[2017年度版]ユニークで魅力的な人事制度の企業10社

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

人事制度は企業の理念や社風を映す鏡のようなもの。ユニークな人事制度は新聞やネットなどでも話題に取り上げられ、企業のイメージアップや人材獲得にも一役買っています。今回は、企業の個性がキラリと光る、魅力的な人事制度を備えた企業を10社ピックアップしてみました。

個性爆発! 人事制度に企業の魂を感じる3社

ネットでしばしば話題になる(株)カヤック、ユニークな人事制度で昔から定評のある小林製薬(株)、そして住宅メーカーならでは感満載の大和ハウス工業(株)。それぞれの人事制度をご紹介しましょう。

カヤックの「ぜんいん人事部制度」

ソーシャルゲームやネットを使ったマッチングビジネスなど、さまざまなコンテンツ事業を創出しているこの会社。正社員・契約社員合わせて230名(2015年12月現在)の従業員全員、名刺に「人事部」の肩書がついていて、「採用」「評価」「給与査定」に関わっています。採用活動に関しては、全社員に「ファストパス」が会社から配られ、「この人と一緒に働きたいな」という人に出会ったら、ファストパスを渡すとのこと。このパスを受け取った人がカヤックに入社を希望した場合、なんと書類選考が免除されます。
さらに、面接官経験のある社員は「ラストパス」というものも持っていて、これを渡された人が採用選考に応募すると、いきなり最終面接にすすめてしまうというのです。社員もコレ!という人でないと声をかけないでしょうし、パスをもらった人も「この会社でぜひ!」とならなければ応募しないわけですから、ミス・マッチングを回避する究極の手段と言えるでしょう。

参考URL https://www.kayac.com/company/institution

小林製薬(株)の「ホメホメメール」

「熱さまシート」「ブルーレットおくだけ」など、絶妙なネーミングセンスが光る医薬品・医薬部外品メーカーの小林製薬。新入社員もベテランも対等に意見が言える企業風土づくりを心がけていて、上司を役職で呼ぶのを禁止する「“さん”付け制度」を1995年に導入。そして、主体性を持って行動した人を社長が賞賛する「ホメホメメール」という制度も翌年に始めています。誰のどんな行動に対してホメホメメールを送るか、社長みずからが決めているというからスゴイ。メール内容は社内報にも掲載され、社長からの心のこもったメールは社員のモチベーションアップにもつながっているそうです。このわかりやすいネーミングも、さすが小林製薬ですね。

参考URL https://www.sankeibiz.jp/business/news/130331/bsc1303311801004-n1.htm

大和ハウス工業(株)の「次世代育成一時金制度」

住宅・建築メーカーの大手大和ハウス工業はファミリーに手厚い制度が整っています。やはり、住宅といえばファミリー。ファミリーといえば子育てといった発想からでしょうか。次世代育成一時金制度は、社員またはその配偶者に子どもが1人生まれると、100万円が支給されるというもの。ちなみに、双子が生まれると200万円支給されます。また、「持家割引制度」もあり、社員が大和ハウス工業の販売する住宅や土地を購入すると、1割引いてもらえるとのこと。たとえば3,000万円の物件を購入すると、300万円割引になります。すごい…。

参考URL http://www.daiwahouse.co.jp/student/regular/backup/

社員の意欲を尊重し、伸ばす制度

「自分はこんなことがしたい!」という希望を会社で叶えることは、なかなか難しいのが現実。しかし、社員の意欲を汲もうという動きを見せている企業もあります。ソニー(株)とロート製薬(株)の取り組みを見てみましょう。

ソニー(株)の「社内FA 制度」

言わずと知れたAV機器から音楽や映画といったコンテンツまで幅広い事業を展開するソニー。事業範囲上が広いだけに、人材をどう配置するかは重要な課題です。1966年から社内募集制度を採用し、希望部署に手を挙げて異動するという流れがありました。社員のこうしたチャレンジ精神が会社の発展を支えてきたとも言えます。さらに、2015年からは優秀な社員にはFA権を与え、自分で行きたい部署を選択できる制度を採用しました。また、今かかわっているプロジェクト以外に、別のプロジェクトを兼務できる「キャリアプラス制度」も導入しています。社員の能力を伸ばすと同時に、社内の組織も活性化できて一石二鳥ですね。
参考URL(リンク先情報は掲載終了しました)

