2016年の私たちの賃金はどうなっていたの?賃金構造基本統計調査を解説!

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

平成29年2月、厚生労働省から平成28年の賃金構造基本統計調査が発表されました。

賃金構造基本統計調査とは、全国で主要な産業に従事している労働者の賃金を毎年6月分について、雇用形態や就業形態などさまざまな角度から調査したものです。この賃金構造基本統計調査を分析することで、今の日本の給与の形態や主要な産業の隆盛などを理解することができます。
ここでは、そんな賃金構造基本統計調査を解説します。

賃金構造基本統計調査を項目別に解説!

では、平成28年の賃金構造基本統計調査を項目ごとに見ていきましょう。

賃金の推移

平成28年の賃金は男女計304.0千円、男性335.2千円、女性244.6千円です。
前年度に比べ、男女計及び男性では0.0%とほぼ変わらず、女性では1.1%増加となりました。10年前に比べ男性の賃金にはほとんど変化がありませんが、女性の賃金は過去最高となっており、男女間の格差も過去最少の結果でした。女性の社会進出がよくわかる結果となりました。

性別ではどういう差があるか?

賃金の推移で男性の賃金はほとんど変わっていないが、女性の賃金が過去最高となったことがわかりました。では年齢別の推移に性別で差があるのでしょうか。
男性、女性とも年齢階級が高くなるとともに賃金も上昇し、どちらも50~54歳が賃金のピークになっています。しかし男性のほうが賃金の上げ幅が大きいため、女性のほうが賃金カーブは緩やかとなっています。

学歴別ではどうか?

学歴別に賃金をみると、男性では、大学・大学院卒が399.7千円、高専・ 短大卒が306.3千円、高校卒が288.1千円、女性 では、大学・大学院卒が288.7千円、高専・短大卒が255.6千円、 高校卒が208.3千円となっています。男性女性ともに大学・大学院卒が一番高い賃金です。また賃金のカーブを見ると、年齢があがるとともに学歴別の賃金の差が大きくなっているのが分かります。大企業などでは学歴主義の撤廃を始めている企業もあるので、今後変化があるかどうか注視が必要です。

企業規模別ではどうか?

企業規模別に賃金をみると、男性では、大企業が384.8千円、中企業が 320.2千円、小企業が290.9千円、女性では、大企業が268.7千円、中企業が242.3千円、小企業が219.1千円となっており、企業規模別に差があることがわかります。ただし、企業規模別の差は前年度より縮小しています。

産業別ではどうか?

産業別に賃金をみると、男性では、金融業、保険業(466.4千円)が最も高く、次いで教育、学習支援業(435.0千円)となっています。女性では、教育、学習支援業(304.2千円)が最も高く、次いで情報通信業(300.0 千円)でした。どちらも宿泊業、飲食サービス業(男性271.1千円、女性196.7千円)が最も低くなっています。男性、女性にかかわらず教育、学習支援業の賃金が高くなっており、今は教育や学習関係の業種に勢いがあることがわかります。

雇用形態別ではどうか?

雇用形態別の賃金をみると、男女計では、正社員・正職員321.7千円、正社員・正職員以外211.8千円となっており、正社員・正職員のほうが賃金が高いことが分かります。
年齢別にみると、正社員・正職員は年齢の高さに比例し賃金も高くなりますが、正社員・正職員以外の場合は年齢に関係なくほぼ一定です。政府の進める同一労働同一賃金はあまり進んでいないかもしれませんね。

賃金の分布ではどうか?

賃金の分布とは、年齢ごとにどの賃金層の人数が多いかを見ていくものです。男性の場合55~59歳までは、年齢が高くなるにつれて高い給料をもらっている割合が高くなります。女性の場合はそれが見られません。これは女性に正社員・正職員以外の人が多いことが原因の1つでしょう。また男女ともに30歳以上の各年齢階級で大学・大学院卒が他の学歴に比べ賃金が高いことがわかります。

都道府県別ではどうか?

都道府県別の賃金の水準をみると、全国計(304.0千円)よりも賃金が高かったのは茨城県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府の6都府県でした。最も高かったのは、東京都 (373.1千円)です。大都市のほうが賃金が高く、一部の大都市が賃金平均を押し上げていることがわかります。

製造業における労働者の種類ではどうか?

日本は物作りで成長してきた国です。そのため製造業の動向は日本のさまざまな動向を分析するのに重要になります。今回発表されたのは製造業で賃金がピークになる年齢とその金額で、男性では、生産労働者が50~54歳で327.4千円、管理・事務・技術労働者が55~59歳で506.6千円、女性では、生産労働者が40~44歳で194.1千円、管理・事務・技術労働者が45~49歳で302.8千円と なっています。

役職別ではどうか?

従業員100人以上の企業における役職の賃金は男性では、部長級666.7千円、課長級532.4千円、係 長級396.7千円、女性では、部長級592.5千円、課長級452.5千 円、係長級353.3千円となっています。課長級の役職につく年齢は男性、女性どちらも40代後半以降で、同年代で役職についていない場合(400万円程度)より高い賃金になっています。

短時間労働者ではどうか?

短時間労働者の1時間当たり賃金は、男女計1,075円、男性1,134、女性1,054円となっており、いずれも過去最高です。これは最低賃金が徐々に上がってきていることとも関係するでしょう。また業種では男性では、製造業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、サービス業(他に分類されないもの)が1,000円を超え、女性では医療、福祉、サービス業 (他に分類されないもの)が1,000円を超えています。特に医療、福祉で女性の需要が増えていることがこの結果につながっています。

まとめ

今回は平成29年2月に厚生労働省から発表された、平成28年の賃金構造基本統計調査について見てきました。賃金構造を見ていくと、学歴別や産業別の賃金差などで我が国の経済状況がわかりますし、男女間の賃金差、正社員・正職員とそれ以外の賃金差などで政府の政策などを理解することができます。現在、終身雇用制が崩れ、大企業で学歴主義の撤廃などが始まりつつある一方、昔からの制度も根強く残っています。賃金体系の変化はまだ端緒についたばかり。これからの変化に対応するためにも、賃金構造基本統計調査などの統計資料を注視しましょう。