圧倒的な事業成長スピードと組織力強化を両立させるdelyの人事施策の考え方

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

レシピ動画数世界No1を誇る「クラシル」を運営するdely株式会社。役員が行う経営会議の議事録を全社員に公開し、社員の役職もクオーターごとに変更されることがあたりまえ、など独特の文化が根付いている同社。圧倒的な成長と組織力の強化をどのように両立させているのでしょうか。今回は人事部の大倉 竜一さんにお話をお聞きしました。

カルチャーフィットを最優先に、3段階の採用面談を実施

dely株式会社 人事部 大倉 竜一さん

大倉さん、本日は取材のお時間をいただきありがとうございます。delyさんの人事に関することを全体的にお聞きしますので、よろしくお願いします!

大倉さん:はい、こちらこそ宜しくお願いします!

 

まず採用の考え方について教えていただきたいのですが。採用フローはどのように設計されていますか?

大倉さん:部門によってフローは変わりますが、原則、採用面談を2〜3回行っています。必要に応じて面談回数を増やすこともあります。

面談回数を増やすというのは、例えば「会社の理解度を深めて入社してもらいたい」というときに、会ってもらう社員を増やすこともありますし、カルチャーフィットを重視していますので、他のメンバーにも話をしてもらいお互い判断したいというときに、別途面談を設定するなどの場合です。

面談に関わるメンバーとしては、採用専任の担当が3名いますが社長の堀江も採用にはかなりコミットしますし、また各部門のメンバーは自分の部署の採用のみに関わらず、全社の採用に関わってもらっています。基本的には全社員が採用にコミットしてもらっているかたちですね

職種別の違いとして、ビジネスサイドは初回に採用担当がお話をさせていただきます。一方でエンジニアサイドについては、技術的なスキルを把握するためにも1次面談でいきなりCTOや開発部責任者がお話させていただくことも過去何度もありました。

2次面談以降では、部門のトップと人事がお話をさせていただきます。状況によっては2次面談でも役員、社長が参加するケースもあります。

堀江を始めとして経営陣は採用を最優先に考えているので、時間を作って面接に出るなど、なるべく選考に関わっています。

 

なるほど。では、会社として採用時に重視しているポイントはありますか?

大倉さんカルチャーフィットを最優先事項として考えています。カルチャーとの相性、本人のキャリアの志向性とのフィット、その次にスキルを見ます。エンジニアに関しては他の職種と比べてスキル面もしっかりと見るようにしています。一方、採用の意思決定に対して経歴はほとんど見ないかもしれません。

文化的な部分の相性が合わないな、というかたはスキルの高い方でも採用しないことが多いですね。カルチャーフィットの基準については、ビジョン・バリューとの適合性を見ることになります。また、一緒に働く仲間として

・誠実であるかどうか
・お互い腹を割って話せるかどうか
・一緒に飲みに行きたいと思えるか

などを見ています。高い目標を立てて一緒に頑張る仲間となる人を探しているので、実際に一緒に働くことになる状況をイメージして判断を行います。

ちなみに弊社では採用の経路の中でリファラル採用の比率が約35%で、最も大きなシェアの採用経路となっています。

 

情報をフルオープンにしアクセスしやすくすることがオンボーディングにつながる

「一緒に飲み行きたいと思えるか」というのはわかりやすくていいですね!次に雇用時の契約パターンについて教えてください。どんな考え方で、契約パターンを設定していますか?

大倉さん:会社の考え方はシンプルで「結果を出すのであれば好きにやればいい」というものです。そのため本業に影響がない限りは、副業なども自由にやってもらっています。日中の時間の使い方に関しても一番結果を出せる使い方が出来るよう各自の自己判断でやってもらっています。

ベースとなる契約形態や勤怠のルールはありますが社員のライフステージに応じた、柔軟性を持った働き方の環境づくりも進めています。介護が必要な方にリモートワークを推奨したり、子育てをされている方にはお子さんの送り迎えのために通常の出勤時間とずらして出勤できるずらし勤務制度を設けています。

今いるメンバーがパフォーマンスを出すために必要があれば、新しく制度を増やすという考え方を持っていますので、状況に応じて新しいパターンは増えていくと思います。

 

ありがとうございます。次に入社後の社員に対するオンボーディングはどのように設計されていますか?

