みなさんは「複業」という言葉を聞いた事はありますか?「副業」ではなく「複業」。パラレルキャリアやパラレルワークなどといわれるものです。今回は「副業」と「複業」の違いや、「複業」のメリット・デメリットについてご紹介します。「複業」について理解を深めることで、従業員の働き方について考えてみましょう。

「複業」のはじまり

「副業」と「複業」

「複業」について述べる前に、「副業」との違いについて触れておく必要がありますね。
「副業」とは、本業の仕事に対し、収入・費やす労力ともにサブ的な割合の仕事を指しています。本業の収入の補填や、お小遣い稼ぎといった感覚で行っている人が多いようです。スキマ時間で株やFXの取引をしたり、ブログを書いてアフィリエイト収入を得たりと、ネットを活用して月に数万程度の「副収入」を得ている人も見受けられます。
対する「複業」とは、複数の業務に対して「Aが主、Bは副」という区別なく、一つひとつの仕事から得られる報酬は、いずれもその人の収入を形成する大切な要素となっています。

リスク回避としての「複業」

「複業」という考え方が広まったのは、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災がきっかけといわれています。企業の不祥事や倒産が相次ぎ、終身雇用制度も崩壊するなか、労働者が自分の人生を企業に委ねることに、危機感を覚えるようになったのです。複業というワークスタイルは「いくつかの収入源を確保し、ひとつの収入の道が断たれたとしても、もうひとつでなんとかする」という、資産運用にも似た考え方です。

「複業」で長い老後に備える

また、長寿化による「長い老後」をいかに生き抜くかという問題も、「複業」を考えるうえで見逃せません。かつては「20代前半まで学校で学び、60歳まで社会で働き、その後10数年のリタイア期間を貯蓄や年金などで暮らす」といったモデルが成立していました。

しかし、平均寿命が男性80.79歳、女性87.05歳(2016年厚生労働省発表)となった今、老後の時間は20年を超えています。医療の発達などで平均寿命が今後も伸びると、ますます老後の時間は長くなります。年金の支給開始年齢の引き上げや支給額の減額なども考えると、「現役時代」の蓄えだけで老後を過ごすことは困難と言わざるを得ません。60歳で定年を迎えたあとも、別の仕事をするための準備として「複業」という働き方を考える人もいます。

「仕事」の意義を考える

上記2つは経済的リスクに備える手段として「複業」という働き方を選ぶパターンですが、もう1つは「働く意義」にかかわる話です。
「生きていくために就いている仕事」という柱のほかに、「好きなことを仕事にする」あるいは「自分のスキルを伸ばすための仕事をする」という柱を作る複業パターンです。3つの理由は明確に分かれているのではなく、それぞれが重なり合って存在しています。

複業のメリット・デメリット

近年、「副業」を認める大手企業が増加しています。2016年には、ロート製薬が社員の副業を許可制で認めたことが大きな話題になりました。IT業界では、知名度の高い企業ほど「副業・複業」を奨励しています。

東京商工会議所の調査によると、東京23区の中小企業783社のうち、3割強が兼業・副業を認めているという結果が出ました。積極的に推進する企業が全体の15.2%、やむを得ず認めている企業が16.4%となっています。副業を認めている企業、認めていない企業それぞれの意見は、そのまま従業員が副業(複業)をすることのメリット・デメリットにつながります。それぞれの意見を拾ってみましょう。

副業(複業)推進の意見=企業にとってのメリット

  • 人材のスキルアップにつながり、会社の利益になる。
  • 企業として給与が頭打ちになるなか、副業(複業)を許可することで従業員の収入が増える。結果として離職率の低下につながる。

副業不可の意見=企業にとってのデメリット

  • 副業(複業)を許可することで、残業が増える。
  • 自社の機密・情報漏えいなどが心配。

企業が「副業」を認めることで、従業員はこっそり「副業」を行うのではなく、収入源としてもう一本の柱を生み出すことができるようになり、「複業」という働き方を実現することができます。

当然、企業側と従業員側の間に明確な取り決めが必要になります。すべての副業について許可制をとっているところ、企業の業務と関係のない副業については申請しなくてもよいところなど、対応はさまざま。どこまで従業員の副業を把握するか、企業側も慎重に対応しなければなりません。

また、副業を認めるにあたり、フレックスや週4日出勤を導入するなど、勤務体制そのものを抜本的に見直す必要も出てきます。

しかし、従業員が自分に合わせた働き方をデザインできるようになることは、昨今話題になっている「ワークライフバランス」の実現には欠かせません。上記で「副業(複業)を認めることが離職率の低下につながる」という意見があるように、企業も従業員も、互いがすべてを抱え込む考え方から解放されるべきなのかもしれません。

まとめ

今回は「副業」と「複業」の違いや、「複業」という言葉にこめられた「働き方への意識」についてご紹介しました。「複業」には自分が所属する企業とは別の場所で就業したり、起業したりといったものだけでなく、クラウドワークのように、パソコンやスマホを使って自宅にいながら仕事を引き受けるといったものあります。後者については「普通の会社員」にもハードルが比較的低く、「複業」の入り口として今後も発展すると考えられます。

企業が従業員の「副業・複業」を認めることは、従業員の働き方を考えるきっかけにもなります。「企業と従業員のよい関係」の落としどころについては、試行錯誤をしながら作り上げていくことになるでしょう。
2016年秋、政府は「働き方改革実現会議」を立ち上げ、多様な働き方を後押しする施策について議論を始めました。賃金・税制・社会保障などクリアすべき課題はたくさんあります。人口減少時代に突入し、限られた人材を有効に活かす方策として「複業」は時代の流れともいえるでしょう。

こちらの記事もご覧ください。

会社として副業を認めるべきか禁止するべきか

参考:

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life15/

http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/161213/ecn16121317500022-n1.html

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『バックオフィスの基礎知識』編集部
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