人事労務トラブルの内容を、東京都と埼玉県で比較する

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

労働相談 東京VS埼玉

東京都と埼玉県、企業とそこで働く人たちはどのような労働トラブルを抱えているのでしょうか?

有効求人倍率が2.07倍の東京都と、1.38倍の埼玉県を比較することで、見えてくるものがあります。

今回の記事では両者の労働局に寄せられた労働相談を比較して見ていきましょう。

※有効求人倍率はともに2017年4月分の値です。

 

事業所、従業員数(2014年)

比較する前にまず、それぞれの規模を理解しておきましょう。事業所数でいうと東京は埼玉の約2.5倍。従業者数では約3.5倍です。

事業所数 従業者数
東京都 662,360 9,657,306
埼玉県 266,261 2,800,405

出典

相談件数の推移

相談件数は、約10倍の開きがあります。東京は埼玉の約2.5倍の事業所数なので、いかに東京の労働相談件数が多いか理解できるかと思います。

年度 東京都 埼玉県
2016年 53,019 5,814
2015年 51,960 5,466
2014年 53,104 4,604
2013年 52,684 4,773
2012年 52,155 4,755

相談者の内訳(2016年度)

労働相談というと、労働者(従業員)が困って相談するイメージが強いかもしれませんが、東京の場合全体の16.6%が使用者(企業側)からの相談です。いわゆる「モンスター社員」と呼ばれる問題社員に悩まされている経営者が東京には一定数いると想定されます。埼玉の場合、使用者からの相談は3.6%と極端に低く、労働者からの相談が圧倒的に多くなっています。

年度 東京都 埼玉県
労働者 77.7% 86.9%
使用者 16.6% 3.6%
その他 5.7% 9.5%

 

東京都で多い相談(2016年度)

退職に関する相談が、7年連続で最多です。続く「職場の嫌がらせ」も2連連続で2位となっています。

順位 相談内容 相談件数 構成比(%) 対前年度比
1位 退職 10,004 10.4 0.87
2位 職場の嫌がらせ 9,623 10 1.03
3位 労働契約 8,106 8.4 1.01
4位 解雇 6,478 6.7 0.83
5位 賃金不払い 6,365 6.6 0.96
6位 労働条件変更 4,306 4.5 1.06
7位 健保・年金 4,075 4.2 1.08
8位 休職・復帰 3,253 3.4 0.89
9位 雇用保険 3,196 3.3 0.86
10位 休暇 3,107 3.2 1.10

 

具体的な相談事例(リーフレットより)

<退 職>同僚からの嫌がらせを契機とする退職勧奨

相談者は、飲食店のアルバイト社員。 同僚のアルバイト社員から継続して暴言を受けていたが、ある日、暴言に抗議したところ、体を引っ張られるなどの暴行を受けた。その後、両者のいさかいを知ったマネジャーから、「身を守るためにも辞めたほうがいい」などと退職勧奨を受けた。相談者は、会社の対応に不信感を抱き、来所に至った。

 

<職場の嫌がらせ>上司及び同僚からの嫌がらせ

相談者は、正社員の社長秘書。社長から事実確認もされず一方的に叱責されたり、同僚から無視されたりすることが続いたため、入社から約4か月の短期間で退職せざるを得なくなった。相談者は、会社に嫌がらせの問題を認識してもらいたいとの意向で、来所に至った。

 

<労働契約>妊娠を契機とする労働条件変更

相談者は、正社員の技術者として採用された。採用後約2か月経過した時点で妊娠が判明し、社長にその事実を告げたところ、業務能力不足を理由に給料を約60%に減額する契約書の締結を強要され、また、当分の間の休業を命じられた。相談者は、会社の一方的な態度に納得できず、来所に至った。

 

<解 雇>病気休職中の普通解雇

相談者は、正社員のシステムエンジニア。上司からの心無い発言が原因でメンタル疾患を発症し、休職に入った。主治医から、時短勤務での復職が可能との診断を得たため、会社に報告したところ、普通解雇を通告された。相談者は、会社が面談等を一切行うことなく解雇を通告してきたことに困惑し、来所に至った。

 

<賃金不払>外国人労働者の賃金不払

相談者は、接客飲食店のアルバイト社員。給料は日払いであるが、その一部が差し引かれ、毎月1回まとめて支払われる仕組みであった。退職後に月払い部分の給料を店舗に受け取りに行ったところ、急退職を理由に支払いを拒否されたため、来所に至った。

 

埼玉県で多い相談(2016年度)

埼玉では職場の人間関係が構成比14.7%、賃金12.7%、退職、退職金12.3%です。職場の人間関係には、パワハラ等が含まれています。

順位 相談内容 相談件数 構成比(%) 対前年度比
1位 職場の人間関係 857 14.7 1.2
2位 賃金 740 12.7 0.86
3位 退職、退職金 713 12.3 1.14
4位 労働時間、休日・休暇 587 10.1 1.03
5位 解雇、退職勧奨 514 8.8 1
6位 労働保険 418 7.2 0.91
7位 安全衛生 72 1.2 1.5
8位 就業規則 39 0.7 1.18

 

具体的な相談事例(リーフレットより)

職場の人間関係「パワーハラスメント、いじめ」

介護施設の介護福祉士からの相談。入所者の介護をチームで行っているが、上司や同僚からの暴言や無視が職場内に蔓延している。そのため自分も含めた職員が精神的苦痛に悩まされている。この職場を良くしていきたい。

 

残業代の未払い

製造業勤務の男性からの相談。時間外労働はないという約束であったが、実際には時間外労働や休日出勤がさせられ、その上、残業代が支払われないでいる。勤務時間を把握しようとしてもタイムカードの記録を会社は見せてくれない。

 

長時間労働

小売業の中間管理職の男性からの相談。月150時間の時間外労働が続いて心身の体調を崩し、また、部下も月80時間くらいの残業となっていることから上司に改善を求めたが、改善してくれない。

 

休日・休暇

パートタイムで働いている女性からの相談。週5日働いているが、年次有給休暇は正社員にはあるがパートにはないと言われ、休んだ日は無給となってしまう。前の会社ではパートにも有給休暇があったが、会社によって違うのか疑問がある。

 

若者の使い捨て「若者労働ほっとライン」

事務職の女性からの相談。1日8時間の時間外労働が10日間続くなど月100時間を超える残業がある。また、時間外に行われる研修への参加が強制されるがその時間が労働時間に参入されない。そのためこの一年で同僚ももう何人も辞めている。

まとめ

東京都の労働相談件数は、53,019件(前年度比2.0%増)と11年連続で5万件を超えています。相談内容は、7年連続で「退職」が最多です。パワハラ等の「職場の嫌がらせ」に関する相談が増加しており、3年連続の2位で過去最高を記録しています。今回の記事では触れていませんが他に目立った点として、外国人労働相談の増加が挙げられます。外国人労働相談は前年度比44.4%増の2,597件です。
紛争の解決手段である「あっせん」の件数は446件(前年度比 14.2%減)で、そのうち308件(69.1%)は当事者間で合意が成立し解決しました。

一方、埼玉県の労働相談件数も5,814件と過去最高を記録。パワハラなど「職場の人間関係」に関する相談が最多となっています。(※前年度の1位は「賃金」)

 

出典:東京都

出典:埼玉県

 

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『人事労務の基礎知識』編集部
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株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。