[年末調整の手続き]2016年(平成28年)分で気を付ける点のおさらい

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

2016年分の年末調整は先手必勝!

 

暑い夏が終わったかと思えば、もう年末調整の準備をする時期がやってきましたね。生命保険料の控除証明書なども続々と届き始める頃です。
年末調整は年末の恒例業務なので慣れているという方も、今回初めて業務にたずさわるという方も、いらっしゃると思います。年末ギリギリになって慌てないように、ここでは年末調整業務を既に経験されている方向けに、年末調整の業務の流れや、近年の年末調整の変更点、気を付けなければいけないことなどについて見ていきたいと思います。

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年末調整って何をしているの?

そもそも年末調整とは何をしているのか、もう一度確認してみましょう。
所得税は、基本的には収入を得た個人が確定申告をすることによって、税額を確定させ、納税するという仕組みになっています。
しかし、給与以外に収入がないサラリーマンについては、その多くの場合が、勤務する事業所において年末調整を行うことによって、税額を確定させて完結するという仕組みになっています。
簡単にいうと、毎月の給与から控除している所得税を、年末にきちんと所得税の計算をして差額を精算しようということなのですね。
つまり、状況次第では還付にならずに徴収になる方もいらっしゃいます。
また、2か所から給与をもらっている方で要件を満たす人や、給与の年間収入が2,000万円を超える方など、年末調整では完結せずに、確定申告が必要な方もいらっしゃいますので、注意が必要ですね。

年末調整の流れ

まずやらなければならないことは、従業員に年末調整関係の書類を渡し、記入をしてもらうこと、生命・地震保険料控除証明書や、住宅借入金控除関係の書類など、必要な書類をそろえてもらうことですね。
年末調整に必要な書類が入手できたら、実際の計算を開始しましょう。
給与計算ソフトや、独自の書式を使っていらっしゃる方も多いと思いますが、年末調整の大まかな流れをおさらいしてみたいと思います。

  1.  各従業員の給与、給与から控除した所得税や社会保険料の年間の合計額を求めると共に、給与所得控除後の金額を求める
  2.  配偶者控除や扶養控除など、生命保険料、地震保険料控除などの各種所得控除額を求める。
  3.  1の給与所得控除後の金額から、2を控除して、課税給与所得金額を求める。(千円未満の端数は切り捨てる。)
  4.  算出所得税額の速算表で税率を調べ、3に乗じて所得税額を求める。
  5.  住宅借入金控除額がある人は、4から控除する。(控除しきれない場合は0になる。)
  6.  5に、102.1%を乗じて復興特別所得税も考慮した年調所得税額を求める。
    (100円未満の端数は切り捨てる。)
  7.  1で集計した所得税の額と、6で求めた年調所得税額の差額を還付または徴収する。
    なお、各種控除額や、税率表などは国税庁のホームページから入手できる、「年末調整のしかた(平成28年)」というパンフレットにのっていますので、ご参照くださいね。
    このパンフレットは、毎年新しいものが提供されていますので、必ずその年の分を参照しましょう。

近年の年末調整での変更点

①16歳未満の扶養親族の扶養控除(38万円)の廃止

平成23年分から、16歳未満の扶養親族の扶養控除(38万円)が廃止されています。
そのため、平成23年分の扶養控除等(異動)申告書から、16歳未満の扶養親族と16歳以上の扶養親族の情報を記入する欄が区別されています。
過去の流れのまま、16歳未満なのに誤って、16歳以上の扶養親族の欄に記入していることもあると思いますので、控除する前にもう一度、扶養親族の生年月日を確認した方が良さそうですね。

②生命保険料控除が変わった!