大倉さん:入社時に文化や会社のルールの説明の時間を設けています。オンボーディングに関しては発展途上で社員から意見をもうらことも多く改善中です。

オンボーディングとは違うかもしれませんが、情報をすべてオープンにして、求める人には情報をキャッチアップできるようにしています。情報を公開している理由はそれ以外にもあり、いつでもすべての情報にアクセスできる環境することによって、現場レベルでも社員が適切な判断をできるようにし事業スピードを上げるためです。

オンボーディングに関しては社員の意見などを聞き、現在は新入社員が情報によりアクセスしやすくなるように、現在は散在している社内ルールを整理し、社内wikiのようなものを作成しています。

 

以前バディ制度を採用していて、なくなってしまったという話をお聞きしたのですが、その理由を教えてもらえますか?

大倉さん:はい、以前はバディ制度をやっていまして、新入社員に対して担当をつけていたのですが今は行っていません。

実施を取りやめている理由は3つあります。

1つは、シンプルに形骸化してしまったことです。
本来の趣旨は、業務をすぐに学び、戦力になれるようにいつでも相談できる先輩をそばに置いておくというものでした。しかし、実際にはたまにランチに行くくらいで、あまり効果が発揮できるまで浸透させることができませんでした。

2つ目の理由は、新しく入社してくれたメンバーが優秀で、バディ制度によるサポートが必要がないほど、勝手に周りに聞いて、キャッチアップしてくれていたためです。

3つ目の理由は、会社の変化が早すぎて、毎月新しいことがたくさん発生したためです。先に入社したとしても、後に入社したとしても、全員が昨日までやったことがないことに挑戦するような状況だったので、バディ制度の趣旨が成り立たない状況でした。

会社の状況によってはバディ制度は効果を発揮すると思うのですが、弊社ではあまり効果が出ませんでした。時期を見てまた復活するかもしれません。文化浸透の文脈ではまだまだなのでその点も改善したいと考えています。

 

OKRの達成度に応じた人事評価の考え方

delyで実際に使われているOKRのテンプレートシート

 

なるほど。そういう理由で、やめられたのですね。話を変えて、目標管理はどのように行われていますか?

大倉さん:目標管理はOKRを使っています。創業当初よりOKRを導入しているのですが、当初は誰もOKRの意味や目的をよく理解しないまま目標と結果を管理しているだけでした。

現在はそんな状況から少しづつ改善されてきています。

 

クオーターごとに経営合宿を実施し、各部門の責任者が代表の堀江とクオーターのOKRを設定して、そのOKRを細分化したものを部門のメンバーに落とし込んでいく方法で設定しています。私たちの会社は事業が複雑で、いわゆるアプリを作っていらっしゃる会社と違い動画制作の部門があったり、広告もアドネットワークやタイアップ広告など多岐に渡るため、OKRによって各部門がフォーカスするべき指標を決めています。

目標の数値と戦略の大枠については堀江と各部署の責任者が決めますが、それを具現化する方法に関しては現場レベルが考えています

OKRと評価との連携に関してですが、OKRの達成度は業績連動報酬と紐づけして、賞与のようにして扱っています。

ベース給与に関しては、グレード制を取り入れており、成長目標・カルチャーの体現度によってグレードの査定に基づき昇給していく設計にしています。短期OKRで結果を出した社員は短期的に報い、会社にとって大切なカルチャーの体現をし、スキルも成長した社員に対しては、長期的に報いています。

評価と報酬の決め方に関してもまだまだ発展途上ですので今後もブラッシュアップし続けます。

 

社員の成長・チームワーク向上のための取り組み

delyさん全社合宿での集合写真!

