「国籍はあえて意識せずに採用している」三菱自動車のダイバーシティとは?

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

海外人気も高い自動車メーカー「三菱自動車工業株式会社」。社内改革が進む同社の人事労務の考え方を調査するために、人事本部・人事労政部長兼タレントマネジメント部長の川原崎哲也氏と、人事労政部マネージャーの川口朋保氏にお話を伺いました。

まず最初に、御社の従業員構成で特徴的な点があれば教えてください。

当社で働く従業員は、全体で約17,000名います。期間従業員や派遣労働者の方を除くと、約13,000名です。自動車産業は伝統的に期間従業員の雇用が多いのですが、その中で当社は期間従業員の比率は少ない方だと思います。
性別について。女性の従業員はまだ少なく、2018年度新卒内定者でも17%ほどに留まっています。この点については採用強化を図っており、また、女性の管理職の目標数値を定め、2020年までに100名を目指しています。具体的には、指導専門職、つまり係長や主任クラスや、さらにその下の層に向けて、管理職としてのマインドセットを持ってもらうための研修を行っています。
ただ、女性従業員の中には、自分自身のライフプランの中で、仕事だけでなく、生活の中でも重要な役割を担い、両立を図りたいと感じている方も多くいます。
ですので、試行錯誤しながら進めています。

他の企業に比べ、外国籍の方が多いと想像します。実際どうですか?

まず前提として、当社では「外国籍」であるということを、人材データベースの中で管理していません。もちろんビザや社会保険関連といった特有な手続きもありますので、そういった部分ではデータを持っていますが、あくまで手続き上のものです。
ですが最近、ダイバーシティ関連の取材をしていただく中で、今回のようにご質問される事が多くなっており、採用担当者に人数を拾ってもらいました。
その結果、新卒の約7%が外国籍従業員だと判明しました。アジア出身者がほとんどですが、現地法人で将来働きたいというような理由よりも、日本の大学を卒業して、日本の会社で働きたいといった、日本の学生と同じマインドで就職している従業員の方が多いように見受けられます。
ということで、外国籍の採用枠というのは、もちろんダイバーシティの観点でも重要なのかもしれませんが、優秀な方であれば特に国籍を意識せずに採用しています

ダイバーシティというキーワードが出ました。何か取り組みをしていますか?

まだまだ社外に発信できるほどではありませんが、LGBTの従業員が働きやすい職場の整備をはじめました。

本当にまだまだ手探り中ですが、講師の先生をお呼びして、まずは人事部門、管理部門のスタッフがロールプレイ形式のワークショップを行いました。
講師の村木真紀先生によれば、LGBTは人口の5〜8%ほどおり、人口比で考えれば「左利きの人」や「血液型でAB型の人」と同じくらいの割合とのことです。
ワークショップではロールプレイとして、社内でカミングアウトした従業員と、その上司の対応を体験し、課題や改善点を話し合いました。
村木先生からは「ALLY(アライ)」という、LGBTを理解し支援する存在の重要性が説明され、社内で今後どういう研修を行い、環境を整備していくかを考える契機となっています。
まだまだ、バックオフィス部門だけがワークショップを終えた段階ですので、仕組みを形骸化させずに広げるにはどうしたら良いか検討の真っ最中です。

育児・介護する従業員を支える制度はありますか?

当社では、育児や介護はもちろん、それ以外にもいろいろな働き方を支える制度を整備しています。こちらもオーソドックスなものが多いですが、説明します。

まず、育児について。法定と比べてもっとも特徴的な部分は、育児勤務制度です。
当社ではお子さんが小学校を卒業する年度末まで、勤務時間を4、5、6、7時間から選択できます。また、時短勤務とフレックス制度を併用することも可能です。
介護については、短期と長期の両面でサポートがあります。短期の介護休業は、介護対象者1人つき5日以内、2人以上の場合は10日以内となっており、最初の5日間は有給休暇となっています。
長期については、介護対象者1名につき、通算3年間の時短勤務が可能で、育児と同じく勤務時間を4、5、6、7時間から選択することができます。
上記に加え、取得理由を問わない、1年間で10日まで取得可能なライフプラン休業、有給休暇を最大40日まで積立可能な積立休暇、コアタイム無しのフレックスタイム制度、在宅勤務制度などがあります。

