[年末調整] 小規模企業共済、確定拠出年金の控除を受けるには

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

 

個人の事業主が廃業した場合、あるいは法人の役員の場合、退職金を自ら積立てて、退職金をもらえる共済制度に小規模企業共済というものがあります。また、個人が拠出した掛金の金額とその掛金の運用した結果得られる収益により、将来受け取れる金額が決定する年金制度として、確定拠出年金制度があります。この2つの掛け金はその年に支払った分に関しては、年末調整で控除を受けることができます。2つの制度の内容と年末調整での扱いについて、確認してみましょう。

1 小規模企業共済と確定拠出年金の違い

小規模企業共済の内容と特徴

小規模企業共済とは個人事業主やフリーランス、会社の役員が加入対象者となっており、廃業や退職をした時に退職金を受け取れる制度で、運営は中小機構が行っています。小規模企業共済には掛け金と担保とした貸付制度があり、途中解約もできます。したがって、資金繰りが厳しいときには便利な制度であるといえます。ただし、途中解約した場合は元本割れするリスクがあり、決まった毎月の掛け金は減らすことが難しいという特徴があります。

確定拠出年金の内容と特徴

確定拠出年金は、アメリカで普及している確定拠出型の企業年金が401kプランと呼ばれており、日本版401kやDCと呼ばれています。確定拠出年金の年金資産は、加入者が自分自身で選択して運用していき、企業または国民年金基金連合会が運営しています。
掛け金に関しては、確定拠出型の場合は事業主が負担する企業型と本人が拠出する個人型があります。企業型では、企業が拠出を行い、個人型は、個人が拠出を行います。個人型は、さらに、国民年金加入者(第1号)と会社員で、企業年金も確定拠出年金も加入していない会社員の2つのタイプがあります
よって、加入の際は、自営業であるか、自分の会社が企業年金に加入しているかで、拠出限度額や加入条件が異なります。また、確定拠出年金の給付には、老齢給付金、高度障害や死亡した時の障害給付金や死亡一時金があります。老齢給付金は、60歳以降に受給が開始されます。
確定拠出年金は、リスクに応じて、自分で運用先を選択でき、掛け金を減らすことが簡単です。よって、毎月の運用に関しては、自由度が高いといえます。ただし、運用した結果のお金は60歳まで受け取ることができず、途中解約ができないため、資金が固定化してしまうというデメリットもあります。

小規模企業共済と確定拠出年金の違い

小規模企業共済は加入対象者が個人事業主や会社の役員であるのに対して、確定拠出年金は、経営者だけでなく、会社員全般が対象となっています。また、掛け金の金額や変更、受け取れる時期、運用方法などは異なります。
両者ともに、その年に支払った掛け金の全額が年末調整で所得税の計算上、控除の対象となります。

 

小規模企業共済と確定拠出年金の共通点小規模企業共済と確定拠出年金の異なる点
掛け金の受取、掛け金の増額の変更、節税金額加入対象者、掛け金の金額の上限と下限、掛け金の減額の変更、途中解約、掛け金の受取条件、予定利率、運用先の決定

 

 

2 年末調整での書き方

小規模企業共済と確定拠出年金ともに掛け金は小規模企業共済掛金等掛金控除の対象となります。
小規模企業共済の場合は掛け金払い込み証明書、確定拠出年金の場合は国民年金基金連合会の払い込み証明書が年末に送付されてきます。その送られてきた書類に記載されている金額がその年の払い込み金額になるので、平成28年給与所得者の保険料控除及び配偶者特別控除の申告書の小規模企業共済掛金等掛金控除欄に記入します。生命保険料控除の欄とは異なるので、注意が必要です。小規模企業共済掛金等掛金控除欄は、3つに分かれていますが、小規模企業共済の場合は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛け金の欄に、確定拠出年金の場合は個人型又は企業型年金加入者掛金の欄に記入します。

3 小規模企業共済等掛金控除を受けるのに必要な書類

小規模企業共済掛金等掛金控除を受けるには、小規模企業共済の場合は掛け金払い込み証明書、確定拠出年金の場合は国民年金基金連合会の払い込み証明書の添付が必要となります。

4 まとめ

個人事業主や会社の役員の場合、保障がなく、廃業や退職時に備えた退職金が必要となります。そのためには、小規模企業共済制度は最適な制度であるといえます。また、一般の会社員の場合、社会保険に加入していても、確定給付制度と呼ばれるもので国の運用に委託されており、自分で運用できるものではないです。確定拠出年金は自分で年金資産を運用するため、運用次第では多くの年金を受け取ることができます。いずれも掛け金は所得税および住民税の計算上、控除の対象となるため、資産運用だけでなく、節税対策としても、メリットがあります。