[企業型確定拠出年金] 中小企業が独自の年金制度をカンタンに作る方法

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

勇者は、企業型確定拠出年金を発見した!

会社は、創業者の使命感や閃きから生まれます。起業後は資金をうまくやり繰りし、事業を何とか軌道に乗せることが必要です。その次に経営者がやるべきことは、従業員の福利厚生などの待遇改善ではないでしょうか?

その理由は明白で、従業員により一層幸せになって欲しいからです。優秀な人材が、幸せな状態で自分の能力を最大限に発揮してくれれば、ライバル会社や大企業に負けない競争力を得られると考えるからです。

とはいえ、大企業並の待遇を整備することは難しいことです。そんな企業経営者の方が、検討するに値する制度が、今回紹介する『確定拠出年金・企業型(企業型確定拠出年金)』です。

確定拠出年金・企業型(企業型確定拠出年金)とは

確定拠出年金には、企業型と個人型(iDeCo)があります。個人型は、確定拠出年金制度を導入していない企業の従業員、フリーランスや個人事業主の方、専業主婦の方などが、会社を通さずに個人で金融機関と契約を結び、毎月の掛金を自分で負担して年金を補おうとするものです。

>※こちらも参考にしてください:『 [ iDeCo | 個人型確定拠出年金 ] 年収400万円・30歳が加入して何がどう嬉しいの?

確定拠出年金は、厚生年金に上乗せして、年金を受け取ることができます。そのため、厚生年金だけでは老後の生活を不安に感じている従業員にも安心を与えられます。

退職年金や企業年金制度を独自に作ろうとすると、全体制度を設計し、運用する必要があるため、中小企業にはハードルが高かったのですが、確定拠出年金制度・企業型を導入すれば、金融機関が設計した制度に加入するだけで、中小企業でも簡単に年金制度をはじめる事が可能です。

確定拠出年金・企業型は、企業が組織としてその従業員を対象に実施する確定拠出年金制度のことです。拠出金(掛金)は、主に企業が負担しますが、従業員個人が拠出金を追加することも可能です。

掛金の設定と、それぞれのメリット/デメリット

掛金の設定の仕方は3つの方法があります

  1. 定額方式: 加入者全員が同じ掛け金を拠出する制度設計です。明瞭な点がメリットです。ただ、新入社員もベテラン社員も同額を拠出するため、会社への貢献度が反映されず、利用しにくいと感じる会社もあるようです。そのため、定額制にする企業によっては、他の退職金制度を併用して、長期にわたり勤務してくれた社員を優遇するところもあります。
  2. 定率方式: 基本給または給与総額などに一定率を掛けた額を掛金とするものです。各社員を平等に扱えるのがメリットです。さらに職階級の上昇に合わせて、この率を引き上げるようにしている会社もあります。注意点としては、この率を決定する基準を明瞭にしなければなりません。
  3. 選択制: 掛金を加入者が自由に設定することができる制度のことです。選択制の仕組みは、まず掛金いっぱいの金額を現在の給与から控除します。これによって一旦給与は下がることになります。そして控除された金額の中から、一部を掛金として選択して拠出し、残りの部分を「前払い退職金」「ライフプラン選択金」「勤続手当」などの手当てとして新たに定義し、毎月の給与に上乗せして受け取るようにします。どの程度を掛金とし、いくらを手当として毎月受け取るかは、従業員各自が1,000円単位で選択することになります。この選択制は自由度が高く、従業員の満足度も高いことがメリットです。一方でデメリットとしては、給与を一旦下げますので、社会保険の等級が下がることになり、その結果として健康保険の傷病手当金や厚生年金の受給額が減ることになります。ですが同時に負担する保険料は減額されますので、この点はメリットとも言えます。以上を充分に理解してもらった上で選択してもらうことが必要です。実際、選択制により生じる節税効果を考えるなら、万が一の時の受給額が減るといっても、このデメリットは比較的小さいものと思われます。

従業員に、運用運用の方法を説明する際のヒント

掛金を、どの運用商品に、どう配分して運用するか。誰もが悩むポイントです。通常の定期預金とは異なり所得税と住民税が非課税になるわけですから、最も安全な定期預金などの元本保証型の商品を選択するだけでも立派な運用です(ただし、通常の定期預金と異なるのは、60歳まで引き出せないことです)。