ありがとうございます。次に社員の能力開発のための支援について教えてください。

大倉さん:調理を担当する社員を中心に、資格が必要な職種については、資格取得の支援を行っています。フードプランナー・食生活アドバイザーなどの資格試験に合格した社員には、試験費用・登録費用を全て会社で負担しています。元々料理の知識は深い方々ですが、資格取得は本人のキャリアにプラスになるだけでなく、箔が付き、またクライアントの信頼獲得にも繋がっています。

会社全体としては今のフェーズだとまだまだ、大きな役割を担えるチャンスが多かったり、経営陣とも密にコミュニケーションがとれるので、やはりポテンシャルがある社員に対しては思い切って重要なポジションや仕事を任せるというのが一番の能力開発になっていると思います。

経営会議や部門長と代表のMTGに積極的に参加させることにより、事業理解が増えやフィードバックの機会も増えるためそこが一番の成長に繋がっているかと思います。

次に社員同士のコミュニケーションを促進するような施策は何か実施されていますか?

大倉さん:会社として大きくおこなっていることは全社のイベントです。四半期ごとに納会や忘年会、花見など大きなイベントを作っています。このような会社主催の公式イベントもありますが、自発的に社員が部活を作ったり、シャッフルランチをやってくれたりと、コミュニケーションを取ろうとする社員が多いので人事としては助かっています。

会社側で行ったこととしては、2018年に初めて全社合宿を1泊2日で行いました。金曜日に営業をストップして基本的に全社員に参加してもらい、土曜日は任意参加としてやりました。

合宿初日では、社員同士コミュニケーションをとることを目的として、部署をごちゃまぜにしたチームを作り様々なことを行いました。具体的には、マシュマロチャレンジや、動画制作の会社なので、Tiktokの動画を制限時間内で作成し発表するという企画も実施しました。また運動会のような取り組みもしましたが、身体能力の差が出ないように、大縄跳びや「ボッチャ」というスポーツもやりました。それぞれかなりの盛り上がりがありました。

また体を動かしてコミュニケーションをとった1日目の夜には宴会を実施し、朝からやってきた各ゲームの総合スコアで優勝チームを決めて、表彰を行いました。上位チームには宴会に華が咲くように豪華なお酒やおつまみをプレゼントしています。

打って変わって、2日目は事業の話をとことんやりました。まずは堀江が事業戦略を熱く話しました。その後各部署ごとで部署の今後の展望を部門マネージャーから話をしてもらいつつ、それぞれの社員がdelyの未来に対して何ができるかを真剣にディスカッションしました。

一日目は楽しみつつ社員同士のコミュニケーションの向上を図り、二日目はコミュニケーションが良くなった状態でdelyの未来について語り合うという設計でスケジュールをしっかりと作り細部までこだわりました。

合宿をやる前は、不安が多かったのですが実際にやってみると「行ってよかった」声をけっこうもらえたので良かったです。

 

ただシンプルに事業を最も早く展開できる人を役職にアサインする

合宿の企画は大変そうですが、社員のみなさんがしっかり話せる時間というのは大事ですね。次に働き方、特に労働時間について教えてください。

大倉さん:答えになっているかわかりませんが、今のフェーズでは会社としてチーム感、一体感を大切に考えています。そのためそういった考え方が崩れる可能性のある選択は極力しないようにしています。仕事が楽しくて、会社に行くのが楽しみでしょうがない、そんな姿を目指しています

また、delyの場合、市場の変化や会社の変化が激しいことと、事業が複雑で部門横断的な業務が多いことからコミュニケーションがかなり重要になります。そのため現在は対面のコミュニケーションが取りやすい環境にすることを意識しています。

今はその方が事業のスピードが上がると考えていますが、業務の切り分けがしやすくなったり、コミュニケーションの頻度を少なくしても安定するようになってきたら、最もパフォーマンスを出せる働き方やルールに変えていきたいと考えています。

 

ありがとうございます。福利厚生の制度について教えてください。

大倉さん:食に関わることが多いですが、1つは、レシピ動画の撮影で作った料理を社員は自由に食べられるようにしています。社員の多くが喜んでくれていて、ご飯だけ持ってきて撮影後の料理をおかず・副菜として食べている社員もいます。

また、朝社員に管理栄養士が監修したスムージーを提供しています。食と健康を意識したdelyならではの制度だと思います。あとは不定期で会社が費用を負担しながら料理人が社内向けに料理教室をしたり、手料理を持ち寄って食事会をしたりしています。

