1時間に45件以上、労働相談ダイアルの内容とは。

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果を公表

働き改革や電通事件をきっかけに、ブラック企業を厚労省Webサイト内に貼り出すなど、過重労働解消のための動きが加速しています。
 

2017年10月28(土)に、8時間限定で設けられた過重労働解消相談ダイヤルには合計367件(約45件/時間)の相談が寄せられました。労働者側の意識の高さを感じずにはいられない結果です。
 

なお、過重労働解消相談ダイヤルでは、相談者に労働基準法や関係法令の規定、解釈についの説明をしたほか、労働基準監督署や関係機関の紹介も実施したとのことです。
 

今回の記事では、この過重労働解消相談ダイヤルの相談概要、及び具体的な相談内容を紹介します。
 

過重労働解消相談ダイヤルの結果概要

下記相談件数は内容ごとの計上です。また、括弧内は相談件数367件に対する割合です。
 

主な相談内容

  • 長時間労働・過重労働:136件(37.0%)
  • 賃金不払残業:110件(29.9%)
  • パワハラ:28件(7.6%)

 

相談者の属性

  • 労働者:200件(54.4%)
  • 労働者の家族:106件(28.8%)
  • その他:36件(9.8%)

 

主な事業場の業種

  • 保健衛生業:47 件(12.8%)
  • 商業:45 件(12.2%)
  • 製造業:41 件(11.1%)

具体的な、過重労働解消相談ダイヤルの相談例

寄せられた相談のうち、1か月の残業が 80 時間を超えている、残業代が一切支払われないなどの事例です。
 

長時間労働・過重労働

映像・音声・文字情報制作業の技術職(接客娯楽業)【20代、労働者】

早いときでも午前0時、遅いときは午前3時まで残業を行っており、月の残業時間は300時間を超えていた。試用期間を理由に残業代は支払われず、自分も含め同期入社のほとんどが退職した。

 

ソフトウェア業の営業(教育・研究業)【年齢不明、労働者の家族】

深夜0時頃まで残業を行っており、月の残業は200時間程度にまで達する。このような長時間労働が何年も続いているにもかかわらず、いまだ改善されないままである。

 

医薬品販売会社の販売(商業)【40代、労働者】

普段から1日2時間程度の残業を行っているが、18時からの2時間分については賃金が支払われていない。残業は遅いときには4時間から5時間にまで及ぶこともあり、実際の残業時間は月100時間を超えている。また、土曜日のうちに仕事が終わらないため、日曜日も働いており、休日も確保できていない。

 

建築工事業の営業(建設業)【40代、労働者の家族】

管理監督者として働いているが、帰宅時間は午後10時から午前2時に及び、月250時間を超える残業を行っている。また、休日出勤をしても自ら申請は行わずに勤務実績を残さないようにしている。

 

 

賃金不払残業

一般貨物自動車運送業の管理者(運輸交通業)【50代、労働者】

所定労働時間は朝6時からの勤務であるが、朝3時や4時など前倒しで勤務させられている。しかし、会社に自己判断による勤務とされて、残業代は支払われていない。社内には「サービス残業は当然」という風潮がある。

 

医療機関の検査技師(保健衛生業)【20代、労働者の家族】

始業前の1時間の残業や終業後の2時間の残業が常態であったが、タイムカードを定時で打刻するよう会社から指示されており、残業代は支払われていない。また、昼の休憩時間も長くても10分程度しか取れていない。

 

冠婚葬祭業の事務(接客娯楽業)【年齢不明、労働者】

早出や深夜に及ぶ残業を把握していないため、残業代は支払われていない。タイムカードはなく、出勤簿で管理している。残業代を会社に請求すると、残業代より少ない一定額の手当を支払っていることを理由に拒否される。

 

各種商品小売業の販売(商業)【20代、労働者の家族】

定時終了後にタイムカードを打刻した後も、勤務せざるを得ない状況にある。打刻後の残業は長いときで3時間にも及ぶが、店長など責任者は黙認したままである。休日出勤も余儀なくされ、そのため月70〜100時間は残業している。

 

パワハラ

電気機械器具小売業の事務(商業)【50代、労働者】

有期契約の社員であったが、社長から時間給のパートに変わるよう言われ、休憩なしで仕事を続けさせられるなど嫌がらせや圧力をかけられた。パートに変わることを断り続けていたところ、即日解雇を告げられた。

 

派遣業のシステムエンジニア(その他の事業)【20代、労働者】

派遣先の上司から日々、叱責を受けている。仕事が遅れたときには「ボンクラ」など人格を傷つける言葉をずっと言い続けてくる。この上司と同じ部署の職員は皆辞めていった。

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