資産形成をもっと積極的に狙って運用する場合、リスクとリターンを見極めるために、個人的に調査する必要があります。今はネット上に便利な支援ツールが多く公開されています。例えば『投信アシスト』というサイトがあります。

このWebサイトにアクセスし、「金融電卓」→「必要な利回り」と進むと、必要な情報を入力することでどの程度の利回りで運用すればいいかが分かります。例えば「現在年齢30歳で、毎月の積立を最大の5.5万円(※自営業者の場合)にして、60歳までに3,000万円貯めたい場合、どのような運用をすべきか」といったシミュレーションが可能です。

初期費用を「0」、積立額を「5.5」万円、期間を「30」年、目標を「3,000」万円と入力してみましょう。すると、利回りが「2.7%」と算出されました。つまり運用の際には、利回りが2.7%の商品を選ぶか、複数の商品を組み合わせてその利回りとなるようにする必要があるということが分かります。

SBI証券を利用した場合の費用と申込み手順

確定拠出年金・企業型の導入を支援している機関はいくつかあります。この記事では『SBI証券』を利用した、確定拠出年金制度の導入方法についてご説明します。資料は以下のアドレスから請求することができます。

※ステマではありません。SBI証券は、社長1人だけの会社であっても導入可能なため、中小企業が確定拠出年金・企業型をはじめるにあたって最もカンタンで適しています。また、加入のための情報もオープンに提供されている点も大変助かります。

初期費用:SBI証券で、確定拠出年金・企業型を導入した場合

初期費用 導入一時金100,000円
口座開設手数料(1人あたり)3,000円

運用費用:SBI証券で、確定拠出年金・企業型を導入した場合

年一回の資産管理手数料資産残高のおよそ0.09%
月一回の経常費用(事業主手数料)5,000円
加入者手数料(1人あたり)300円
収納代行手数料300円

導入手順:SBI証券で、確定拠出年金・企業型を導入しようとする場合

 

  1. SBI証券のWebサイトから資料請求する
  2. 従業員に制度内容を説明し、従業員代表者の同意を得る(同意書に記入してもらう)。従業員への説明資料も、SBI証券の雛形を利用可能
  3. SBI証券の指示に従い、厚生労働省厚生局へ申請する書類を作成し提出する。制度内容について相談することも可能
  4. 加入者(従業員)を登録し、確定拠出年金制度をスタートする
  5. 加入者(従業員)が、専用のWebサイト上で掛金の配分を指定し、運用を開始。※掛金は、会社の口座から自動で引き落とされる

SBI証券以外を利用した場合の費用と申込み手順

SBI証券以外では、以下のような金融機関が確定拠出年金・企業型の導入をサポートしています。

月々の手数料や商品ラインナップには、それぞれ相違があります。詳細は資料請求をして確認することになります。個人型の場合はネット上に多くの情報が掲載されていますが、企業型は情報をオープンにしているところはほとんどありません。個別に資料請求していただく必要があります。

また、金融機関ごとに、加入者を対象とした研修をどの程度実施されるかが異なります。制度導入時だけでなく継続的に研修をしてくれて、しかも個別の相談にも応じてくれる体制を整えている機関を選択するなら、社内担当者の負担を減らすだけでなく、従業員の満足度も高くなるでしょう。

まとめ

確定拠出年金・企業型は、厚生年金だけでは不安の残る老後の資産形成に用いることができる制度です。2017年1月から大幅な改正があり、政府もこの制度を推進しています。

多くの金融機関がこの制度をサポートしていますが、実際には金融機関にとっては利益が小さい(初期費用や運用費用等の手数料が安い)ため、あまり大きく宣伝されていないのが現実です。それは逆に言えば、企業や加入者にとって大きな利益をもたらす制度である、ということです。

節税をしつつ将来の老後の資金を蓄えることができ、しかも中小企業であっても複雑な手続きを経ることなく導入することができる制度です。掛け金の設定の仕方はいくつか種類がありますが、やはり自由度が高く従業員にとって納得のいく方法は選択制でしょう。掛け金の選択を年に1度変更することができるようにして、従業員にさらに自由を与えている会社もあります。この制度を活用し、優秀な人材に長く自社に貢献してもらうようインセンティブを与えていきたいものです。