会社を経営していくと本店の所在地を移転することもあると思います。会社の拡大に伴い新しいオフィスを借りることになったり、より交通の便の良い場所に移動したり、理由は様々ですが、会社を移転するためにはたくさんしなければならない手続きがあります。ではどこにどの書類を提出したらいいか、手続き先ごとにまとめましたので、参考にしてみてください。

どこに手続きをすればいいか?

手続きしなければいけないのは主に以下の場所です。

  • 法務局
  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 年金事務所
  • 労働基準監督署
  • 職業安定所
  • 消防署
  • 郵便局
  • その他

それではそれぞれどのように手続きをしたらいいか見ていきましょう。

法務局での手続き

最初にしなければならないのは法務局への本店移転登記です。法務局では「本店移転登記申請書」を提出します。これにより、商業登記簿を変更します。この手続きを最初にするのは、これ以降の変更は添付書類として商業登記簿の写しを添えなければならないことが多いからです。

なお、登記簿の変更には登録免許税がかかりますが、その後の他の当局への届出は無料です。

移転後の法務局の管轄が移転前の法務局と異なるかどうかで、手続き方法が二通りに分かれます。

移転前後で法務局が同じ場合(例:新宿区→新宿区)

この場合は移転前の管轄法務局に申請します。また定款の記載内容について確認が必要です。定款には本店所在地が記載されていますので、その部分も変更しなければなりません。

 (※例外ですが、定款記載の所在地が市区町村までしかなく、その範囲内での移転であれば、定款を変更する必要はありません。)

移転後の管轄が移転前と変わらなければ移転登記の申請は当該法務局のみにすればよく、登録免許税は30,000円です。この登録免許税は、法務局の窓口で収入印紙を購入して貼り付けることで、納めることができます。

提出書類

  • 本店移転登記申請書 1通(申請書様式
  • 登録免許税30,000円

提出先

移転前の管轄法務局

移転前後で法務局が異なる場合(例:新宿区→千代田区)

この場合、移転前の管轄法務局に申請するのは同じですが、移転前の法務局移転後の法務局二通の申請書を作成しなければなりません。市区町村も変わっているので当然ながら定款の本店所在地も新しいものに変更しなければなりません。

二通の申請書になるため、登録免許税が60,000円となります。さらに、移転後の法務局に印鑑を登録しなければなりませんので、「印鑑届書」も一通作成します。申請書は二通ともすべての添付書類と一緒に、移転前の所在地を管轄している法務局に提出します。そこから移転後の法務局に回送してくれることになっています。

提出書類

提出先

移転前の管轄法務局

共通して必要なもの

上記のように大きく二通りに手続きが分かれますが、共通して必要なものもあります。

まず、「株主総会議事録」と「取締役会議事録」を作成する必要があります。株主総会では定款の変更の決議を採択します。取締役会では、具体的な移転場所と移転時期を決定します。なお、取締役会を設置していない会社の場合は、これに代わって「取締役の過半数の一致があったことを証する書面」を添付しなければなりません。さらに、代理人に依頼する場合は委任状も作成します。

共通して必要な書類

  • 株主総会議事録(定款の変更がある場合に必須)
  • 取締役会議事録
  • 取締役の過半数の一致があったことを証する書面(取締役会を設置していない場合)
  • 委任状(代理人に依頼する場合)

提出先

移転前の管轄法務局

こうして、移転後の所在地が記載された商業登記簿が作成されました。今後、この登記簿を元にして関係各所への変更手続きをしていくことになりますので、登記簿謄本である「現在事項全部証明書」を一部もらっておきましょう。

税務署での手続き

税務署へは「異動届出書」、「消費税異動届出書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。移転前と移転後の両方の税務署に届出書の提出が必要です。

提出書類

提出先

移転前移転後の両方の税務署(電子申請可能)

都道府県税事務所での手続き

都道府県税事務所への提出ですが、同じ都道府県内であれば「法人の名称等の報告書」を提出します。他の都道府県であれば「法人の設立等報告書」を提出します。現在事項全部証明書や定款を確認されることがあります。都道府県税事務所については、事務所によって多少異なるようですので、事前にお問い合わせください。