小学校を卒業する年度末まで有効というのは、他社であまり見たことがありません。

はい。こちらは特に手厚いサポートだと認識しています。当社には在宅勤務制度もあり、それを育児用途で利用する従業員も増えています。

在宅勤務制度について、詳しく教えてください。

自宅、もしくは育児や介護・看護が必要な方がいる場所で、パソコンを使って業務が可能な制度です。制度導入当初は40時間/月を上限として認めていましたが、延長を求める意見が一定数あったため、80時間/月を上限に変更しました。
働くルールに関しての制度は、数人の社内モニターで実験的に導入し、フィードバックを参考にしながら、対象範囲を広げるステップをとることが多いです。
在宅勤務についてのフィードバックでは、モニター参加の従業員から「やっぱり会社で上司や同僚と顔を突き合わせ働きたい」といった声も出ましたが、事情があって出社できない、もしくは出社すると効率が悪いようなケースでは、徐々に利用が拡大してきています。
実績については、2016年度は50名程度の利用だったのですが、2017年度には200名以上が利用するようになりました。その理由は、7月24日のテレワーク・デイ(2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日は公共交通機関の混雑が予想されるため、昨年から国が推奨している)を当社としても推奨したことからです。こういった一斉にみんなでチャレンジする試みは、マインド的に重要だなと感じます。

在宅勤務をしたい従業員は、どのように申請するのでしょうか?

まず、資格取得のために申請書を提出します。申請が必要な主な理由は、システム面での対応です。申請書を受け取ると、社内IT部門が、申請者のPCを自宅でも安全に使えるよう設定します。
なお、入社1年未満の従業員は、なかなか在宅で様々な判断をしながら業務するのは難しいだろうということで、対象から外しています。
資格を得て、いざ自宅勤務しようとする場合は、原則、前日までに上長に承認をもらい、当日は、上長にメールや電話で業務開始・終了の連絡を行います。翌日以降「在宅勤務報告書」を上長に提出し承認されれば完了という流れです。
在宅勤務は、特に東京本社のように遠方から通勤している方が多い事業所で、業務効率化するのに有効です。今後も従業員の声をききながら、例えばサテライトオフィスの活用についても検討していきたいと考えています。

これまでお話をお聞きする中で、従業員の方の声を反映して制度を微調整されているという点が重要なのだなと感じました。具体的には、どのように従業員の方の声を集めているのでしょうか?

イントラネットでアンケートする場合もありますし、個別で意見を聞きに行く場合もあります。

例えば2015年にサマータイム制を導入した際には、イントラネットで大々的にアンケートを行いました。その結果、賛成と反対が真っ二つに割れました。
賛成の多くは、比較的年齢の高い男性社員で、もともと朝早く出社している方でした。反対の意見の中には、育児中の従業員も含まれており「保育園の受け入れ可能時刻が早まらないのに、会社だけが早まって困る。社会的に一斉に導入されない限り、ワーク・ライフ・バランスの負担になる」といった意見も出ました。
働き方改革が謳われ、推奨される働き方や法制度もこまめに変更されます。制度を導入する際には、従業員の声を聞きながら、より柔軟に運用できるよう改善していきたいと考えています。

本日はお忙しい中ありがとうございました。今日伺った中で特に「外国籍の従業員数を知りませんでした」というお言葉に、本物のダイバーシティを感じました。

こちらこそありがとうございました。今後とも皆様に愛される自動車づくりを進めていく所存です。引き続き、よろしくお願いします。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。