健康保険 被扶養者(異動)届を提出しよう! 書き方と注意が必要なポイントを徹底解説

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

ストレスチェック、義務化だってさ。何から手を付けようか・・・

病院の受診には欠かせない健康保険被保険者証。これを提示することで、病院窓口で支払う診察代は3割負担で済みます。会社の総務担当者は、自社の従業員のために被保険者資格取得届を提出しますが、そのご家族の手にも保険証が届くよう、必要な手続きをする責任があります。ご家族のための手続というのが、被扶養者(異動)届の提出です。

被扶養者と認められるのはどんな人?

・親族の範囲

まず、どのような場合に被扶養者(異動)届を提出するのでしょうか。一番多いのは、すでに家族持ちの人を新たに雇い入れた場合でしょう。また、すでに雇い入れている従業員が結婚したり子どもが生まれたりして、被扶養者が増えることもあります。家族が引っ越してきて同居するようになったとか、離職して健康保険から外れたことが理由となる場合もあります。具体的には配偶者・子・孫・弟妹・父母・祖父母がいる場合(同居していなくても生活費を仕送りしているなら扶養関係があると認められる)や、さらにそれ以外の3親等以内の親族で同居する者がいる場合です。紛らわしいですが、兄姉や義父母は後者に当たりますので、同居している必要があります。

※注記:平成28年10月以降、この要件が一部調整され、兄姉が同居している必要はなくなります。

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・収入の範囲

収入による認定基準もあります。基本的に従業員に生活を世話される配偶者や子で収入のない人が被扶養者となりますが、少しでも収入があったら扶養から外れるわけではありません。どのくらいの収入までなら認められるか、これが認定基準です。

扶養される人は扶養する従業員の年収の半分以下でしかも年収130万円以下でなければなりません。60歳以上の人や障害年金3級以上に該当する人は年収180万円以下が基準となりますので、年金生活の親を扶養に入れたいという方がいる場合には、その年金の額によることになります。失業保険を受給中の方は日額3,611円以下であることが条件です。これは3,611×30日×12月<130万円となるためです。

この認定基準が壁になることがあります。年収130万円以下、つまり月額108,333円以下になるよう、意識的に仕事を調整するわけです。扶養に入るために時間を短くする人が多くいます。将来、この壁は取り払われる可能性があります。当然ですが、いくら年収が低くても、週の労働時間が一定以上になると被扶養者自身が社会保険に加入することになりますので、扶養から外れます。

・その他

添付書類は、続柄や収入によって変わります。同居すべき人が引っ越したり収入がアップしたりして以上の条件を満たさなくなり、扶養から外れるようでしたら、そのための手続が必要です。

書き始める前に何が必要?

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記入するために必要な情報を整理しておきます。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 配偶者なら基礎年金番号
  • 職業(会社員・パート・主婦・学生など)
  • 年収
  • 扶養に入る日(従業員採用日・婚姻日・出生日など)
  • 理由(採用・婚姻・出生などから選択)

などです。

会社の記号番号を左上に記入しますが、これは全国健康保険協会や年金事務所からの通達に記載されているので、過去に送付された書類を参考にすると確認できます。

マイナンバーはどうする?

・記入する理由

公的な手続きで広く使用されるマイナンバーですが、社会保険の手続で使用できるのは2017年以降です。これに伴い2017年からは扶養届の様式も変更され、マイナンバー記入欄が設けられます。マイナンバーは税務署のデータと関連していますので、収入による認定基準を満たしているかどうかを把握することができるようになります。そして市役所のデータと関連していますので、同居しているかどうかを把握することができます。したがって添付書類が減りますし、適正な申請かどうかを正確に確認できます。

・保管

個人番号保護法のもとでは、マイナンバーは必要な場合に限り使用する目的なら保管することができます。コピーを取ったりPCに保存したりする場合は、権限のない者が見ることのできない場所に保管するか、ファイルに暗証番号をかけなければなりません。ただし、被扶養者(異動)届を記入する時だけ見せてもらい、コピーを取ったりせずに返却するなら保管していることにはなりませんので、そのような措置は不要です。特に被扶養者のマイナンバーは使用する機会は少ないでしょうから、預からずに返却して、無用のトラブルを避けることができます。従業員の皆さんのマイナンバーは適切に保管しましょう。

まとめ

被扶養者届は、従業員のご家族が健康保険証を取得して病院を利用できるようになるため、必要な手続きです。保険料を増やすことなく保険給付が受けられるので、従業員の方はなるべく多くの親族を扶養に入れたいと思うかもしれません。しかし、被扶養者が増えすぎると健康保険の財政を圧迫することから、近年の被扶養者認定は厳密になってきています。手続きの際には、扶養の範囲の方かどうかを確認し、収入の認定基準に当てはまるかも確認します。被扶養者となる方のマイナンバーもお持ちいただくようにします。「早く健康保険証がほしい」と従業員の方から急かされることもあると思いますが、提出する際に「至急取扱いお願いいたします」などと付箋に書いて貼っておくことで、早く処理してもらえることもあるようです。ぜひ速やかに提出するようにしましょう。