従業員が定年した後、再雇用する場合に気を付けなければいけないこと

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

平成25年4月から法律が改正されて65歳までの継続雇用制度の導入が義務化されました。

これは高齢化社会への対応のためと、年金の支給開始年齢の段階的な60歳から65歳まで移行のために60歳で定年を迎えると65歳まで無収入になってしまう人が出てくるためへの対応策です。実際に企業側が60歳を超えた社員を再雇用する場合に気を付けるべきことについてご説明していきます。従業員が定年を迎える時に向けてきちんと制度を整えるためにも今から必要な知識を蓄えておきましょう。

再雇用の動向

独立行政法人労働政策級研究・研修機構の60歳以上の再雇用に関する調査結果の主な概要は以下の通りです

雇用形態(60歳から64歳までの場合)

・嘱託・契約社員 60.7%
・正社員     34.2%

60歳を超えたことで雇用契約を結び直し、「期間の定めのない雇用」である正社員から有期雇用契約である嘱託や契約社員として再雇用するケースが多いようです。

仕事内容

・定年前と全く同じ仕事 39.5%
・定年前と同じ仕事だが責任の重さが変わる 40.5%

年収(フルタイム勤務←賃金だけではなく、企業年金や公的年金の額も含む)

・年収200万~300万円   15.6%
・年収300万~400万円   27.1%
・年収400万~500万円   15.0%

※年金も含んだ収入ということになるので実際の会社から受けている賃金は元の年収の5から6割程度の場合が多いようです。
それでも年金と合わせると60歳を超えてもそれなりの収入を得ていると言えますね。

66歳時点の賃金水準

65歳直前の賃金水準と比較すると平均的な水準は87.3%です。

65歳を超えたことによる賃金の減少幅もそんなに大きくはないようですね。

65歳以降の高年齢者が就いている仕事

・専門的・技術的な仕事  40.1%
・管理的な仕事      27.3%
・事務的な仕事      17.9%

圧倒的に専門的・技術的な仕事の人が多いですね。65歳以降の高年齢になっても働き続けられる人は高度な専門的技術的なスキルを持った人が多いということでしょう。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 No.156「高年齢者の雇用に関する調査」

継続雇用制度が義務化された背景

そもそも65歳までの継続雇用が義務化されたのは「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が平成25年から改正されたためです。雇用を延長するためには以下の方法が選択できます。

  • 定年の年齢を引き上げる
  • 継続雇用制度の導入
  • 定年制度の廃止

※決して定年を65歳にすることを義務付ける法律改正ではなく、再雇用制度の導入でも良いことになっています。

具体的には年金の支給年齢の移行時期に合わせて継続雇用制度が義務化されている年齢は段階的に決まっており、厚生年金の支給開始年齢に合わせて以下の通りに決まっています。
その詳細は以下の通りです

  • 平成25年4月から   61歳
  • 平成28年4月から   62歳
  • 平成31年4月から   63歳
  • 平成34年4月から   64歳
  • 平成37年4月から   65歳

実際に定年を引き上げると企業側の負担も高いために継続雇用制度の再雇用の制度を導入している企業がほとんどです。制度の導入には規程の改定が必須になりますね。

しかし、ここで注目したいのは法律が義務付けているのは継続雇用制度の導入であって「再雇用の希望者全員を継続雇用する」ということではありません。労働条件などが折り合わなかった場合には当然、継続雇用できない場合も起こり得ます。それでも労働者が断ることを前提とした劣悪な労働条件の提示は法律違反にもなりますので、再雇用の際の労働条件は常識的な範囲で設定しましょう。

再雇用する際に必要な手続き

定年を迎えた社員を再雇用する際に必要な手続きの主な内容は以下の通りです。

  • 新たに雇用契約を結ぶ(定年の引き上げではない場合)
  • 新たな勤務条件での社会保険の手続き
  • 勤務条件に変更に応じて、雇用保険の手続き

再雇用の雇用契約書の記載内容

再雇用の際の雇用契約書についての記載内容はアルバイトなどの雇用契約書をイメージするとわかりやすいでしょう。

必要な記載事項

  • 労働契約の期間
  • 就業の場所
  • 仕事内容
  • 勤務時間
  • 残業の有無
  • 休憩時間
  • 休日
  • 休暇
  • 賃金の決定方法(月給、日給、時間給など)
  • 賃金額
  • 賃金の締め日、支払日
  • 賃金の支払い方法
  • 退職に関する事項
  • 昇給に関する事項
  • 契約更新の有無
  • 加入する保険の有無(雇用保険、社会保険など)
  • 更新する際の基準

再雇用の際に所定労働時間が正社員よりも短くなる場合に明示すべき事項

  • 昇給の有無
  • 賞与の有無
  • 退職金の有無

再雇用ということで軽易な業務に転換することであれば、その業務に応じた賃金額で問題ありません。しかし、全く同じような業務内容である場合に再雇用ということで大幅に賃金や待遇を下げるのはトラブルのもとにもなりますので注意してください。

就業規則の改定

継続雇用制度を導入することによって就業規則の改定が必要なってきますが、ケース別にその具体例をご紹介していきましょう。

希望者全員を65歳まで継続して雇用する制度へ改定を行う場合の例文

「従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日を持って退職とする。ただし本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しないものについては、65歳まで継続雇用する」