ロート製薬(株)の「社外チャレンジワーク制度」

2016年春、「ロート製薬が副業を認めた」と大きく報道された社外チャレンジワーク制度。
入社3年目以上の社員を対象に、本業に支障をきたさないようにすることを条件として届け出制で副業を認めることにしたのです。60名強の社員が応募し、この制度を利用して休日に薬剤師として働いている人もいるそうです。この制度のアイデアは社員が出したとのことで、「社会に貢献し、自立した人材を育てる」という会社の理念にもあてはまることから採用されました。

参考URL http://www.rohto.co.jp/news/release/2016/0614_01/

会社と真剣に向き合える制度

日本食研(株)と(株)オンデーズからは、会社と真剣に向き合えそうな(当然と言えば当然なのですが…)制度を紹介しましょう。

日本食研(株)の「売上予想クイズ」

焼き肉のタレなどの調味料メーカーとしておなじみの日本食研。愛媛県にあるウイーンの宮殿をモデルに作った本社工場も有名ですね。工場は観光コースになっているほどですが、人事制度でもユニークなものがあります。それは、毎月の会社の売上を全社員で予想する「売上予想クイズ」。毎月、実際の売上額にいちばん近い額を出した社員上位3名に賞金が出ます。年間売上額でも同様に予想クイズを実施しているとのこと。ちなみに、実際の売上額よりも低い額を予想した場合は対象外になるそうです。売上を予想したからには、モチベーションはイヤでも上がるというもの?

参考URL http://www.nihonshokken.co.jp/recruit2017/recruit/system04/

(株)オンデーズの「エリアマネージャー総選挙」

メガネの製造販売チェーンを展開するオンデーズ。全国に100以上ある店舗をエリアごとに統括する5名のエリアマネージャーを、全社員による投票で決めています。得点配分は一般スタッフ50%、管理職50%と決められていて、部下からも上司からも信頼を得なければ当選できません。しかも任期は1年。せっかくエリアマネージャーになっても成果を出さなければ、次の年に立候補しても当選する保証はありません。立候補する側も選ぶ側も、真剣勝負ですね。

参考URL https://www.odsaiyou.com/system/

率直に「助かる!」制度

最後に(株)レベルファイブ、(株)ノバレーゼ、SanSan(株)の制度を紹介します。企業が社員に補助金を出してくれるうれしい制度ですよ。

(株)レベルファイブの「ゲーム購入補助金支給制度」

『妖怪ウォッチ』が社会現象を巻き起こしたゲーム会社、レベルファイブ。月1本を上限に、個人的に購入したゲームソフトの代金50%を会社が補助してくれるという制度があります。ゲーム会社ですから、やっぱり「社員のみなさんにはいろんなゲームを買って研究し、仕事に活かしてほしい」ということでしょうか。ゲーム好きにはなんともうらやましい制度ですね。

参考URL(リンク先情報は掲載終了しました)

(株)ノバレーゼの「奨学金返済支援制度」

ブライダル事業を手掛けるノバレーゼは、ユニークな制度がたくさんあることでも知られています。奨学金返済支援制度もそのひとつ。勤続年数5年、および10年の社員で、奨学金を返済中の人に対し、それぞれ未返済分に対して上限100万円まで支給するというもの。奨学金の支給を受けて進学する人が増えている昨今、卒業後もその返済に追われて苦しい思いをしている人もたくさんいます。そうした社員の方にとっては、がんばろうと思わせてくれる制度です。

参考URL  http://www.novarese.co.jp/recruit/new-graduate/rule/

SanSan(株)の「Know me!」制度

クラウド名刺管理サービスを提供するSanSanの制度「Know me!(のーみー)」とは、他部署で今まで飲みに行ったことがない人3人以内で飲みに行くと、1人3000円が支給されるという制度。社内のコミュニケーションを円滑にするために、始められました。この制度を理由に「飲みにいかない?」と気軽に誘えるのがいいと好評のようです。ちなみに、月に2回(新入社員は3回)まで申請できるとのことです。

参考URL http://jp.corp-sansan.com/blog/dorayaki/2013/131217.html

まとめ

以上、ユニークな人事制度を採用している10社をご紹介しました。それぞれが社員のモチベーションを上げたり、能力を発揮できるようにしたりと、さまざまな工夫を凝らしている様子が伝わってきますね。人事制度を改革したことで、離職率が下がったという話もよく聞きます。
また、人材登用や採用といったところに踏み込んで社員の自発性を求めるタイプの人事制度は、会社組織のありかたや社風を内外にアピールすることにもつながっています。
自社がどんな社風を作り上げたいか、また社員に何を求めたいか。そうした問いかけを人事制度に落とし込んでみるのも、いいかもしれませんね。