会社が従業員の事務手続きを行ううえで、従業員の配偶者や扶養家族のマイナンバーが必要となることがあります。

具体的には、税金の手続き、健康保険の手続き、年金の手続きなどを行う際に、家族のマイナンバーが必要となります。

たとえば源泉徴収票には、従業員のマイナンバーを記載する欄と、配偶者や扶養家族のマイナンバーを記載する欄があります。

このように、従業員の家族のマイナンバーを集める場合には、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?

家族のマイナンバーを集める際に注意する点は?

マイナンバーは、個人情報を管理するためのとても重要な番号です。
そこで、マイナンバーの管理には厳格な規制が設けられています。ルールを守らなかった場合には、厳しい罰則も定められています。

罰則を受けないためにも、従業員家族のマイナンバーを集める際の注意点を確認しておきましょう。

1)家族のマイナンバーを使用する範囲をきちんと説明すること

マイナンバー法では、「マイナンバーを使用する目的を従業員に対してきちんと説明しなければいけない」と定めています。

このとき、「事務手続きのために家族のマイナンバーが必要です」という説明では、不十分です。

たとえば、「税の手続きで扶養家族のマイナンバーが必要となるが、源泉徴収票の扶養家族の欄に記載するだけで、それ以外には一切使用しないので、子供のマイナンバーを教えてほしい」というように、具体的な目的と使用範囲を説明しなければいけません。

多くの従業員を抱える会社の場合は、従業員一人ずつに説明することは困難ですので、口頭で説明する必要はありません。

口頭で説明をする代わりに、就業規則にマイナンバーの取り扱いに関する規定を設けたり、マイナンバーを使用する範囲について書類を配布するなどの措置を取ることができます。
2)家族のマイナンバーを使用する範囲を必要最小限とすること

従業員の家族のマイナンバーは、従業員家族の大事な個人情報です。部外者に提供する範囲は、慎重に制限しなければいけません。

マイナンバー法では、マイナンバーの利用範囲を厳しく制限しており、目的外に利用することを禁止しています。

たとえば、税金の手続きとして扶養家族のマイナンバーを保管している場合は、源泉徴収票の扶養家族の欄にマイナンバーを記載することができます。しかし、それ以外の書類について、従業員家族のマイナンバーを記載することはできません。たとえば従業員の年金の手続きを行う際に家族のマイナンバーが必要となった場合においても、勝手に転用することはできません。

事前に説明をしていない場合には、改めて従業員に事情を説明しなければいけません。「一度了承を得ているのだから大丈夫だろう」と考えて無断で転用してしまうと、罰則の対象となってしまいます。

マイナンバーは重要な個人情報ですので、使用する範囲は必要最小限にとどめましょう。

3)マイナンバーを管理するファイルを厳重に保管すること

マイナンバー法28条には、「役所に提出する書類を作成するために必要な範囲を超えて、マイナンバーを管理するファイルを作成してはいけない」と定められています。

つまり、役所に提出する書類にマイナンバーを記載する必要があって、その書類を作成するためにマイナンバーを管理する必要があれば、マイナンバーを保管するためのファイルを作成することができます。

しかし、このような場合以外においては、マイナンバーを記載したファイルを作成してはいけません。

たとえば、従業員の家族に対して福利厚生のサービスを提供するために、従業員家族の住所録や電話帳を作成して家族のマイナンバーを記載する、ということは許されません。

従業員家族のマイナンバーを管理するファイルは、「役所に提出する書類を作成する」という目的に限り、作成することができます。ファイルを作成した場合においても、情報漏えいやサイバー攻撃に備え、厳重に保管しましょう。

4)従業員家族の本人確認を行わなければいけない場合があります

従業員の家族のマイナンバーを教えてもらう場合には、従業員家族の本人確認を行わなければいけないのでしょうか?

この点は難しい問題なのですが、「会社が本人確認を行わなくてよい場合」と「会社が本人確認を行わなければいけない場合」があります。

前者の「会社が本人確認を行わなくてよい場合」とは、従業員の名義で書類を作成する場合です。

従業員が書類を作成するので、従業員自身が本人確認を行います。会社が本人確認を行う必要はありません。

会社で作成するほとんどの書類は、このケースにあたります。多くの場合は、会社が本人確認をする必要はありません。

後者の「会社が本人確認を行わなければいけない場合」とは、従業員家族の名義で書類を作成する場合です。

たとえば、国民年金の第3号被保険者の届出は、従業員家族の名義で作成しなければいけません。

従業員の家族が作成する書類なので、会社は「本当にこの書類は従業員の家族によって書かれたものなのか」「この書類に記載されているマイナンバーは正しい番号なのか」ということを確認しなければいけません。

この場合、原則として会社自身が本人確認を行わなければいけませんが、従業員を代理人として本人確認を行ってもらうことも可能です。

マイナンバーの管理に不備があった場合の罰則は?

マイナンバーは個人情報を管理するための極めて重要な番号ですので、管理に不備があった場合には厳しい罰則が定められています。

マイナンバー法には様々な罰則が定められていますが、中には懲役刑という重い罰則も含まれています。

たとえば、従業員のマイナンバーが記載されたファイルを、正当な理由もなく第三者に提供した場合には、4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科となります。

マイナンバー法には、個人情報保護法よりも厳しい罰則が定められています。従業員の家族のマイナンバーを管理する際には、細心の注意を払いましょう。

まとめ

マイナンバーは個人情報を管理するためのとても重要な番号です。従業員の家族のマイナンバーを尋ねる際には、目的をきちんと説明しましょう。マイナンバーを使用する範囲は必要最小限にとどめましょう。マイナンバーを記録するためのファイルを作成した場合には、厳重に保管しましょう。これらのルールに違反すると、厳しい罰則が定められています。マイナンバーは重要な個人情報ですので、従業員の配偶者や扶養家族のマイナンバーを取り扱う際には、細心の注意が必要です。

Profile

田中靖子(たなかやすこ)
田中靖子(たなかやすこ)
東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格、弁護士として会社設立や知的財産権等の会社法関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の記事の執筆や講演を行うなど、日常に潜む法律トラブルの情報を世界に発信している。