企業も人も成長する人事評価とは?ユニ・チャームに聞く。

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

ベビーケアやヘルスケア、そしてフェミニンケア商品で世界的に大きなシェアを持つ、株式会社ユニ・チャーム。今回は、Global 人事総務本部・Senior Managerの渡辺氏に、人事視点からの企業価値向上、及び社員個人の自己実現についてを伺いました。

 

人事諸制度の整備をする上で指針のようなものはありますか?

「企業価値の源泉は人にありを基本に、3つの豊かさ(志・経済・心身)の実現。人間尊重・達成感重視の経営を通じて、労働生産性の向上をはかるとともに社員が仕事を通じて自己実現できるようにしていくことを目指す。」というものがあります。
背景としてはかつて、企業価値はコミットメントする時間の長さに比例して向上するとしていた時代があったと思います。しかし、現在では時間をかければ価値が出るというわけではなく、コミットメントの質を追求することで価値を向上させるという考え方に変わってきています。
それに加え、従来働く人には制約がない事が前提でしたが、育児・介護など、時間的な拘束を抱えながら仕事をしていくことがあたりまえになってきています。
それぞれの人には「もっと働きたい」「こうしたい」「あんなことをしたい」といった夢がある。あったはずですが、制約があることによって、そういったものが消えてしまうのは、非常にもったいないなあと思っています。
そこで、一人ひとりが活躍できる環境をつくっていくことが当社の働き方改革だと考えています。
では「一人ひとりが活躍できる環境」とは何だろうと考えると、会社として提供できる外発的な要因に加え、内発的な部分を刺激してあげることではないかと思いました。そうでないと結局は「やらされ感」が出てしまいますから。
「自分は成長したいんだ」そういうところを、刺激できるような諸制度をつくることで、自己成長、自己実現に繋がり、それがユニ・チャームで働くことの意味合いになる。そういうスパイラルを作りたいという気持ちが、各人事制度の基盤となっています。

「時間的な制約がある」ですとか「成果は時間で図るべきではない」といった部分は何年くらい前から意識していらっしゃいますか?

東日本大震災後、節電の観点もあり、サマータイム制を導入しました。きっかけは震災でしたが、導入後、業務の効率化が進み、残業時間も減ったことから、通年で導入することを決定しました。ですので7〜8年くらい前からです。
「いまの働き方って時代に適したものになっているのか」ということを全社で意識的に考えるようになりました。震災に加えて、仕事の質そのものが変化し、業務の効率化を進めるだけでなく、創造的業務の割合が増えてきたというのもあります。
時間をかければできるものではなくて、それ相応のインプットがなければ、アウトプットできない時代になってきた。ルーチン業務を回すだけでは価値を創出できる時代ではなくなってきたのです。
そうなると自分自身、成長していかないと、新たな価値が出せない。そんな環境になってくるだろうなあと思っていたこともあり、各制度を少しづつ見直しています。

AIの発展に伴い「人間はそれ以上の何か」を提供する必要がありますよね。

その通りです。
これからの時代、「人でなければできない仕事って何なのか?」「AIに置き換えられない仕事とは何なのか?」「人間がやらなければならない仕事とは何なのか?」人間ならではの価値の出し方をいかに実現していくのかという点を考えないといけないと思います。
そのために、保有している技術や知見をどう組合せていくのかは検討余地が大きく、人でなければ出せない価値は多分にあると考えています。

御社商品の場合、機能性はもちろん、それ以上の感性に訴えかける部分の重要性も高いですよね。

機能だけではなく、いかに情緒に訴えかけられるか、というのは大変重要です。我々のブランドが、お客様のお手元にきちんと届くようにしていかなければなりません。
機能については同一化していく流れがあると思います。これだけ情報があふれていれば、アクセスの仕方を知っているか知っていないか、ここでひとつ線引がありますが、アクセスされた情報をどう活用していくのか。新たな価値を開発することは勿論のこと、あるものを活用して、組み合わせて、新しい価値をどう生み出していくかも重要だと考えています。

そういった時代の流れの中「人事評価」はどのように変わっていますか?

当社の場合、2018年から達成すべき目標だけではなく、そのプロセスも評価し、その課題に対して正しい行動ができていたのかといったプロセスを評価することで、評価の「納得度」を高めていきたいと考えています。
外的要因で失敗したとしても、そのプロセス自体は正しかったのであれば、評価・フォローしていくことで、成果だけではなく行動を評価する仕組みへと変化させていきます。
そういった評価の仕組みのひとつとして、当社には「10年キャリアビジョン・キャリアプラン」という制度があります。

「10年キャリアビジョン・キャリアプラン」について詳しく教えて下さい。

10年キャリアビジョン・キャリアプランとは、自分自身がこの10年何をやっていくのか、10年後どんな姿を目指したいのか。なりたい姿は何なのか。それを徹底的に考える仕組みです。

制度開始から、6年ほど経過しています。毎年1月末が提出締め切りで、社内イントラネット経由で提出します。当社の場合3月の賞与面談の際に、上司と4月から何を取り組みたいのか、10年プランの進捗はどうなっているのか。そういった部分を確認するようにしています。
現在自分ができていること、10年後の目標に向けてやるべきこと、出来ていないこと、やらなければならないこと。そういったことを定期的に確認することで、各社員の強みや弱みが見えてきます。
そういったことを四半期ごとに上司と面談し、アドバイスを受けることで、なりたい自分に到達できるように支援しています。
ユニ・チャームに聞きました。
この仕組みの狙いは、ただ書くことではなくて、考えて確認する機会の提供です。小さい頃は「野球選手になりたい」とかいろいろあったかもしれませんが、それがどんどん無くなり、「なんのために働いているのか」「自分がどうなりたいのか」などを考える機会は少なくなると思います。しかし、そこと向き合うことで、自分のやりたいことが明確になってくるのではないでしょうか。
人間はやりたい仕事をするときは、モチベートされるので、時間などにとらわれず集中した状態になれると思っています。そんな状況を用意してあげることが働きがいにつながって、成果にもなる。個人も成長する。そうなると、会社と個人がWin-Winの関係になれるのではないかと考えています。

ありがとうございます。最後に、最近気になるテーマなどありましたら教えて下さい。

気になっているというか、ホットなテーマとしては「副業」があります。当社でもこの4月から、入社4年目以上の正社員を対象に副業制度を導入しました。
就業時間外で副業を許可し、土日のように会社の仕事をしていない時間を使って、自分が身につけたいスキルに結びつくようなことをして欲しいと思っています。お小遣い稼ぎのようなものは想定していません。
ただまあ、こういう部分を厳格に運用したら、誰も手を挙げないのではないだろうかということも感じていて、そのさじ加減をどうするのか、今後も微調整が必要になるだろうなと感じています。
実際どこまで手を挙げてくれるのか、まだわからないところもあります。ただ、自分が成長したいという思いがあって副業をしたいと思っている人には、きちんとメッセージを届けたいです。「会社はいろいろな選択肢を用意している」と。
副業以外にも、これから役職に対してチャレンジする制度ですとか、経営陣に提言する機会ですとか、いろいろなものを準備しながら、自己実現できるような仕組みを整えていきたいと思っています。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。