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仮想通貨を扱うアプリのリリース前に知っておきたい法律知識を、弁護士さんに詳しく聞いてみた

2015.09.27

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(GVA法律事務所 弁護士 橘大地氏 取材:Gozal編集部)
 アプリを開発し、リリースすることはもはや一般化されたビジネスフローです。しかし、守らなければならない法律・規約などがたくさんあります。アプリに関連する法律は、リリースするアプリに、どのような機能が搭載されているかによって変化してきます。今回は、多くのアプリで活用されている「仮想通貨」の機能を搭載するアプリについて、リリース前に最低限知っておきたい法律知識をGVA法律事務所の橘大地さんに解説して頂きます。


「仮想通貨とはそもそもどのようなものですか?



 仮想通貨とは、一般的にはインターネット上にて、仮想通貨を提供している企業や提携している企業からのオンラインサービスの提供や商品購入が可能となる電子マネーのことを指します。ユーザーに馴染みのある仮想通貨としては、suicaやpasmoといった交通機関が発行する電子マネーもこの仮想通貨の一種です。最近では、ビットコインのようなPeer to Peer技術を利用した暗号通貨も仮想通貨の一種となります。


なるほど。アプリにも仮想通貨は使われていますよね?

 アプリを提供する会社についても、決済手段として、ユーザーに仮想通貨を販売する会社が多いです。「パズル&ドラゴンズ」においてはアプリ提供者は「魔法石」を販売し、ユーザーは魔法石を購入することで、レアキャラクターを獲得するためにガチャを回す権利を得られたり、ゲーム進行を行うための体力回復を行うことができます。ゲームアプリに関してはほとんど仮想通貨を発行することが主流になっていますが、その他のアプリについても、コンテンツ提供型(漫画アプリなど)のアプリではこのような仮想通貨を発行する場合が多いといってよいでしょう。


ありがとうございます。では、仮想通貨を使っている企業はどんなルールを知っておく事が必要ですか?



資金決済法(正式名称:資金決済に関する法律)を理解しておくべきです。

 そもそも通貨に関する基本的知識は理解しておくとよいでしょう。そもそも通貨とは、通貨を証明する紙それ自体には価値がなく、紙に記載される金額を民衆により信頼された権威が保証することによって、通貨として利用できる「価値」が生まれることになります。現代社会においては国家がこれを保証しており、日本の場合には日本銀行が発行する日本銀行券を国家が保証し、日々経済活動を行っております。単なる紙を価値のあるものとみなしているのは、国家が保証しているからなのです。



通貨自体の基礎理解も重要なのですね。では仮想通貨独自の基礎知識を教えてください。

 仮想通貨の場合には、企業がバーチャルな通貨を発行することができるため、この企業がサービスの利用を廃止したり、万が一企業倒産してしまう場合には、ユーザーが購入していた通貨の価値は一瞬の内に消えてしまうのです。法規制がない社会においては、何ら財産的裏づけがない企業が、仮想通貨を大量にユーザーに購入させ、金銭を受領しておきながら、その仮想通貨を利用できるサービスを停止してしまうような事態も想定できるのです。

 そこで、専ら利用者保護の見地から制定されたのが、資金決済法であり、仮想通貨を発行している会社が必ず理解しておくべきルールといえます。



解説ありがとうございます!でもそんなルール守らなくても実際大丈夫ですよね??笑



 資金決済法には罰則規定が当然あり、三年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処されると規定されています。また、権威付けられた協会により、指導、勧告が行われる場合もあります。

 そして何より、ユーザーからの信頼が失墜してしまいます。資金決済法という法律自体は、各大手ゲームアプリ提供者が遵守して提供を行っており、資金決済法に基づく表示やサービス終了時の返金対応などを行っていることはユーザーの間でも認知が進んでいます。ユーザーでなくても同業他社の事業者は一目瞭然です。ルールを破ったものが得をするような時代ではなく、相互監視が張り巡らされた時代の利点でもありますが、ルールを破ったものに対する制裁は、法律以上にユーザーによる信頼の失墜こそが重要になっています。


大変失礼しました。。。ユーザーから信頼を得るためにも法律を守るべきなのですね!では、法律の初心者でも分かるように、自分たちが資金決済法を意識する必要があるかどうか、チェックする方法を教えて頂けますか?