平成25年3月31日以前、継続雇用する対象を限定する労使協定を結んでいる場合の例文

従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日を持って退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しないものであって、高年齢雇用安定法一部改正法附則第3項に基づきなお効力を有することとされる改正前の高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、65歳までの継続雇用をし、基準のいずれかを満たさない場合でも基準の適用年齢まで継続雇用する。
・過去の○年間の出勤率が○%のもの
・直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと

その他

基準の適用年齢

  • 平成25年4月1日~ 平成28年3月31日まで  61歳
  • 平成28年4月1日~ 平成31年3月31日まで  62歳
  • 平成31年4月1日~ 平成34年3月31日まで  63歳
  • 平成34年4月1日~ 平成37年3月31日まで  64歳

以前の法律では労使協定で継続雇用の対象者を限定する基準を設けることが可能でした。しかし、今回の改正でこの仕組みが改正されるために、平成25年4月1日からは就業規則のこの基準を上記のように改正する必要があるのです。

わかりやすく言うと、上記期間において
厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢までは
 →希望すれば、基準に関わらず継続雇用制度の対象になる経過措置を行う必要がある

厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に達してからは
 →労使協定で結んだ基準を引き続き利用できる

ということになります。
参考:大阪労働局 「改正高年齢雇用安定法が施行されます」

就業規則の変更の際には所轄の労働基準監督署への届け出が必要になりますので、改正後はきちんと届け出を行いましょう。

尚、以下の場合には就業規則の改定は必要ありません。

  • 65歳以上の定年制を導入している
  • 定年制を設けていない
  • 希望者全員を65歳まで継続して雇用する制度をすでに設けている

有給はどうなるのか

定年後の再雇用の際の有給については雇用関係が続いている限り、これまでの勤務期間も通算して与えることになります。これは勤務が継続していれば退職手当を支給した場合も含み、これまでの通算した勤務期間に応じた日数を付与することになります。

しかし、退職してから一旦勤務していない期間があるなど、雇用関係が断絶している期間があると認められる状況の場合はこれまでの勤続年数は考慮しなくても良いでしょう。この場合は再雇用されてから6カ月継続勤務し、8割以上の勤務実績がある時に10日の有給を与えることになります。

年金はちゃんともらえるのか

再雇用をされている場合でも受給資格を満たしている場合には年金はもらえますが、その金額に調整が入ったり支給停止されたりする場合もあります。年金はそれぞれの生年月日や加入期間に応じて支給開始時期が異なりますので、必要な加入期間などの条件を満たしていない場合にはもらえない場合があります。

働いて収入がある場合には年金が調整されて支給されますので、実際にもらえる年金の額よりは少なくなります。それでも60歳から64歳までは在職中であっても年金の月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えない限りは、年金が全額支給されます。

また、受け取っている賃金が多い場合には年金が全額支給停止される場合もあります。平成27年4月1日より支給停止額が47万円となりました。受けている年金の月額と働いている賃金に応じた総報酬月額相当額の合計が47万円を超えると年金が全額支給停止されます。

参考:日本年金機構 在職老齢年金の支給停止調整変更額などが変更になりました

定年後の再雇用によってもらえる補助金とは

高年齢雇用継続給付(従業員向け)

以下の条件を満たす60歳以上の雇用保険の被保険者が下がった分の賃金の一部を受け取れる制度です。

受給要件

  • 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
  • 雇用保険の被保険者であった期間が通算して5年あること
    (5年に達した時点で対象となる)
  • 60歳到達後も継続して雇用されていること
  • 60歳時点と比較して賃金が75%未満となっていること

支給される金額は60歳時点の賃金からいくら低下したのかという低下率によって決まり、条件を満たす限り65歳までに達する月まで支給されます。
年金を受給している場合はこの高年齢継続給付の金額によっては年金の一部が支給停止される場合があります。

申請方法

申請については会社がハローワークに行って行うことになります。支払いは本人の口座に振り込まれる仕組みになっています。雇用継続給付の一部なので育児休業の申請手続きと似ており2回目以降の申請は2カ月ごとに1度行うことになります。

詳細は以下を参考にしてください。
参考:ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付 高年齢雇用継続給付

65歳超雇用推進助成金(会社向け)

平成28年10月19日以降に置いて、労働協約または就業規則による、次のいずれかに該当する制度を実施した場合が対象です。

  • 65歳以上の定年引上げ
  • 定年の定めの廃止
  • 希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入

上記場合に加えて、制度の規程の際に経費を要した、労働協約や就業規則を整備している、1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者がいる、など受給要件があります。

詳細は以下を参考にしてください。

参考:厚生労働省 事業主のための雇用関係助成金 65歳超雇用推進助成金

まとめ

定年を迎えた従業員の再雇用について知らなければならない情報が満載ですね。以下の点をポイントとして押さえておきましょう。

  • 平成25年に高年齢雇用安定法が改正
  • 60歳を迎えた従業員に対して雇用継続制度の導入などが義務化
  • 新しく制度を導入した際には就業規則の改定の必要
    →その際は労働金監督署への届け出も必要
  • 年金の支給開始年齢に合わせた経過措置がある
  • 再雇用の際はきちんと契約書を交わす
  • 有給は原則、これまでの勤続年数を通算する
  • 従業本人には並行して年金が支給される場合がある
  • 従業員本人は条件を満たせば雇用保険から給付金が支給される場合がある

高年齢者の雇用継続制度の義務化は始まったばかりです。まだまだ規程や職場環境、人員配置など整えていかなければならない課題はたくさんありますね。高齢化社会により多くの高齢者がたくさん働いている時代です。会社として必要な制度を整え、高齢者にも会社の大事な戦力になってもらいましょう。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。