在日韓国人の方など「特別永住者」の雇用手続きで注意するポイント
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
今回の記事では、在日韓国人の方など「特別永住者」の採用・雇用について解説します。社会保険、労働保険、マイナンバー、税控除などで注意するポイントがいくつかありますので、今回の記事で覚えてしまいましょう。
特別永住者
日本にいる外国人は200万人以上で、そのうち永住外国人は100万人以上と言われています。永住外国人は、約35万人の特別永住者と約67万人の一般永住者に分かれます。特別永住者の99パーセントが在日韓国朝鮮人です。(2015年・政府統計)
特別永住者は他の外国人労働者とは扱いが異なっています。就労制限はなく、基本的に日本人と同様に就労することができます。
「特別永住者」と、住民票と特別永住者証明書
特別永住者には、普段の生活で使う通称名の他に本名があります。住民票を見ると、まず本名が書いてあり、丸カッコをして通称名が記載されています。普段用いている通称名と本名を確認する必要に迫られた場合には、住民票を参照すると良いでしょう。
他の外国人労働者とは異なり、特別永住者には、在留カードがありません。在留カードに代わるものとして特別永住者証明書が交付されています。そしてこの特別永住者証明書は、就職の際に提示する義務はありません。ここは在留カードと違うところです。面接の時に採用担当者は、むやみに特別永住者証明書の提示を求めてはいけません。
「特別永住者」と、個人番号(マイナンバー)
社会保障や税、災害対策の分野で、行政の透明性や利便性を高める目的で導入が進む、個人番号(マイナンバー)。
日本国民に一人に一つ付与・通知されるだけでなく、住民票のある外国人(中長期在留者、特別永住者等)にもマイナンバーは通知されます。マイナンバーが必要とされる書類では、日本人従業員と同じように、マイナンバーを要求してください。
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各種手続きにおける通称名
採用が決まったら、日本国籍を持つ人を雇い入れる時と基本的に同じ様に、雇用保険や社会保険の手続きをします。20歳未満の新卒者でない限り前職の離職票や年金手帳などを持っておられると思いますので、そこに記載されている氏名および雇用保険番号と基礎年金番号で手続きをします。この段階で「特別永住者」だと判明したら、厚⽣年⾦保険被保険者資格取得届等の提出時に「ローマ字氏名届」の提出が必要です。(参考:日本年金機構『[PDF]「ローマ字氏名届」の提出をお願いします』)
ただ、実際には別名があるかどうかを確認しないで、本人の書いた履歴書と前職の事業所名、また基礎年金番号は番号だけを聴き取って、別の名前があるとは知らずに通称名で届出をすることもあるでしょう。
これでは手続きは誤りなのでしょうか?あくまでも本名で手続きをしなければならないのでしょうか?
通称名はただのあだ名のようなものではなく、普段からそれを使用して生活しているもので、登録後は法的な効力を持つものです。住民票、印鑑登録証明書、免許証に本名と併記して記載されます。銀行口座やクレジットカードも通称名で作成できます。雇用保険や社会保険の資格取得届を通称名で提出した場合でも、その手続きが無効になることはありません。
なお、外国人を雇用した場合の外国人雇用状況報告制度による厚生労働大臣への届出は、特別永住者の場合には除外されています。
所得税などの控除
特別永住者は日本人と同様に、所得税などの控除を受けます。
給与からは他の従業員と同様に所得税と住民税を控除します。
扶養家族については、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で情報を把握します。海外在住の親族でも、6親等内の血族または3親等内の姻族で、16歳以上の方に送金している場合には、生計同一を示すことで、その人数分の控除を受けられます。
かつては、海外の扶養親族の確認が困難であることを悪用して、10人以上の扶養親族を申告するケースが少なくありませんでした。そこで、平成27年に税制改革がなされ、海外在住の扶養親族については親族関係書類と送金関係書類を提出する事が必要になりました。しかも、外国語の場合はすべて和訳を添付する必要があります。
親族関係書類とは以下のものです;
- 戸籍の附票の写しおよび海外在住の親族のパスポートの写し
- 外国政府の発行した書類で、海外在住の親族の氏名、生年月日、住所または居所が記載されているもの
送金関係書類とは以下のものです;
- 海外在住の親族に送金したことを証明する金融機関発行の書類
- 海外在住の親族が利用したクレジットカードの代金を自分が支払うことを証明する、クレジットカード発行会社が発行した書類
法改正はありましたが、海外在住の親族に送金している場合に控除対象となる事に変わりありません。法が意図する本来の目的にそった形で、運用しましょう。
まとめ
特別永住者の方の雇用手続きで気を付ける点は、以下のとおりです;
- 他の外国人と異なり、在留カードではなく「特別永住者証明書」が交付されています。ただし、特別な必要が無い限り、特別永住者証明書の提示を求めてはいけません。
- 雇用保険や社会保険の手続きは、日本国籍を持つ方と同じように行います。通称名で申請しても構いません。
- 外国人雇用状況報告制度による厚生労働大臣への届出は、必要ありません。
- 所得税と住民税の控除は、日本国籍を持つ方と同じです。海外在住の扶養親族がいる場合、親族関係書類と送金関係書類を提出します。外国語で書かれている場合、和訳を添付します。
他の従業員採用と同じく、コミュニケーションをこまめにして、法的に問題のない範囲で従業員の希望に応じること。これは、特別永住者の方を採用する場合だけでなく、すべての労務管理の秘訣です。
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