住宅手当と社宅の課税取り扱いの違いとメリット・デメリット
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
あなたの会社は住宅手当を支給していますか?
社員にとっては会社の福利厚生で住宅手当があるかどうかは、入社の意思決定を左右する大事な項目でもあります。ここでは住宅手当の課税の取り扱いや社宅との違いをまとめてみました。
住宅手当の導入を検討している、また住宅手当を支給するべきか迷っている会社の方は住宅手当の導入検討の際の参考にしてみて下さい。
住宅手当と社宅の課税取り扱いの違い
会社に福利厚生の一環として住宅手当を社員に支給している会社もあれば、社宅を所有して従業員に格安の家賃で提供しているなど会社もあるでしょう。それぞれの課税取り扱いについてご説明していきます。
住宅手当の場合
<社会保険料、雇用保険料>
- 保険料算出の対象となる
<所得税>
- 課税の対象となる
社会保険料や雇用保険料は支給された給与の中の各種手当額も含んだ額から保険料を算出することになります。その結果、住宅手当を支給することによって従業員と会社側が負担する保険料が増えることになります。
所得税については交通費については非課税の取り扱いがされていますが、住宅手当については扶養手当、役職手当などと同様に課税対象になります。住宅手当を支給することによって所得税も上がるということになります。
社宅の場合
<社会保険料>
- 社会保険料算出の対象となる
社会保険料について社宅は現物給与となり、厚生労働大臣が告示で定めた金額に基づいて通貨に換算し、保険料の算定対象額に含めます
<雇用保険料>
- 雇用保険料算出の対象とならない(例外あり)
社宅を利用しない社員に対する均衡手当が支給されない場合には賃金には該当せず、算定対象額になりませんので原則的には保険料の算定対象にならないケースが多いです。
しかし、均衡を図る意味合いで社宅を利用しない社員に対しての均衡手当が支給される場合には賃金に該当する場合があります。
<所得税>
- 使用人から一カ月当たりの「賃貸料相当額」以上を受け取っていれば課税されない
賃貸料相当額とは以下の合計額です。
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
12円×(その建物の総床面積㎡)/3.3 ㎡
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%しかし、使用人が無償で社宅を貸与する場合にはこの賃料相当額が給与として課税されます。
使用人から賃貸料相当額よりも低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されます。
それでも、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。
以上は国税庁の説明文通りですが、これでは少しわかりにくいですね。以下の例を参考にしてみて下さい。
①従業員が2万円家賃を支払っている。
→賃貸料相当額の50%以上を払っていることになる
→差額の1万円については課税対象とならない
②従業員が1万円の家賃を払っている
→賃貸料相当額の50%以上を支払っていないことになる
→差額の2万円について給与とみなされて課税対象となる
会社が所有している社宅や寮など貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも上記の3つを合計した金額が賃貸料相当額になります
住宅手当の支給の目安とは
それでは住宅手当を支給する場合はどのくらいの金額を支給するのが一般的なのでしょうか。
リクナビネクストのエンジニア500人を対象としたデータによると住宅手当を支給されていると答えている人は51%います。また、支給金額については1万円未満が22.9%。1万円以上2万円未満が33.2%を占めています。
参考:リクナビNEXT エンジニアライフ応援サイト Tech総研-Vol.14 消えゆく福利厚生 「住宅手当の相場はいくら?
支給されている人のうちの56.1%は2万円未満の支給額ということになりますね。
独身者であってもアパートを賃貸していれば、地域にもよりますが5万円から7万くらいはかかってくるものではないでしょうか。住宅手当の平均的金額を考えると、実際に住宅にかかる費用の一部を恩恵的に支給しているだけの実態の会社が多いようですね。
しかし、これはエンジニアを対象にした調査ですので、全業種全職種で考えると、もっと支給率や支給金額が低くなることが予想されます。正確な調査データはありませんが、住宅手当を支給していない会社も数多く存在するので、実際には住宅手当を支給している会社は半分以上あると考えても良いでしょう。
住宅手当は支給したほうが良いのか
住宅手当は支給したほうが良いものなのでしょうか。住宅手当支給の場合と社宅を保有した場合のメリット、デメリットは以下の通りになります。
住宅手当の場合
メリット
- 従業員の満足度が上がる
- 採用の際に応募者が集まりやすい
デメリット
- 住宅手当支給の分の費用が掛かる
- 従業員、会社ともに税金や保険料負担が増える
社宅保有の場合
メリット
- 毎月の住宅手当の支給分の費用はかからない
- 住宅手当よりは課税になる場合が少なく、保険料負担や税金が抑えられる
デメリット
- 社宅維持のための人員配置や管理費、メンテナンス料がかかる
- 社宅に入居できる社員の基準の決定や管理が必要になる
住宅手当、社宅共にそれぞれのメリットデメリットがありますね。自社の状況に照らし合わせて、よりメリットが多い方の実施を目指しましょう。また、転勤のある会社の場合は従業員の満足度の向上のためにも社宅の用意や転勤者のみの住宅手当の支給など、何らかの措置があった方が良いでしょう。
一方で住宅手当のない会社も多く存在しますので、転勤のない会社で勤務地が限定されている場合には住宅手当を支給しないという選択肢があることも覚えておきましょう。
まとめ
最近では会社の福利厚生を見直して、社宅制度をなくしたり住宅手当を減額したりするなどの福利厚生を減らす会社も出てきています。
もちろん会社の利益優先であれば福利厚生費をおさえることも必要ですが、従業員の不満が増えてしまうと、会社の雰囲気も悪くなり業績に影響してくる場合もあります。住宅手当でも社宅の保有でもそれぞれのメリットデメリットを考えて、自社にとって最適な方法を検討してみましょう。
その他の手当についてはこちらの記事をご覧下さい。「給与手当の種類と非課税になる手当、標準報酬月に含まれる手当」
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