中小企業の経営者必見! 助成金・補助金を活用しよう

執筆: 大橋 智子 |

助成金とか補助金とかいうものがあるらしいよ。国からお金がもらえるんだって。
このような話を聞いたことがあるでしょうか。
「国がお金をくれる」って、どういうことでしょう?そんなうまい話が本当にあるのでしょうか?

 

はい、本当にあるのです。「一定の条件を満たす企業」に対して、国が金銭を支給してくれるというのが助成金・補助金なのです。こんないい制度があるなら、ぜひ活用したいものですね。

 

そもそも助成金・補助金って何?

まず、なぜ助成金・補助金という制度があるのか、なぜ国が企業にお金を支給するのかを考えてみましょう。
助成金・補助金とは、国が政策的に取り組んでいきたいこと(たとえば「企業で働く人の長時間労働を減らしたい」とか「高齢者にも働く場所を確保したい」など)を企業に実行してもらうために、国が企業に支給するお金です。

つまり、国の政策目標に合った取り組みを企業に促すために、その取り組みをサポートする目的で支給されるのです。
助成金・補助金の目的はおもに「企業の発展」と「働く環境の整備」の2つに集約されます。
このような国のサポートを企業が上手に活用することができれば、企業の経営者も、働く人もハッピーになれそうだと思いませんか?

補助金・助成金にはどんなものがあるの?

ここでは、補助金・助成金の種類についてみていきます。
非常に多くの種類がありますので、ここでは代表的なものだけを紹介しています。まずは「助成金」がどのようなものなのか、ざっくりとイメージを掴む程度に軽い気持ちで見てみてください。

助成金とは

助成金とは、厚生労働省主管の制度で、おもに「働く人」に焦点を当てています。たとえば企業が従業員のために研修を実施する、高齢者や障がいのある方をあらたに雇い入れる場合に支給されるものなどがあります。

助成金は、以下の条件を満たしていれば、ほぼ確実に支給を受けられると考えてよいでしょう。

  • あらかじめ定められた条件を満たしていること
  • 定められた期間内に、定められた支給申請書類をもれなく作成・提出していること

つまり、条件を満たし、書類さえそろっていれば、審査の課程で「落選する」ということは基本的にありません。

おもな助成金の種類

助成金の種類はとても多いので、ここでは代表的なものだけを紹介します。
以下に記載したもののほか、厚生労働省ホームページにはさまざまな助成金が紹介されています。

【新たに従業員を雇用するときに使える助成金】
就職が困難な人を新たに雇用する場合に使える助成金です。
代表的なものとして以下のようなものがあります。

  • 特定求職者雇用開発助成金(高年齢者雇用開発特別奨励金)
    65歳以上の高年齢者をハローワークや職業紹介事業者等の紹介であらたに雇用する場合に支給されるものです。(※平成28年4月1日からトライアル雇用奨励金と併用できるように制度が変更されました。)
  • 障害者トライアル雇用奨励金
    障害者のなかでも転職経験が2回以上あるなど特に就職が困難な方を、トライアルで雇用する場合に支給されるものです。

【働く環境を整えるときに使える助成金】
企業が、従業員にとって働きやすい環境を整備する場合に使える助成金です。企業が環境を整備するにあたり、その経費の一部を補ってくれるものです。代表的なものとして、以下のような助成金があります。

  • 両立支援等助成金
    仕事と家庭の両立を支援するための取り組み(会社に保育所をつくるなど)を行う場合に、その事業に必要な経費の一部を補助するものです。
  • 介護支援取組助成金
    仕事と介護の両立を支援するための企業の取り組みを支援するものです。
  • 女性活躍加速化助成金
    女性活躍推進法の制定にあわせてあらたに設けられた助成金です。女性が企業で活躍できるための目標を定め、取り組む企業に対して支給されます。
  • 高年齢者雇用安定助成金
    従業員が60歳を超えても継続して雇用し続ける場合に、企業に対して支給されます。

補助金とは

補助金とは、経済産業省主管の制度で、「経済の活性化を目的として、企業の成長を支援する」ためのものです。企業がしっかりと収益を上げていけるように、成長の見込のある企業を選んでサポートします。

補助金の場合には、応募の条件があらかじめ定められている点では助成金と同じですが、そのような「あらかじめ定められている条件」をただ満たしているだけでは受給はできません。
補助金の受給にあたっては、「審査」が待ち受けているのです。審査はコンペ方式になっており、成長の見込があると判断された企業・事業プランだけが、補助金の支給を受けることができます。なかなかハードルが高そうですね。

おもな補助金の種類

補助金もさまざまなものがありますので、代表的なもののみを紹介します。以下のほかにも、中小企業庁ホームページの「補助金等公募案内」にはさまざまな補助金の情報が掲載されています。

