3万人規模で働き方を変える!NTT東日本の社内広報とは

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

少子高齢化などの要因で、柔軟な働き方に対するニーズが社会的に高まっています。東日本の情報通信を支えるNTT東日本は、そういったニーズをどう考え、どんな施策を行っているのでしょうか。
 

東日本電信電話株式会社・総務人事部・ダイバーシティ推進室 担当課長の上村雄亮氏と、同・藤田祥仁氏にお話を伺いました。
 
 

まず、御社の従業員構成で特徴的な点があれば教えてください。

今回は「東日本電信電話株式会社」に加え、地域子会社「(株)NTT東日本-南関東」「(株)NTT東日本-関信越」「(株)NTT東日本-東北」「(株)NTT東日本-北海道」の5社を合計した範囲の、従業員約3万人に関するお話をさせていただければと思います。以下、特に断りが無い場合は、その5社を「NTT東日本」と呼びます。
 

では、そのNTT東日本。御存知の通り電電公社時代から民営化、再編成を経た現在も引き続き地域電気通信事業を営んでおります。従業員約3万人のほとんどは地域子会社にて業務に従事しており、年齢構成の山を描いてみると、50歳〜65歳がボリュームゾーンとなります。現在はベテラン社員が様々な面で当社の通常業務を支えており、お客様にご対応する部門、設備工事や保守といった業務を担当する部門には、スキルの高いベテラン従業員が配置されており、若手を牽引しています。
 
 

それでは、本題に入ります。2014年から「働き方改革・value working」という3本柱の改革が始まったと伺いました。その内容をご紹介いただけますか?

はい。ではまず「Value Working」の前段となる話をさせてください。
 

NTT東日本では、従業員の生産性向上を目指し、2008年からスケジュールや勤怠管理の統一システム化を行い、電子決裁も導入し、紙減らしの基盤構築を進めてまいりました。その後、リモートアクセスシステムを整備し、社外からも業務ができる仕組みをつくりました。
 

リモートアクセスシステムが使われ始めた一番大きな契機は、2013年にシンクライアント端末を導入したことです。全社で導入し、社内においても、会議室の備え付けPCを使って、ペーパーレス、ロケーションフリーで情報を活用することができます。
 

そして営業部門から「お客様に提案する際に紙ではなくて画面でご提案したいよね」という話がでてきました。また「社外からお客様とのアポイントメントをとる際に、その場でスケジュール確認して連絡したい。」という声も高まってきました。
 

こうした背景を踏まえ、2014年にNTT東日本として「Value Working」を進めていくこととしました。Value Workingの3本柱は「モバイルワークの推進」「時間外労働の朝型シフト」「ポジティブ・オフの推進」です。
 

モバイルワークの推進については、自宅等で、育児や介護をしながらでも柔軟に働くことのできる環境を、といった観点に加え、勤務時間の効率的な活用、通常業務の効率化といった観点も重視しています。
 

新しい仕組みを拡広げていくには、実際に活用する従業員の観点にたった活動が重要です。
 

例えば、モバイルワークを推進するにあたり、「みんなで使いましょう」とただ伝えるだけでなく、これまでのやり方と比べ何がプラスになるか、きちんと説明します。そして使い勝手が良いことを理解してもらうために、まず使ってもらう。この「まず使ってもらう」が実は一番大事なんです。実際に体験していただき、「あ、これなら私もできる!」、それが周囲にも伝播していきますので。
 

あとは、タイミングです。たとえば電子決裁について「紙での決裁は今日から一切禁止です」というより、一定期間の並行時期を設け、移行を促します。そして、「年度契約更新の際に、次は切り替えましょう」と提案する。もしくは「小さな決裁からやってみましょう」という導入促進をする。そういった活動を続けることで、年齢や経験の様々な従業員の全員が、移行時期までに使いこなせるようになります。
 
 

新しい仕組みを導入する際、一部の社員を対象にトライアルする事もあるのでしょうか?

