パワハラになる可能性がある?経営者なら知っておきたい事例一覧

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

 近年、職場におけるパワハラやセクハラに対する意識が高まっています。

都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は年々増加しています。平成24年度には相談内容の中でトップとなり、引き続き増加傾向にあります。また、職場でのひどい嫌がらせ、いじめ、暴行や職場内のトラブルにより、うつ病などの精神障害を発病し、労災認定されるケースも増えています。
また、都道府県労働局雇用均等室に寄せられる、男女雇用機会均等法に関する相談の約半数がセクハラに関するものとなっています。平成26年度の、都道府県労働局長による紛争解決の援助の申立受理件数のうち約5割、機会均等調停会議による調停の申請受理件数のうち約6割が、職場におけるセクハラに関する事案でした。
経営者の方は特に、パワハラが職場において発生していないか、注意する必要があります。

セクハラについてはこちらの記事を参照してください:その冗談がセクハラになる可能性がある?経営者なら知っておきたい事例一覧

パワハラとは?

 パワハラとはパワーハラスメントの略で、厚生労働省の定義によると、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」がパワハラにあたる基準とされています。

パワハラの事例

パワハラには、例えば以下のようなパターンがあります。

(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)

  • 殴る蹴るなどの暴力を振るったり、怪我をさせる

(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)

  • 嘲笑したり、「お前なんて役に立たない」「給料泥棒」などと侮辱したりする
  • 大声を出し、物にあたったりする
  • 他の社員の前でわざと怒鳴りつける
  • 何度も一方的にミスを厳しく非難する
  • 相談や意見を常にはねつける
  • 業務を常に監視する
  • 極端に低い評価をつけたり、業績を過小に評価したりする

(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

  • 無視したり、明らかに冷淡な態度をとったりする
  • わざと孤立させる
  • 業務上必要なコミュニケーションを避ける(電話やメールを無視する)
  • 業務を遂行する上で必要な情報や知識、許可(決裁等)サポートを与えない

(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

  • 意図的に過重労働に追い込み、納期に間に合わなければ厳しく非難する
  • プライベートの時間帯に、自宅や携帯電話に不必要な電話をかける
  • 明らかに多すぎる不適切な業務分担を行う
  • 病欠や有給休暇の許可を与えない
  • 残業や深夜労働、休日出勤を強要する

(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

  • 明らかに少なすぎる業務しか与えない

(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

  • 学歴や、結婚の有無について言われる
  • 業務後の飲み会や、休日の会社行事への参加の強要
  • 病気など個人的な情報を社内で言いふらす
  • 大勢の前で服や容姿について悪く言われる

まとめ 

 パワハラやセクハラの相談件数は年々増加しています。事業主の知らないところでパワハラやセクハラが起こっている可能性もあります。
 パワハラとは、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」です。具体的には、身体的な攻撃(暴行・傷害)、精神的な攻撃(脅迫・暴言等)、人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、個の侵害を行うことなどがあります。
 パワハラもセクハラも、たとえ行為者自身はそのようなつもりがなかったとしても、被害者がパワハラやセクハラと認識した場合には、パワハラやセクハラとなりえるものです。経営者としては、社内でのパワハラやセクハラは許されない行為として周知徹底を図り、そのような実態がないかどうかについて労働者の話を聞く機会を設けるなど、未然に防げるような対策をしていく必要があります。