初めての給与計算入門|#4新人労務担当者が知っておくべき厚生年金保険料の仕組みと考え方
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
今回の給与計算入門シリーズで、早くも第4回となりました。今回はみなさんが将来どれくらいもらえるのか不安に思われているであろう「厚生年金保険」の仕組みと給与計算時の考え方について説明していきたいと思います!
厚生年金保険は将来働けなくなった場合でも生活ができるように、国から年金をもらうための制度です。従業員の将来にも関わる大事な保険ですので、知識を身につけてしっかりと給与計算で処理していきましょう。
厚生年金保険とは?
厚生年金保険制度には細かいルールがたくさんあります。原則としては65歳から年金を受け取りたいなら、若い時期に厚生年金保険料を納めておいてくださいね、というルールです。
みなさんが働いて稼いだ毎月の給与の中から、一定の金額を会社が預かって、納付してくれています。そのお金が今の高齢者に支払う年金となっているので、納付した金額を貯金のような形で預かって、将来返してもらえるというわけではありません。子供が少なくて高齢者が多い社会になればなるほど、その時代に働く世代にのしかかる負担が大きくなるというわけです。
厚生年金保険でもらえるお金の種類
では厚生年金保険料を支払っていくことで、どのようなお金がもらえる可能性があるのでしょうか。答えは下記の3つです。
老齢厚生年金 | 原則65歳から支給される年金のことです。 |
障害厚生年金 | 障害の状態にある人に支給される年金のことです。 |
遺族厚生年金 | 被保険者が死亡した時などに遺族に支給される年金のことです。 |
年齢を重ねて、65歳を超えてからもらえる年金を老齢年金といい、みなさんがイメージしやすいのはこちらではないでしょうか。ただ厚生年金保険は、老齢に対する年金だけではなく、障害の状態にある方や亡くなられた方のご家族に対する年金も支給する仕組みになっています。
国民年金と厚生年金はどう違う?
現在の国民年金制度は基礎年金として、全国民を加入対象としています。そして国民年金には3つの種類があります。
第1号被保険者
20歳以上で60歳未満の人で、厚生年金に加入していない人が入るカテゴリです。個人事業主の方や学生の方などはこちらの種類で国民年金に加入していることが多いです。
第2号被保険者
厚生年金保険に加入している方は自動的にこちらのカテゴリに入っています。つまり厚生年金保険に入っている方は、第2号被保険者として国民年金にも加入しています。
第3号被保険者
第2号被保険者の方の配偶者であって、第2号被保険者の収入によって生計を維持している方がこちらのカテゴリに含まれます。
上記3つのカテゴリで原則すべての国民が振り分けられています。そしてこの国民年金を日本の年金における「1階」と呼んだりします。すべての方が原則もらえる年金給付であり、もらえる額も原則みんな同額であり、固定部分としてみなさんを支えてくれる存在です。
そして厚生年金保険に加入している方は、第2号被保険者として国民年金にも加入している状態です。それは厚生年金保険料に国民年金の費用も含まれているからです。よって厚生年金保険に加入している方は、将来は国民年金の1階部分と厚生年金の2階部分までの年金給付が受けられます。
年金制度の1〜4階部分とは?