新たな制度やシステムなどは、利便性も向上しますし、間接稼働の削減に直結しますので、一斉に導入することが多いです。また、何よりも従業員が「一斉に取り組む、活用する」という気持ちになることも重要です。
 

もちろん、希望者を募ってトライアルすることもあります。例えば、営業部門でのタブレット活用に関しては、希望者を募る形で進めました。
 

全員一斉にタブレットを配布するのは、営業社員の人数が多い拠点ですと、SIM端末を配布するだけでも多くのコストがかかります。したがって、小さなグループ単位で、そのグループの推進役や、トップセールスマンと呼ばれる人たちにまず配布し、彼らに効用を確かめてもらい、良い点/悪い点を把握し、調整した後にに広めていきました。
 

このあたりは、施策ごとに最良の方法を選択するようにしています。
 
 

タブレットでも、社内ネットワークにアクセスできるのでしょうか?

はい、シンクライアントサーバにアクセスできます。
 

これにより、お客様へのご提案中に、アポイントスケジュールをその場で確認したり、次の取引先へ伺う前にメールチェックしたり、空き時間を有効に活用することができます。
 

また、営業担当者は日報を毎日投入する必要があるのですが、例えば北海道など営業カバー範囲の広い地域ですと、車で取引先から会社まで長距離の場合もあり、そういった時に車の中で空いた時間にタブレットで日報を入力し、営業拠点に戻ってからすぐに帰宅することもできるというのは、大変なメリットだと考えています。
 
 

現在では、営業の方はタブレットをどのように活用されているのでしょうか?

先ほどご紹介しました用途以外にも、様々なシーンでタブレットを活用しています。私も以前営業担当でしたが、お客様とお会いする際、パンフレットやご提案書を紙でお持ちするようにはしていましたが、紙をご希望されるお客様以外は、タブレットでパンフレットの情報や実際のご提案書をお見せし、商品のご提案を行っていました。大量の紙資料を持ち歩くための、大きなカバンが必要なくなり、また、お客様の大切な情報を含むご提案書を直接持ち歩くことがなく、営業社員の負担も減っています。
 

お客様の大切な情報をお預かりする立場として、特に気をつけなければならない「情報セキュリティ」に関して、タブレットを含めたシンクライアント端末で画面を呼び出す方式であれば、情報が外部に持ち出されるリスクも低くなる、ということです。
 
 

モバイルワークの促進は、大変うまくいっているのだなあと感じます。

はい。但し気をつけないと、システムを利用することが目的化するという罠に陥りがちです。そうではなく、Value Working の一環なんだ、ひとつのツールなんだということで「いつでもどこでも空いた時間で、集中力が高まる環境で仕事をして、効果的に休めるチャンスも増やしていく」という所を目指しています。「ワーク」の効率化が時間的余裕につながり、「ライフ」の充実や自己研鑽へ、「ライフ」という基盤の充実が「ライフ」の充実につながると考えています。
 

スケジュール管理のページでは、今日は「結婚記念日」ですとか「誕生日」ですとか、そういったライフイベントを投入している従業員もいて、休暇取得の際にも工夫した活用がされていると感じることがあります。ライフイベントに関わるアピールが、世代を超えて共感を得て、新しいコミュニケーションが生まれることもあるようです。
 
 

では次に「朝型シフト」について。実際に前倒しで働く方もいるのですか?

はい、おります。多くは7時〜8時台に出社しています。昨年の7月、8月、9月の夏のワークスタイル改革で、なるべく朝型にシフトしましょうという活動をしたのですが、その中で「もともと朝型にしているから全然問題ない」と言っていた者も少なくありませんでした。
 

朝型シフトの使い方は、ひとそれぞれのようです。作業の集中時間にしたい者、夕方に早く帰宅し趣味を充実させたい者、いろいろです。朝ですと問合せの電話の数も少ないということもあり、作業を集中するには良い環境だと思います。
 
 

朝型シフトには他にメリットはありますか?

何よりも、満員電車を回避できるので、通勤ストレスの解消につながると思います。
 

私も京王線で通勤していますが、朝6時台と朝8時台の車両に乗るのとでは、まるで混雑具合が異なります。
 

朝型シフトの取組みは、東京都が推進する時差Bizの取組みにも合致していますので、今後も推奨していきたいと考えています。
 

また、2016年には、フレックスタイム制や、月ごとの変形労働時間制も導入しました。そのため9時から17時半の定時勤務の者が「今日は7時から来て15時半に帰ろう」と考え、コアタイムを踏まえた上で、フレックスタイム制として朝型勤務をスポットで選択するケースも徐々に増えてきました。
 
 

想像すると、15時半に帰ってしまうと困るな。というケースもあると思うのですが。そのあたりはいかがですか?

