従業員のストレスチェック義務化。何をどうすればいい!?

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

従業員のストレスチェックって?

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票(選択回答)に回答し、その結果を集計・分析することによって回答者のストレスの状態を確認する検査のことです。近年、仕事に対して強い不安や悩み、不安を抱えている人が5割を超えています。

平成18年度以降の調査で、仕事が原因で「うつ」などの精神障害を発症し、労災認定されるケースが増加傾向を示しています。このような状況を踏まえ、労働安全衛生法という法律が改正され、平成27年12月よりストレスチェック制度が導入されました。この制度の導入には、従業員の抱えているストレスの状況を各事業場において把握し、ストレスを軽減するための対策を行うことで、従業員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐという意味があります。

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ストレスチェック制度の概要

<1>ストレスチェックが義務化される事業場
常時労働者を50人以上使用する事業場(パートタイム労働者や、派遣先の派遣労働者も含む)

<2>実施頻度
年に1回のペースで実施。初回は平成27年12月1日より1年以内(平成28年11月30日まで)に1回行う(結果通知や面接指導はこれ以降でも可)。

<3>対象者
全労働者(契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外)

どのように行えばいいの?

<1>導入前の準備
制度を導入する前に、社内での準備を行いましょう。
• 社内でメンタルヘルスの不調を未然に防止するため、ストレスチェックを行う方針を示す。
• 社内の衛生委員会で実施方法について話し合う。
<例>
・誰に実施させる?
・ いつ実施する?
・ どんな質問票を使う?
・ ストレスの高い人を選ぶ基準は?
・ 面接指導の申出は誰にする?
・ 面接指導はどの医師に依頼する?
・ 集団分析はどんな方法で行う?
・ ストレスチェックの結果は誰がどこに保存する?など
• 決まった内容を社内規定に明文化し、全労働者に知らせる。
• 実施体制・役割分担を決める。
<例>
・制度全体の担当者(社内で計画を策定したり、進捗状況を把握、管理する)
・制度実施者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士の中から選択。外部委託も可)
・実施事務従事者(実施者を補助する役割。質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務。外部委託も可)
・面接指導担当医師など

<2>調査票の配布・記入
質問票を労働者に配布して記入してもらいます。質問票は、以下の質問が含まれていればどんなものでもよいです。
① ストレスの原因に関する質問項目
② ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
③ 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
どんな様式を使用したらいいか分からない場合には、国が推奨する57項目の質問票を使いましょう。また、ITシステムを利用してオンラインで実施することも可能です。厚生労働省のホームページにて「ストレスチェック実施プログラム」が無料ダウンロードできますので、それを使用してもよいでしょう。

<3>結果の集計と分析
医師などの実施者が質問票を回収し、その内容から高いストレスを感じていて、医師の面接指導が必要な者を選び出します。

<4>結果の通知
チェックの結果、ストレスの状態が高いかどうか、医師の面接指導が必要か否かについて、実施者が本人に直接通知をします。
<5>結果の保存
実施者がストレスチェックの結果を保存します。結果を企業内の鍵のかかるキャビネットやサーバー内に保管してもよいですが、第三者に閲覧されないよう、実施者(または実施事務従事者)による鍵やパスワードの管理が必要です。

<6>面接指導の実施
ストレスチェックの結果、「医師の面接指導が必要」とされた者について、本人からの申し出があった場合には、医師による面接指導を行います。本人からの申し出は1か月以内に行われる必要があります。また、本人から申し出があった場合に、面接指導を行うのも1か月以内に行いましょう。

<7>医師の意見聴取と就業上の措置
面接指導を行った医師から、就業上の措置の必要性があるかどうか意見を聴き、労働時間の短縮などの措置を取りましょう。この意見聴取も面接指導から1か月以内に行う必要があります。
面接指導の結果は5年間事業所で保存しましょう。以下の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しても差し支えありません。
① 実施年月日
• 労働者の氏名
③ 面接指導を行った医師の氏名
• 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
⑤ 就業上の措置に関する医師の意見

<8>職場分析と職場環境の改善
職場のストレスの傾向を知るために、部、課、グループなど一定規模の集団ごとの結果を実施者に集計・分析してもらい、その結果を提供してもらいましょう。原則10人以上の集団で行いましょう。10人未満の場合は個人の結果が特定される恐れがあるので、全員の同意が必要です。

<9>労働基準監督署への報告
ストレスチェックの結果については、労働基準監督署に報告を行う必要があります。厚生労働省のHPより「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」をダウンロードの上、報告を行って下さい。

ストレスチェック実施促進助成金って?

職場の従業員が50人未満の場合は努力義務ということになりますが、メンタルヘルス義務化対象外の事業場の実施を促進するために、ストレスチェック実施促進助成金があります。助成金の概要については以下の通りです。

<1>助成金額
①年に1回ストレスチェックを行った場合
1労働者につき500円を上限としてかかった実費
②ストレスチェック後に産業医による面接指導などの産業医活動を受けた場合、1回につき21,500円を上限とした実費(1事業場につき年3回まで)

<2>手続きの流れ
① 事業場登録を行う(期間:平成28年4月1日~平成28年11月30日:消印有効)
② 登録届受付通知書の受取
• ストレスチェック、面接指導の実施
• 助成金支給申請(期間:平成28年4月15日から平成29年1月31日:消印有効)
• 助成金支給決定通知の受け取り、助成金受領
事業場登録の書類審査には時間を要します。また、期間中であっても、受付を終了することがあるようです。申請予定の場合はなるべく早めに登録や申請を行うようにしましょう。

まとめ

2015年(平成27年)12月以降、従業員数が50人以上の事業場については、基本的に全労働者について、年に一回はストレスチェックを行うことが義務となります。社内で制度について十分に話し合った上で、従業員のストレスチェックを行いましょう。チェックには厚生労働省の提供する「ストレスチェック実施プログラム」が便利です。その結果、高ストレスな者については医師の面接指導を行うことにより、就業上の問題点を発見し、解決するための対策を行いましょう。チェックの結果を労働基準監督署に報告するのも義務の一つです。また、義務化対象外の50人未満の事業場であっても、ストレスチェック実施助成金を利用すれば、ストレスチェックを職場に導入しやすくなります
従業員のメンタルヘルスの不調は、従業員本人にとってだけでなく、会社にとっても重要な問題となります。ストレスチェックはトラブルを防ぐためにも有効なので、是非積極的に取り組んでいきましょう。

 

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