  • 創業・第二創業補助金
    「創業」に際し、あらたな需要を創り出す新商品やサービスを提供する場合に、経費の一部を補助してくれます。
    また、「第二創業」とは、前経営者から事業を承継した新しい経営者が、これまでの事業をやめて新しい事業を始めることを意味しています。その場合にも、既存事業の廃止や新事業の開始にあたり必要な経費の一部を補助してもらうことができます。たとえば、前社長の息子さんが会社を継いで社長になり、それを機に事業内容をガラッと変える、というような場合に利用できる補助金です。
  • 小規模事業者持続化補助金
    業種により異なりますが、従業員数が5人以下あるいは20人以下の企業や個人事業主が、ホームページ作成などのあらたなジャンルに乗り出す場合に、その費用の一部を負担してくれるというものです。
  • 革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金
    中小企業がこれまでにない革新的なサービスを開発したい、試作品を作りたい、生産プロセスを改善したい、というような場合に、その費用の一部を負担してくれる補助金です。

自治体独自の助成・補助もある

国が行っている助成金・補助金とは別に、地方自治体が独自に助成・補助を行っている場合があります。
場合によっては、国の助成金・補助金より条件が良いこともあるので、チェックしてみましょう。また、国の助成金・補助金と自治体独自の助成・補助は同時に受給できない場合がありますので、事前に国の支援と自治体の支援を比較して、条件の良いほうを選ぶと良いですね。

支給を受けるときの手続きは?

ここでは、「女性活躍加速化助成金」を例にとって説明します。助成金・補助金の種類によって手続きの流れは千差万別ですので、これはあくまでも一例と考えてくださいね。

手続きの流れをみてみよう!

女性活躍加速化助成金の支給申請をする場合の手続きの流れ

  1. 自社の女性活躍に関する現状把握・課題分析をする
    管理職の男女比や、男女ごとの平均勤続年数などを算出し、自社の現状を確認します。そのうえで何が課題なのかを明らかにしていきます。
  2. 「行動計画」の策定と周知公表を行う
    課題を解決するための具体的取り組みの計画を作成し、社内従業員への周知と社外への公表を行います。
  3. 都道府県労働局への届出と女性活躍に関する情報の公表を行う
    行動計画を策定した旨を、都道府県労働局へ届け出ます。また、管理職の男女比率など、定められた数値情報等を厚生労働省サイト「女性の活躍推進企業データベース」などで公表します。
  4. 行動計画を実行に移す
    作成した「行動計画」にもとづき、社内で女性が活躍するための取り組みを実施します。
  5. 助成金の申請書を提出する
    あらかじめ行動計画に定めた「取組目標」または「数値目標」を達成したら、申請書類一式を揃えて提出します。平成28年度の制度では、申請期限は「目標達成から2か月以内」と定められています。

社外専門家のサポートも活用しよう

助成金・補助金の支給申請って、実はとても手間がかかって、本当に大変です。たくさんの書類を揃えなければならないだけでなく、まずその前提として「どうすれば支給の条件を満たすことができるのか」ということをよくよく考えて、準備を進めなければなりません。

支給申請できる期間にも制限があるため、手際よく準備をしなければあっというまに申請期日を過ぎてしまいます。せっかく皆さんが大変な手間と時間をかけて支給申請の手続きを取ったのに、ほんのちょっとした書類上の不備で「不支給」の通知が届く、なんていう残念なこともあるのです。
そのような手間と時間を省くためにぜひとも検討してみてほしいのが、助成金・補助金の申請について社外の専門家によるサポートを受けるという方法です。企業にお勤めの皆さんにとっては初めての「助成金・補助金申請」であっても、その道のプロの力を借りれば安心感がありますね。

助成金の相談は必ず「社会保険労務士」か「社会保険労務士法人」へ

厚生労働省主管の「助成金」についてサポートをお願いする場合には、相手が国家資格を持つ「社会保険労務士」あるいは「社会保険労務士法人」であることを確認しましょう。社会保険労務士・社会保険労務士法人ではない人が報酬を得て助成金の申請書類作成などのサポートを行うことは法律(社会保険労務士法)で禁止されているからです。

補助金の相談は「中小企業診断士」がよい

経済産業省主管の「補助金」については、申請のサポートについて法律の制限はありません。しかし、補助金の申請に関する相談は「中小企業診断士」にするのが確実でしょう。
中小企業診断士とは、経済産業省管轄の国家資格を持つ専門家であり、中小企業の成長を支援する経営コンサルタントです。
さきほどお伝えしたとおり、補助金の審査はコンペ方式です。ということは、補助金を受け取るためには、国に「これは成長性のある企業・事業プランだ!」と認めてもらわなければなりません。
そうなると、国の政策を理解したうえで企業を支援している中小企業診断士が、補助金の申請サポートを得意としているというのもうなずけますね。

まとめ

  • 助成金・補助金は政策目的に沿った企業活動を促すため、国が企業に対してお金をくれるという制度です。ぜひ活用しましょう。
  • 「助成金」は厚生労働省主管で「働く人」に焦点を当てているのに対し、「補助金」は経済産業省主管で、「企業の成長」に焦点を当てているものが多いので、目的に応じて使い分けましょう。
  • 国が実施する助成金・補助金とは別に地方自治体が独自の助成・補助を行っている場合もあります。国の補助金・助成金と比較して最適なものを選びましょう。
  • 助成金・補助金をもらうためには複雑な手続きが必要です。また、補助の場合はコンペ方式であり、審査を通過することが必要です。申請にあたっては専門家(助成金であれば社会保険労務士・社会保険労務士法人、補助金であれば中小企業診断士)のサポートも上手に活用しましょう。