フレックスタイム制度を利用するには、周囲に迷惑がかからないように、課長やマネージャーといった所属長と調整して運用することが前提です。
 

勤務管理については、月ごと、週ごと、日ごとに勤務実績を所属長と確認する機会がありますので、そこで細かい部分は調整します。なによりも、一人ひとりの自主性を尊重することでやる気も高まり、勤務時間内により集中して業務に取り組んでいただけると考えています。
 

様々な取組みを推進するにあたり、従業員への周知などで工夫している点はありますか?

周知は、あらゆる方法で行います。ポスターを食堂など目につく場所に掲出するほか、オンラインでも通知します。
 

ここでもシンクライアントが活躍するのですが。一人ひとりの画面に直接配信できるポップアップのシステムがあります。必要な時に必要な情報を、タイムリーに周知できるので、大変有用性が高い仕組みです。
 
 

ちょっと話はずれるのですが、このキャラクターかわいいですね。笑

ありがとうございます。キャラクターはどんどん増加中です。笑
 

後ろのポスターを見ていただくと「カエル伯爵」が「早く帰ろうね」と訴えています。ポスターを大別すると、良い/悪いと2種類の表現があります。悪いバージョンの場合、従業員のキャラクターが残業で目にクマをつくりながら「上司が残っているから帰れない。」と言っていて、そこにバツマークが付き「そんなことを気にする上司はいないから大丈夫だよ!」とコメントが付いています。
 

加えて、WANTEDバージョンもあります。笑
 

 
 

では次にポジティブ・オフについて聞かせてください。

はい。ポジティブ・オフは、ワークライフバランスを進めるための考え方です。
 

例えば、育児や介護のために利用できるライフプラン休暇という仕組みがあります。
 

ライフプラン休暇は、時間単位で取得・利用することも可能で、たとえば今日は子供のお迎えのため早上がりしますという時に、1時間単位で利用可能です。
 
 

時間単位でというのは、管理が大変そうですね。

先にお話したスケジュール管理システムの中で、勤務管理も時間単位で実施できるようになっています。ですので、残時間管理もわかりやすいですし、上長と部下との間で情報共有や、承認フローもスムーズです。
 
 

ほかに何か最近のトピックがありましたら教えてください。

NTT東日本は、拠点となる支店等が多くあります。その1階部分を飲食店などの店舗様にお貸しすることをしているのですが、2階以上についてはまだ利活用の余地があるのではないかと考えています。
 

たとえば、リモートオフィスやコワーキングスペースとして活用できればと考えています。社員が気軽に立ち寄れて、そこでタッチダウンで仕事ができて帰ることができる、というのは業務効率向上にも繋がりますし、ビジネス継続の観点からも大事です。
 

あとは、オリィ研究所の開発した分身ロボットを使ったテレワークの実験も一部行っています。
 

これは、自宅で仕事をする際に、タブレットに話しかけると、オフィスにある分身ロボットが反応して、ロボットがオフィスで誰かに話しかけるという仕組みです。オフィスにある分身ロボットはオフィスの音声も拾っていますので、離れた場所でも臨場感を持って働くことができます。
 

また、この仕組だと、テレビ電話とは違って自宅の映像は社内に映りません。よって、プライベートの映像をオフィスに流す必要がないので、テレビ電話などには抵抗感がある方でも、気軽に利用できると思います。
 
 

モバイルワークや、ロケーションフリーといった考え方が、御社の中で重要な理由を教えてください。

はい。
 

NTT東日本はお客様に安心・安全に通信サービスを利用していただくため、日々の業務を実施しています。こうした中、2011年の東日本大震災の規模では全社的な体制構築が必要ですが、そうでなくても小規模な災害や、電車事故のようなものが発生した場合、どのように日々の業務を継続するかという観点が大変重要です。ですので、自宅や最寄りのビルで仕事ができる環境を作る。
 

そして何より、これからは人口構成的にも、介護などで出社が困難な従業員も増えてくると思います。そんな時に自宅やリモートオフィスで仕事ができるのは、大重要なポイントだと思っています。
 
 

ビジネス継続の観点というのは、重要なインフラを預かる御社らしいですね。今回は、貴重なお話をありがとうございました。

ありがとうございました。
 
 

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。