されているか
  4. 控除対象配偶者、扶養親族の住所が抜けていないか
  5. 異動がその年あった場合の異動事由が漏れていないか
  6. 所得金額が38万円を超えていないか
  7. 16歳未満の扶養家族の記載に漏れがないか、収入金額にゼロなどの記載があるか
  8. その年に産まれた16歳未満の親族にもれがないか
  9. 扶養親族を正しく記入しているか
  10. 所得ではなく収入を記載していないか
  11. マイナンバーを正しく記入しているか
  12. その年に異動のあった扶養親族についてのもれがないか

他の所得者が控除を受ける扶養親族等とは、同一生計内に給与者が二人以上いる場合で、その従業員以外の給与所得者の扶養控除を受ける場合です。例えば、従業員の子供(16歳以上)が従業員の妻の方の収入で扶養控除を受ける場合などです。

こちらも参考にしてください:『[年末調整]2016年(平成28年)分で気を付ける点のおさらい