平成24年分から生命保険料控除が変わり、平成24年1月1日以降に契約した保険契約については、新契約、それより前の保険契約については、旧契約に区分されるようになりました。
さらに、控除限度額が4万円の介護医療保険料控除の枠が設けられています。
旧契約の一般生命保険料控除、個人年金保険料控除については、それぞれ控除限度額が5万円となっており、新契約の一般生命保険料控除、個人年金保険料控除については、それぞれ控除限度額が4万円となっています。
さらに、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の合計で12万円が控除限度額となっています。
以前に比べてやや複雑になっていますので、生命保険料控除証明書の区分をしっかり確認して控除しましょうね。
また、その際には合わせて控除証明書がその年のものかも確認してみてください。
意外と過去の控除証明書が添付されてくることも多いです。

③復興特別所得税の創設

平成25年分から復興特別所得税が創設されています。
年末調整の際には、計算した所得税の額(年調所得税額)に102.1%を乗じて税額を算出する必要がありますので、乗じるのを忘れないように注意したいですね。

④所得税率の変更

平成26年までは分離課税のものを除くと、所得税の税率は6段階に区分されており、その最高は所得金額が1,800万円超の場合の40%となっていました。
平成27年からは分離課税のものを除くと、税率が7段階に区分され、その最高は所得金額が4,000万円超の場合の45%となっています。
年末調整を行う際には、実際にその年の算出所得税額の速算表を手元で確認しながら進めた方が良さそうですね。

平成28年分の年末調整からの変更点

①通勤手当の非課税限度額の引き上げ

平成28年1月1日以降に支払われる分から、通勤手当の非課税限度額が1か月あたり、10万円から15万円に引き上げられています。
こちらの改正は平成28年4月に行われていますので、それ以前の平成28年1月から3月分について、改正前の非課税規定で計算すると過納になってしまう場合には、年末調整で精算が必要になります。
精算は、源泉徴収簿の年末調整の計算欄で行うことになりますので、ご注意ください。

②扶養控除等(異動)申告書へのマイナンバーの記載

平成28年分の扶養控除等(異動)申告書には、本人や配偶者などのマイナンバーの記載が必要ですので、記載されていることをしっかり確認しましょうね。
本人確認や個人番号確認がまだの従業員については、このタイミングで忘れずに行いましょう。
なお、平成29年分以降については、一定の事項を記載した帳簿を備えることにより、マイナンバーの記載をしないでよいことになりました。

 

扶養控除等申告書には、基本的には、従業員等のマイナンバー(個人番号)を記載する必要がありますが、給与支払者が扶養控除等申告書に記載されるべき従業員本人、控除対象配偶者又は控除対象扶養親族等の氏名及びマイナンバー(個人番号)等を記載した帳簿を備えている場合には、その従業員が提出する扶養控除等申告書にはその帳簿に記載されている方のマイナンバー(個人番号)の記載を要しないこととされました。
なお、この帳簿は、次の申告書の提出を受けて作成されたものに限ります。
1 給与所得者の扶養控除等申告書
2 従たる給与についての扶養控除等申告書
3 退職所得の受給に関する申告書
4 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
また、給与支払者が備えている帳簿に記載された従業員等の氏名又はマイナンバー(個人番号)と提出する扶養控除等申告書に記載すべき従業員等の氏名又はマイナンバー(個人番号)とが異なる場合には、マイナンバー(個人番号)の記載を不要とする取扱いをとることはできません。
(注) 1 この取扱いは、平成29年1月1日以後に支払を受けるべき給与等に係る扶養控除等申告書から適用できます。
2 この取扱いは、「従たる給与についての扶養控除等申告書」、「退職所得の受給に関する申告書」及び「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」についても同様です。

(出典元:源泉所得税関係に関するFAQ:(1) 扶養控除等申告書関係

マイナンバー関連のFAQが、国税庁のWebサイトで公開されているので、ぜひ一度おさらいすることをおすすめします。

③国外居住親族の扶養控除について

平成28年1月1日以降は、国外居住親族について扶養控除を行う場合に、親族関係書類と送金関係書類の提出をお願いする必要があります。
国外居住親族とは、簡単にいうと①日本国内に住所を持っていない、または、②引き続き1年以上日本国内に居所がない人のことをいいます。
お子さんが海外留学中などの場合は、あてはまることがありそうですね。

まとめ

今回は、年末調整の業務を進める中で気をつける点を中心に、大まかな流れを確認していきました。
まずは、従業員から年末調整に必要な書類をしっかりと集めることが重要ですよね。
その後は、集めた書類をもとに、「年末調整のしかた」を参考にしながら年末調整を進めていくと良いと思います。
特に、近年の改正点にはご注意くださいね。
年末は、何かと慌ただしく過ぎていってしまいがちですし、今年はマイナンバーの記入も必要なので、早め早めから準備しておきたいですよね。

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