提出書類

  • 法人の名称等の報告書(同じ都道府県内に移転した場合)
  • 法人の設立等報告書(他の都道府県に移転した場合)

提出先

各都道府県税事務所により異なる

年金事務所での手続き

年金事務所には「健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を提出します。これには商業登記簿の現在事項全部証明書のコピーを添付します。記入する用紙には(管轄内)と(管轄外)の二通りあり、移転前後の管轄によって記入する用紙を使い分けます。いずれにしても提出先は移転前の管轄年金事務所で、移転後への提出物はありません。

もし協会けんぽに加入していて、都道府県を越えて所在地が移転したなら、健康保険の被保険者証が変更になります。これは、協会けんぽの加入が都道府県ごとのものであるためです。移転後の協会けんぽ支部から新しいものが送られてきますので、従業員から回収した健康保険被保険者証を送り返す必要があります。

提出書類

  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届(管轄内)(管轄外
  • 商業登記簿の現在事項全部証明書のコピー

提出先

移転前の管轄年金事務所(電子申請可能)

※管轄内の移転であれば、事務センターの郵送での提出も可能

労働基準監督署での手続き

労働基準監督署には「労働保険名称・所在地等変更届」を提出します。これは、移転後の管轄労働基準監督署に提出します。届出の用紙は特殊で、窓口で受け取るようになっています。ホームページからダウンロードして印刷することはできません。添付書類はありません。

提出書類

提出先

移転後の管轄労働基準監督署(電子申請可能)

職業安定所での手続き

職業安定所(ハローワーク)には「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。この手続きをする前に、労働基準監督署の手続きを完了させておいてください。その控えが必要になるためです。提出先は移転後の所在地を管轄する職業安定所です。添付書類は商業登記簿の現在事項全部証明書と、労働基準監督署に提出した労働保険名称・所在地等変更届の控えです。

提出書類

  • 雇用保険事業主事業所各種変更届(申請様式
  • 商業登記簿の現在事項全部証明書
  • 労働基準監督署に提出した労働保険名称・所在地等変更届の控え

提出先

移転後の所在地を管轄する職業安定所(電子申請可能)

郵便局での手続き

郵便物の転居・転送サービスを利用するため、郵便局で「転居届」を提出します。その際に、社員証や健康保険被保険者証など、提出者と会社の関係が分かるものを持参します。なお、転居届はインターネットでも提出できます。

提出書類

提出先

郵便局(電子申請可能)

消防署での手続き

新しいオフィスで間仕切り工事をする場合は防災管理者の手続きを行わなければなりません。

提出書類

  • 防火・防災管理者選任(解任)届出書(申請様式

提出先

移転後の管轄消防署予防課

その他の手続き

  • 市区町村に異動届
  • 会社ホームページの住所変更
  • 金融機関の口座の所在地変更
  • 名刺の住所変更
  • 取引先への住所変更のお知らせ
  • 従業員の通勤手当の見直し
  • 電話回線の工事 など

市区町村には、「法人の設立・設置・変更等に伴う届出(異動届)」を提出します。登記簿の現在事項全部証明書を添付します。自治体によって多少異なるようですので、事前にお問い合わせください。
金融機関の口座の所在地も変更します。各金融機関のHPで確認してください。
名刺に記載されている所在地も変更します。デザインを一新するのもいいかもしれませんね。
ホームページがあれば、会社概要などのページに本店所在地が記載されていると思いますので、速やかに変更しましょう。
届出ではありませんが、取引先へのお知らせや、従業員の通勤手当の見直しも必要になるでしょう。

まとめ

本店所在地を移転させる場合、まず法務局の手続きから始めます。この手続きは移転の日から2週間以内にすることになっています。その他の手続きにも一応期限が定められてはいますが、かなり期限の短いものもあります。ですが、これらは厳密なものではありませんので、商業登記簿を変更したら他の手続きも速やかに完了させるよう心がけていただければ結構です。必ずしておかなければならないものですので、短期間に集中して終わらせるようにしましょう。

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『バックオフィスの基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。
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