先ほど国民年金が1階部分であり、厚生年金が2階部分であると説明しましたが、まだ他にもフロアがあります。今回は一般的な会社員の方にとっての3階と4階部分についても簡単に説明しておきますね。
1階:国民年金
先ほど説明した国民がみんな加入している部分です。支給される年金の額も原則みんな同じ金額ですね(生年月日によって例外もあります)。
2階:厚生年金
会社員の方であれば原則加入しているのがこの厚生年金です。厚生年金に加入することで国民年金にも加入している状態となります。そして厚生年金の支給額は、納めた金額や期間などによって増減します。人によって差が出る年金ということですね。
3階:企業年金
企業年金とは「年金基金」や「企業型確定拠出年金」と呼ばれる年金のことです。会社が独自に加入している年金ということです。すべての会社は加入しているわけではありませんので、関わりのない方もたくさんいらっしゃるかと思います。
4階:個人型確定拠出年金
一番上の階層として「個人型確定拠出年金」というものがあります。2017年1月1日から施行されているもので、学生や専業主婦も含め、全員が加入できる自分で運用する「年金」です。
給与計算における厚生年金保険料の取り扱い
給与計算の際には厚生年金をどのように取り扱うのかを説明していきます。ただ、前回の記事で説明した「健康保険料」と取り扱いはほとんど同じです。もしまだ前回の記事をご覧になっていない方は、先に前回の記事を読んでいただいた方が良いかと思います。
1点だけ健康保険と取り扱いが違う部分があります。それが同月内に資格の取得喪失がある場合の取り扱いです。
健康保険の場合には、同月内に資格取得と喪失がある場合はその月の健康保険料が発生するとされています。つまり1月1日入社(資格取得)、1月25日退職(資格喪失)などのように同月内に被保険者資格の取得と喪失が2回以上ある場合は、月末に被保険者資格を有していなくても健康保険料が発生します。その場合、従業員の方は例えば健保組合と国民健康保険や、協会けんぽと健康保険組合など1か月につき2か月分の健康保険料を負担することになります。
一方で、厚生年金保険の場合には、平成27年10月から同月内に資格取得と喪失がある場合には、その月の厚生年金保険料は発生しません。よって会社側としては、厚生年金保険料の本人負担分を徴収する必要がなくなりました。
厚生年金保険料の計算式は下記の通りです。
厚生年金保険料=標準報酬月額×保険料率÷2
上記の形式の要素ごとに見ていきましょう。
標準報酬月額とは
厚生年金保険においても、標準報酬月額をベースに保険料を算定していきます。改めて標準報酬月額が何かと言うと、一定の月額給与額ごとに区切りをつけて、各区切りごとに定めた保険料を算定するための基準金額と言えます。
その区切りは月額報酬によって、第1級の8万8000円から、第31級の62万円まで、31等級に区分されます。協会けんぽで保険料額表が公開されていますので、参考までに下記リンクからご確認ください。また等級表は改定されることもあるので、毎年チェックすることもお忘れなく。
参考:厚生年金保険料額表(平成28年10月分~)を掲載しました。|日本年金機構
報酬月額の金額と標準報酬月額を決めるタイミング
健康保険に関する説明記事で説明した内容と同じ内容ですので、前回の記事をご確認いただければと思います。改めて説明すると、基本給、通勤手当、各種手当(残業手当、家族手当、住宅手当など)、年4回以上の賞与などを含めますし、さらには現物で支給される食事や住宅に関する支給分も含まれます。つまり「毎月支払っていると考えられるお金」を報酬月額としているのです。また標準報酬月額を決定するタイミングに関しても健康保険と全く同じであるため説明を省きます。
詳細はこちらの記事でご確認ください。
厚生年金保険の保険料率
厚生年金保険の保険料率は、健康保険料と違って健康保険組合ごとの違いのようなものはありませんし、協会けんぽのように都道府県ごとに料率が異なるといったこともありません。先ほども紹介しましたが、日本年金機構の公式サイトにて料率表が公開されています。
参考:厚生年金保険料額表(平成28年10月分~)を掲載しました。|日本年金機構
2016年9月21日に日本年金機構が更新したページによると、一般の方の厚生年金保険料は18.182%になっています(平成29年9月からは18.3%に固定されます)。
改めて給与計算時に従業員から控除する厚生年金保険料の計算式を思い出してみると
厚生年金保険料=標準報酬月額×保険料率÷2
となっていますので、保険料率を乗じた後に事業主負担分を差し引いて控除額を算出して下さい。
給与計算における厚生年金保険料のまとめ
厚生年金保険をしっかりと納めることは、従業員の方にとっては、将来もらえる年金の要件にもなるので、もれなく給与計算をやって納付していきましょう。厚生年金保険料と健康保険料の計算はセットで考えるべきですし、手続き面でも資格取得届などは各保険ごとに届出を行うのではなく、両保険をセットで行うようになっています。
ですので、健康保険の取り扱いの記事とセットで確認していただければと思います。引き続きどうぞよろしくお願い致します。
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