中小企業が海外進出するための基礎知識

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

人口減少等による国内のマーケットの縮小など様々な要因で大企業だけではなく、中小企業においても海外へ進出する割合が増加傾向にあります。海外進出におけるメリット・デメリット、海外進出の際の課題、現状の推移の動向を、統計を交えながら解説していきます。

 

海外進出へのビジョン

海外進出を実際に行う前に、まずは自社の状況や課題について明確にし、次のような点を再確認しましょう。

  1. 目的の明確化
    自社の経営方針や経営課題(コストの削減や取引先からの海外進出要請、海外販路の開拓等)を明確にし、その経営戦略の実行の先に海外進出があることを確認しましょう。
  2. 人材や売り上げ規模の適正
    海外進出しようとする事業プランにおいて、自社の資金や人材等が適正か確認しましょう。
  3. 競争力はあるか
    自社の製品や技術の強みや特徴を客観的に理解し、海外での志向や基準にマッチしているか等、事前の調査を行いましょう。
  4. プロセスの認識
    プロジェクトチームの立上げ、進出計画作成、商号や特許等の知的財産権保全手続き、契約書の作成、土地取得、設備や材料の手配、宣伝・広告等、進出までの大まかなスケジュールを作成し検討しましょう。
  5. 全社的な協力体制
    海外進出には様々なリスクが伴います。社長や役員だけで展開し、社員の理解が追いついていない場合、問題が生じたときに迅速な対応がとれない事態となります。なぜ海外進出を行うのか、全社的に経営戦略を認識し、一致協力できる体制をつくりましょう。

海外進出のメリット・デメリット

日本企業の海外進出先は経済成長の著しいタイ、インドネシア、ベトナム等のアジアの国々へも展開しています。次は海外進出におけるメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

  • コストの削減
    日本より物価の安い国の場合、施設や設備等の初期費用や人件費や設備費のランニングコスト等の削減
  • 受注の拡大
    日本の確かな技術やアピールポイントのある製品は需要が高く、海外マーケットへの進出により受注が拡大する。
  • 新たな製品・技術開発
    国内向けのビジネスでは考えられないような、外国人の習慣や発想等、異なる文化からの新しい志向を取り入れることにより、新たな製品や技術開発が進み、さらに魅力のある企業となる。
  • 節税効果
    外資の企業に対して優遇税制をとっている国や、低税率の国においては節税効果も期待できる。

デメリット

中小企業の海外進出における現地法人の課題やデメリット(リスク)について、統計的には次のような項目があげられています。

  • 人件費の上昇
    進出した国における経済成長に伴い、現地の人件費が上昇し、人材確保が難しくなる。
  • 為替変動のリスク
    契約時等との為替差損による損失で利益がなくなることがある。
  • 日本と異なる法規制
    海外での製造物責任への対策や、宗教や慣習が異なり、法制度や規則が不明瞭で思わぬトラブルが発生することがある。
  • 現地人材の確保・育成・総務管理
    日本的慣行をそのまま現地で用いると、現地採用の社員によってストライキを起こされることもあり、人材の確保や育成、総務管理等の負担が増える。

日本企業が海外進出した成功例、失敗例

中小企業庁のサイト「ミラサポ」には海外展開を応援するサイトとして海外進出の成功例等が紹介されています。海外進出の際のノウハウやヒントを得ることができるのではないでしょうか。一部をご紹介します。

成功例

北海道 食品加工機械製造業(進出先国:ロシア、中国、タイ、ベトナム)
国内水産加工市場は成熟期を向かえているが、海外では加工の自動化のニーズがあることから、水産加工機器の海外展開を行う。現場のニーズによる商品開発や現地調査を経て継続した注文と高い評価を受ける。
岐阜県 プラスチック製品(進出先国:欧州、米国、アジア各国)
国内市場が縮小傾向にあったことから、海外輸出へと展開。欧米を中心とした展示会を行う。最先端の加工技術と独自のデザインがバイヤーに注目され問い合わせが増加。現地の商慣習の把握、情報収集も成功への必要な鍵。

失敗例

知的財産についての対応不足
進出先国以外の国から模倣品が大量に生産され、売上が激減。商標登録や、訴訟等の対応に追われた。
経営者側における人材不足
自社の高度な技術を相手側に正確に伝えることができる人材が社内にいなかったため、商談が上手く運ばなかった。また同様に、人材不足により現地従業員との意思疎通が上手く行えず、ストライキに突入してしまった。

補助金を利用しよう

中小企業庁の経営サポート「海外展開支援」サイトでは、海外進出を目指す中小企業向けの支援策や制度が紹介されています。
また、経済産業省の中小企業海外展開支援施策では
下請小規模事業者等新聞や需要開拓支援事業
ふるさと名物応援事業補助金(JAPANブランド育成支援事業)
伝統的工芸品産業支援補助金
等、海外展開への補助金制度も様々です。自社の特徴にあった補助金の活用も検討しましょう。

まとめ

海外進出を目指すにあたり、経費節減、販路拡大等メリットばかりが先行しがちですが、成功のためにはまず、自社の課題と経営戦略を再認識することが重要です。入念な情報収集と計画、迅速な行動と情熱で、様々な課題やリスクを克服し、海外進出を成功させましょう。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。