最近では「働き方改革」というキーワードで、労働環境・就業条件を現在の環境に適する形に変えていこうとする動きがとても活発ですよね。労働時間の上限や、時間にとらわれない労働形態ルールの創設など議論が続いています。今後も、技術革新などに伴う働き方の見直しが進んでいくと思いますが、みなさんは今の日本がどのような働き方を行っているのか正しく捉えられているでしょうか。

今回は厚生労働省が毎年行っている「就労条件総合調査」で、平成29年2月28日に公表された、平成28年度を対象としたレポートを整理して一つ一つ見ていきたいと思います。今を知ることで、課題や改善点が見えてきて、新しいヒントが得られるかもしれません。

 

就労条件総合調査
この調査は、主要産業における企業の労働時間制度、定年制等、賃金制度等について総合的に調査し、我が国の民間企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的として実施している。

(1)地域
日本国全域

(2)調査対象
日本標準産業分類(平成19年11月改定)に基づく16大産業[鉱業,採石業,砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業,郵便業、卸売業,小売業、金融業,保険業、不動産業,物品賃貸業、学術研究,専門・技術サービス業、宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業,娯楽業(その他の生活関連サービス業のうち、家事サービス業を除く。)、教育,学習支援業、医療,福祉、複合サービス事業及びサービス業(他に分類されないもの)(政治・経済・文化団体、宗教及び外国公務を除く。)]に属する常用労働者が30人以上の民営法人から、産業、企業規模別に一定の方法により抽出した法人

(3)平成28年調査の調査対象数、有効回答数及び有効回答率
調査対象数:6,310   有効回答数:4,520   有効回答率:71.6%

平成28年就労条件総合調査 結果の概況:調査の概要

 

 

企業規模別1日及び週所定労働時間

規模による1日・週単位の所定労働時間の違いは大きくありません。ここでいう所定労働時間はあらかじめ、雇用契約などで定めた労働時間のことです。調査対象の全企業の所定労働時間の平均は1日あたりで7時間45分、週あたりで39時間26分です。

 

産業別の1日及び週所定労働時間

産業別に分類した際に、最も週の所定労働時間が長いのは「宿泊業,飲食サービス業」の40時間06分です。「あれ?所定労働時間(契約で定めた労働時間)が労働基準法の週40時間規定を超えてるのは問題ないの?」と労働基準法に詳しい方なら思われるかもしれませんが、実は労働基準法の規定で「特例措置」というものがあります。これによると、飲食店や旅館などの事業を行っていて、10名未満の労働者の事業場であれば法定労働時間が44時間になるのです。

使用者は、法別表第1第8号、第10号(映画の製作の事業を除く。)、第13号及び第14号に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、法第32条の規定にかかわらず、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる。

労働基準法 施行規則 第25条の2

規模別の週休制の形態別適用割合

一番シュアが高いのは、やはり「完全週休2日制」ですね。どんな規模の会社も「完全週休2日制」のシェアが一番高くなっています。そして、規模が小さくなるごとに「完全週休2日制より休日日数が実質的に少ない制度」のシェアがどんどん高くなっています。

 

産業別週休制の形態別適用割合

産業別に週休制を見てみると、少しづつ違いがあることがわかります。最も「完全週休2日制より休日日数が実質的に少ない制度」のシェアが高い産業は「宿泊業,飲食サービス業」が45.3%です。他社より休みが少ない忙しい産業と言えるかと思います。逆に「金融業,保険業」では「完全週休2日制」と「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を合わせたシェアが97.60%となっており、安定して休日を得られる産業と言える側面もあります。

 

企業規模別年間休日総数

どの規模であっても「120~129日」が一番シェアが大きくなっています。規模が小さいほど、「120~129日」以下のシェアがどんどん上がっていることがわかります。規模が大きな企業ほど休日が多いことがデータとして示されています。

 

産業別年間休日総数割合

週休と並んで、年間休日でも「金融業,保険業」が抜群の休日数を示しています。120以上の休日数を確保している企業シェアが87.9%で全産業で最もシェアが高くなっています。一方で、「宿泊業,飲食サービス業」は120以上の休日数を確保している企業シェアはわずか5.6%です。

 

有給休暇 取得数

男性よりも女性の方が有給休暇付与数が少なく、有給休暇取得数が多くなっています。労働基準法では、週あたりの所定労働日数と出勤率で有給休暇の付与数を計算することになっています。つまり簡単にいうと、雇用契約で決めた週あたりの出勤日数が多ければ多いほど、そして欠勤など休む回数が少ないほど有給休暇の付与日数が増えるということです。よって女性の方が週あたり所定労働日数が少ないか、出勤率が低いという可能性がありますね。

規模で見ると規模が大きほど、有給の付与数・取得数ともに多くなっています。1,000人以上と30人〜99人の企業で比較すると、有給の取得数は10.4日と7.4日で約3日ほど違いがあります。

産業別に比較すると、「宿泊業,飲食サービス業」は取得数が5.2日ともっとも少ない日数となっています。一方で、もっとも取得数が多い産業は「電気・ガス・熱供給・水道業」で13.8日となっています。

 