他にも経営陣から寄贈された書籍がたくさんあって、社内図書館があります。貸出表などを書いて、図書館としての機能が実際に運用されていますね。

あと社員はクラシルのプレミアム会員は無料で登録できます。

今後もフェーズ、ビジネスモデル、カルチャーに合う福利厚生があればどんどん拡充していきたいです。

 

撮影で調理した美味しい料理が食べられるのは嬉しいですね!次に組織構造についてdelyさんの現状について教えてください。

大倉さん:今の会社組織は完全にフラットな階層構造ではありませんが、管理職というのは役割や責任として機能しており、上下関係はあまり強くない方だと思います。

delyでは部署ごとにジェネラルマネージャー、マネージャー、リーダー、メンバーという4階層で構成されています。

ジェネラルマネージャーは一般的な会社でいうと本部長クラスのメンバーであり、実力のあるメンバーがそろっており、しっかりとした権限を持っています。ジェネラルマネージャーが異動することもありますが、マネージャー以下の社員に関してはかなり流動的に異動が発生しています。

組織改編やポジションの入れ替わりはかなり多い方だと思います。クォーターごとに少なくとも一回は大きな異動や組織変更があります。

組織変更や異動には一定のコストがかかりますが、組織に変化を起こすのには理由が二つあり、一つは変化が大きな組織の方が慣れや飽きが発生しにくくワクワク感や個人の成長が生まれやすいという観点です。

二つ目の理由は、単純に、その時に一番速く事業を進められるという人をアサインするという判断をしているからです。政治的な判断や過去の軋轢は無く、フラットに判断をしています。

ただ、少数精鋭で展開しているチームでは結果を出してもずっと役職が「メンバー」のままになってしまうという問題点もあります。

そこで、部署ごとの役職だけではなく、重要な経営指標のKPIの各項目の責任者も設定しています。このKPIの担当者は部署も役職も横断して、そのクオーターで最もKPI項目を改善していける人をアサインすることになっています。

組織変更も多く重要な事を担えるポジションが多くあるため改めて、チャンスが多い会社であると感じています。

 

人事が経営者の一番の理解者であり、経営と従業員の架け橋になる存在でありたい

KPI担当を部門横断で設定するのは面白いですね。次は表彰の制度について教えてください。

大倉さん:弊社はビジョンとして「Be The Sun」という言葉を掲げており、太陽のように人々と社会を明るく照らす会社をめざすという意味が込められています。クオーターごとに従業員からアンケートをとって、そのクオーターで最もBe The Sunだった人をMVPとして表彰しています。

また弊社のバリューである「Light」「Ambitious」「Big」についても最もふさわしい社員を投票を基に表彰しています。

投票では、誰がどの項目でふさわしいと思うかを氏名と理由を入力してもらっています。その理由も本人に伝えることで、周りがどのように評価してくれているのかを知ることができます。

投票をする際に、全社員が改めてミッション・バリューについて考え直すことができる機会としても有効だと考えています。

ちなみにMVPを取った社員には、より料理を好きになってもらおうと名前入りの包丁をプレゼントしたり、社内のデザイナーが作成したオリジナル限定パーカーをプレゼントしたりしています。

他にはいまのところ評価とは紐づけていませんが360度評価も定期的にやっています。意図としては上司の評価が本人のイメージとズレていないかをチェックしたり、他の社員を客観的に評価することに慣れてもらうためです。全社員にやってもらっています。

ありがとうございます。ここまでいろいろとお聞かせいただいたのですが、最後に大倉さんが、人事として仕事をしていく上で、大切にしている考え方について教えてください。

大倉さん:人事が事業や組織のフェーズ、組織文化やビジネスモデルなど、「経営」を会社のなかで一番理解して、制度を作っていく必要があると考えています。その会社の事業の成長に繋がらないのであれば、一般的に良いとされている人事制度を入れる意味もないと思っています。

スピード感があり変化も激しくリソースが限られている中、現在の会社の経営状況、事業計画から逆算して、人事としてフォーカスすべきことを選択しなければ、組織を強くしていくことはできません。

経営陣と人事が強い連携の中で、仕事をしていく必要性があります。そして、連携を強めるためには人事側が経営理解をし経営者に近付いていく必要があると考えています。人事は経営者の一番の理解者であり、経営と従業員の架け橋になることが大切な役割だと考えています。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。