いきなり退職した従業員への対応と手続き

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

いきなり退職した従業員

従業員が退職すると、業務の引継ぎや代わりとなる人材を採用しなければならないため、就業規則や労働契約書で「退職の1か月前には退職の意思を会社に伝えなければならない」などのように、一定の期間より前に退職の意思を伝えるよう規定している会社がほとんどだと思います。就業規則に従い早めに退職の意思を伝えてくれる従業員が大多数ですが、中には突然退職する、無断欠勤が続いているなど困った従業員が出てくるかもしれません。

今回はそんな従業員への対応や手続きの方法ついて説明します。

従業員がいきなり退職してしまった場合

会社にとっては早めに退職の意思を伝えてもらう事が一番望ましいですが、何の前触れもなく突然退職する従業員も実際にはいます。しかし労働者には退職の自由があり、従業員の突然の退職そのものを防止することは法律上でもほぼ不可能といえます。もし突然退職の申し出をしてきた場合の対応としては下記の方法があります。

従業員と連絡がとれる場合

突然退職を申し出てきても会社にはそれを拒否する権利はありません。この場合は、辞めたいと考えるに至った過程や理由、意思の固さなどを確認し、業務の引継ぎまでしてもらえるか等の話し合いをします。

しかし退職の自由が認められるとは言え、従業員には業務の引継ぎをなすべき義務や貸与物(制服等)の返還義務もあります。もし従業員がそれに応じない場合で、就業規則で「退職金を一部又は全部を支給しない」等の旨が規定されているのであれば、違反の程度に応じて「退職金の一部又は全部の没収」や「その他の懲戒処分」のあり得ることを警告して引継ぎ業務を促すことはできますが、その場合でも引継ぎ自体を強制することは出来ません。

執拗に引き止めたり、退職をすることに対して金銭的ペナルティを与えたりすれば、会社が法律違反となりますので注意して話をしましょう。

従業員と連絡がとれない場合

「口頭やメール、退職届で退職の意思表示はしたがその後連絡が取れない場合」は退職の手続きを進めるしかありません。

「連絡が取れる場合」でも述べた通り、業務の引継ぎ義務や貸与物(制服等)の返還義務に応じない場合は、規定があれば「退職金を一部又は全部を支給しない」などの対応が出来ますが、その程度によってはトラブルを招くこともありますので専門家に相談してから対応する方が良いでしょう。
そして連絡が取れない場合に多いのが「無断欠勤」です。この場合は万が一ということもありますので、家族や身元保証人などに問い合わせ、それでも連絡が取れない場合は内容証明郵便で出勤を督促しておきましょう。連絡をとっても居留守を使っているなどの場合であれば、懲戒解雇、または退職の申し出があったものとみなして自己都合退職の手続きを進めます。いずれの手続きも、「正当な理由なく欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じない又は連絡が取れないときは懲戒解雇(自己都合退職)とする」などの事柄を「懲戒解雇理由」「退職事由」として規定しておくことが必要になります。
懲戒解雇はハードルが高くかなりの手間がかかりますので、出来るだけ自己都合退職扱いにすることをお勧めします。
どうしても懲戒解雇の手続き取りたい場合は、行方がわからない相手に対し意思表示を行ったことを法的に証明するための「公示送達」を行います。それにより実際に相手が見たかどうかにかかわらず、2週間後には意思表示が相手方に到達したと見なされます。 そしてその後も連絡が取れない場合には、労働基準監督署にて解雇予告除外認定を受けた後、懲戒解雇の手続きを行うことができます。
なお、会社に就業規則がない場合でも手続きを行うことは出来ますが、従業員があとで主張してきた際に無効とされてしまう可能性が高いので、就業規則には必ず規定しておきましょう。

従業員の退職時に必要な手続き

従業員への対応方法が決まったら、下記の手続きを進めましょう。自己都合退職でも解雇でも、退職理由の意味合いが違うだけで手続きの内容は変わりません。手続きが終わると、年金手帳などの返却物や、従業員に渡す手続書類を送付しなければなりませんので、下記の「送付書類一覧」で一度確認し、漏れの内容に気を付けましょう。

従業員の退職手続き

  • 社会保険資格喪失手続
  • 雇用保険資格喪失手続
  • 最後の給与計算

詳しくは「従業員の退職手続」をご覧ください。
送付する書類については「従業員の退職後(最終出社日以降)に送付する書類一覧」をご覧ください。

まとめ

突然退職する、連絡が取れなくなるような従業員には職務怠慢などの問題がある場合が多いですが、
中には違法行為を行うなど会社の大きな損害になるような場合もあります。採用時にしっかりと見極めることがベストですが、採用試験や面接だけでは分かりづらいのが現実です。法律は労働者を守り、会社側には制限をかけるような内容になっているため、たとえ問題ある従業員だとしても慎重な対応を求められます。
そんな中でも防衛策として効果があるのが就業規則です。就業規則は行政のチェックを受けて認められた会社のルールですので、これに違反し会社に大きな損害を与えた従業員に対しては損害賠償請求をすることも可能です。大きなトラブルはもちろん、突然の退職など対応に困る問題を予防する意味でも、定期的に就業規則を見直し、しっかりとした規定を作っておくことが大切なのではないでしょうか。

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『人事労務の基礎知識』編集部
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株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。