 資金決済法では「前払支払手段」を発行している法人が適用の対象となります。前払支払手段は法律に定められた4つの条件を満たした者が対象になるのですが、わかりやすくいえば、ユーザーから金銭等の対価を受領して、その後サービス提供を受ける支払いに使用できるものを発行する場合には該当することになります。ゲームアプリで、ガチャを回せたり、体力回復に充てられる有料のアイテムを事前に購入できるものを想像するとわかりやすいでしょう。

 なお、資金決済法には、自社のサービスにおいて使用できる「自家型」の支払手段と、第三者企業のサービスも使用できる「第三者型」の支払手段があります。ウェブのオープンプラットフォーム型のサービスの場合には、そのプラットフォームに参加している第三者の企業のサービスも統一仮想通貨で利用できる「第三者型」の通貨もありますが(例えば、「Mogage」で利用できるモバコインでは、Mobage上の多くの企業のゲームで利用できる)、アプリの場合にはアプリマーケット(App StoreやGoogle Play)が定めるレギュレーションによって、アプリを跨いだ仮想通貨の提供ができないこともあり、基本的には「自家型」を想定してよいでしょう。解説も「自家型」を想定しています。

 「自家型」の支払手段を発行する場合にも、例外があり、例外事由に該当する場合には適用を免れる場合もあります。

例外規定
①仮想通貨の有効期限が6ヶ月を超えない場合には資金決済法の対象外となります。
②一定の基準日(3月末と9月末)において、ユーザーが保有する未使用の仮想通貨が1,000万円を超えていない場合にも資金決済法の対象外となります。

 もっとも、①の有効期限を設けることは、ウェブサービスの場合よくあるのですが、アプリの場合にはアプリマーケットが定めるレギュレーションによって、仮想通貨に有効期限を定めることができないと定められるマーケットもあるため注意が必要です。そのため、提供者がチェックすべき項目としては、②のユーザーが保有する未使用の仮想通貨が1,000万円を超えているかどうかという論点に帰着するケースが多いといえます。

 ポイントとは仮想通貨の未使用残高です。アクティブユーザーの場合には購入した通貨をすぐ使用することが多いため、未使用残高としてポイントに残らないこともよくあります。よって、この1,000万円という基準を超えるのはリリースから日がたってから、となることが多いのが実情といえます。また、1,000万円基準は、サービス単位ではなく企業単位ですので、例えば10サービスを提供している場合には、この10サービスを足し合わせた金額ですので注意しましょう。


ありがとうございます!では資金決済法の適用をうける場合にはどのような対応や届出が必要なのか教えてください!



 資金決済法の適用対象に該当する場合には、管轄の財務局長に対して一定の届出を行う必要があります。また、届出のほかにも、各種義務が課されることとなり、2種類の義務を覚えておくとよいでしょう。一つは、ユーザーに対して発行者名や住所、利用上の注意点などを表示する義務が課されること。もう一つは、一定の例外はありつつも、1,000万円を超えた未使用残高の半額以上を供託所に供託する必要があります。ユーザー保護の見地から、一定の金額をプールしておくためです。この2つの義務を覚えておく必要があります。その他にも、半年毎に発行状況を財務局長に報告書を届出る義務や、発行業務に関する帳簿を作成し、保存する義務なども課されますので、その他の義務も実際には遵守する必要があります。



ありがとうございました!仮想通貨をつかったアプリをリリースする前にこの記事を参考にしたいですね。最後に橘さんが注目しているアプリなどがあれば教えてください。


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