有給休暇 取得率

有給休暇の付与数と取得数を整理したので、取得率もグラフ化しておきました。日本人は有給休暇を消化できないという話がよく言われると思うのですが、法律で与えられている権利の約50%は使いきれてないということがわかります。

 

年次有給休暇の時間単位取得制度の有無

数字を見ると、有給休暇の時間単位取得制度が開始された平成22年から普及はそこまで進んでない印象を受けますね。どの規模でも約80%の企業は時間単位取得の制度はないというデータが明らかになっています。労務管理的には有給休暇を時間単位取得制度の管理を行うことは かなり煩雑なので、敬遠されているという側面もあると思います。

 

変形労働時間制の適用割合

上のグラフでは、企業規模と産業ごとの変形労働時間制の適用シェアをまとめています。一般論では、1ヶ月以内の期間に繁忙期と閑散期が分かれているような事業では、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用されやすいく、1ヶ月以上の期間で繁忙期と閑散期が分かれているような場合には、年単位の変形労働時間制が採用されやすいです。

フレックスタイム制は自由な働き方を認めやすい産業に利用されることが多くなることが想定されます。全産業で最大のシェアは「情報通信業」で21.3%を誇っています。

 

みなし労働時間制の適用割合

上のグラフでは、企業規模と産業ごとのみなし労働時間制の適用シェアをまとめています。みなし労働時間制は変形労働時間制よりも適用している企業割合がかなり低いです。「30〜99人以下」の90.3%の企業が、みなし労働時間制を採用していません。

 

定年制の有無

定年制を設けている企業の割合は規模・産業ともに全て80%を超えています。日本ではほとんどの企業が定年制を設けていると言えますね。

 

定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合

規模別・産業別に見ても定年の年齢は60歳としている企業が多いですね。それ次のシェアでは、65歳としている企業が多いです。「30 ~ 99人」の企業では定年65歳としているシェアが17.3%、「1,000人以上」の企業では定年65歳としているシェアが6.7%です。規模の小さな企業ほど、65歳定年にしている割合が高いようです。

 

定年制を定めている企業における勤務延長制度・再雇用制度

規模・産業で見ると、再雇用制度のみ採用している企業が多いですね。また規模が大きいほど勤務延長制度を採用している企業は少なくなっています。

 

時間外労働の割増賃金率の定め

時間外労働に対する割増率の状況を規模別にグラフ化しています。ほとんどの企業は法定通り25%で設定していますが、「1,000人以上」の規模では、法定を超える26%以上の割増率を設定している企業が18.82%もあります。

 

1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金

時間外労働の割増率の規定の状況についてのグラフです。法律で、1ヶ月間の時間外労働が60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。ただし、しばらくの間抽象事業主と呼ばれる規模の小さな企業はこの規定は免除されています。

その免除規定がそのまま反映された状況といえます。「30~99人」では、79.6%の企業が割増に関する規定を定めていないとしています。

 

1か月60時間を超える時間外労働に係る代替休暇制度

労使協定を結んだ場合、1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の支払いの代わりに、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(代替休暇)を与えることができます。その代替休暇制度を設けている企業がどのくらいあるかというグラフですが、どの規模で見ても、約90%の企業は制度を設けておらず、あまり活用されていないようです。

 

規模別常用労働者1人1か月平均労働費用

予想されている方も多いと思われますが、規模が大きほど平均給与額が高くなっています。「1,000人以上」では月の現金給与平均額が375,888円で、「30 ~ 99人」では、284,469円となっていて、その差額は91,419円となっています。

 

産業別常用労働者1人1か月平均労働費用

産業別の平均労働費用を見ると「現金給与額」では「情報通信業」が最も高額で537,810円です。しかし、「現金給与額以外の労働費用(社会保険料や福利厚生など)」も含めた金額では、764,951円で「電気・ガス・熱供給・水道業」が最も高額となっています。

 

常用労働者1人1か月平均現金給与以外の労働費用

現金給与以外の労働費用の内訳を表したグラフです。最も割合が高いのは、「法定福利費」です。また規模の大きな企業では「退職給付等の費用」が2番目に高い金額となっています。

 

規模別常用労働者1人1か月平均法定福利費

法定福利費の内訳が上のグラフで表現されています。厚生年金保険料と健康保険料が大きなシェアを占めています。

 

規模別常用労働者1人1か月平均法定外福利費

法定外福利費の内訳が上のグラフで表現されています。住居に関する費用が最も高い金額となっています。

 

 

派遣労働者受入れの有無別企業割合

派遣労働者を受け入れているかどうかの調査結果です。規模が大きいほど受け入れている企業割合は高くなっています。

 

平成28年の働き方と今後

以上が、厚生労働省が調査して公表している結果の中からピックアップしたデータです。規模や業種という切り口で、情報を分類することで、いろいろな傾向が浮かび上がっていると思います。今後、皆様が何か判断をする際や、確認をされたいときのヒントとなれば幸いです。

現状を正しく把握することで、今後の「働き方改革」を意義のあるものに変えていくことができるとおもます。「バックオフィスの基礎知識」編集部では、今後も各種大規模データを解析して、情報配信を行ってまいります。

 

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『バックオフィスの基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。
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