日本の会社の役職では聞き慣れないチーフ・ハッピネス・オフィサー(CHO)とは?

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

 日本の会社では、社内での職責に応じたポジションに対して役職が設けられています。会社の規模が大きくなるにつれて、組織は多層化していき、その結果、社内の役職も必然的に多くなっていきます。

現在、日本の会社組織には、どういった役職があるのでしょうか。様々な役職とその序列について見ていきましょう。

日本企業の役職の種類・序列(()内は英語表記)

  • 会長(Chairman)
     社長の上席に置かれる役職。社長を退任した後に就任する名誉職である場合もあるが、業務執行権や代表権がある場合もある。
  • 社長(President/CEO)
     会社のトップとして会社を代表する役職。代表取締役が就任することが多い。
  • 副社長(Vice President/COO)
     社長に準じる役職で、社長以下、専務以上のポジションを有する。通常取締役の中から選出されることが多い。
  • 専務(Senior Managing Director)
     取締役の役職の一つ。社長の業務を補佐して会社の全般的な管理業務を行う。
  • 常務(Managing Director)
     取締役の役職の一つ。 社長の業務を補佐して会社の日常業務を行う。
  • 支社長(President of Branch Office)
     本社から分かれて設けられた支社の管理・運営の最高責任者。
  • 支店長(Branch Manager)
     本店とは別に設けられた支店の管理・運営の最高責任者。
  • 本部長(General Manager)
     「〇〇本部」といった様々な業務本部が設置される場合の各本部の最高責任者。
  • 部長(Manager)
     部と呼ばれる組織のトップ。一般的に部は課、グループ、室などの下位組織を束ねる。
  • 工場長(Factory Manager)
     工場の最高責任者。工場内の従業員が就くことができる最高の役職とされる場合が多く、役員のすぐ下に位置付けられる。
  • 次長(Deputy General Manager)
     部長や支店長など部門責任者を補佐する役職。「〇〇部次長」「××支店次長」など部門名がつくことが多い。企業によっては「副部長」、「補佐」、「代理」などと呼ばれる場合もある。
  • 室長(Chief)
     会社内での「室」という組織のトップ。部長以上、課長以下のポジションであることが多い。
  • 課長(Section Manager)
     会社組織の「課」のトップ。一般的な中間管理職に当たり、中堅幹部となる。一定の部門の監督者兼最高責任者。
  • 主幹(Senior Manager)
     「仕事を中心的に行う人」を意味し、会社によって役員クラスから課長クラスまでその序列は異なる。
  • 主査(Project General Manager)
     一般企業では役職名というより社員の階級を表すことが多い。主任から課長級まで、ポジションは会社によって異なる。
  • 係長(Chief Clerk)
     会社組織の最小単位である「係」の管理的立場にある者の役職。管理職の中では最も下のポジションとなる。
  • 主任(Senior Staff Member)
     管理職ではなく、一般従業員の中での熟練者に当たる中堅社員に与えられる肩書き。試験を受けて昇格する会社もあれば、勤続年数に応じて自動的に昇格する会社もある。

チーフ・ハッピネス・オフィサー(CHO)とは

 日本の会社には職責に応じて様々な役職がありますが、今、従来の日本企業の役職にはなかった海外の新しい役職が注目されています。

それがチーフ・ハッピネス・オフィサー(CHO)です。これは、「従業員がどうしたら幸せになれるかを考える人」です。今までは、「企業の業績が向上すれば、従業員も幸せになれる」という考え方が一般的でしたが、今、アメリカではそれとは逆の発想で、「従業員が幸せになれば、企業の業績も向上する」という企業文化への変化が見られます。アメリカのIT企業、特にシリコンバレーを中心に増えてきていますが、そもそもはGoogleのチャディ・メン・タンが提唱した「社員がお互いに思いやりを持って働くと職場の環境が良くなり、更に利益も生み出す」という企業文化が広まったものとされています。

CHOの具体的な職務としては、従業員を対象とした幸福度調査を行い、その向上に努めるというものです。幸福度というものは目に見えないものなので、心理学、社会学、神経学、行動科学等に基づき科学的に幸福度を数値化し、比較するという作業が必要となります。CHOはこれらの結果を基に、現状の問題点を発見し、従業員の日常の習慣から改善していくことが求められます。コンサルティング会社、デリバリング・ハピネスによると、CHOを設けてから売上が40%増え、社員の定着率が90%にまで上がった企業もあるということです。会社の業績を向上させるために、どうすればいいのかを漠然と考えるより、まずは目の前の従業員の幸福度をいかにして向上させるかを考える。これだけで、業績向上につながる可能性が高いのです。日本の企業でも、役職を導入することまではできなくても、管理業務の一環として幸福度の調査と分析、そしていかにしてそれを向上させるかについて考えてみることは有意義なのではないでしょうか。

まとめ

規模が大きくなるに従って企業組織は多層化し、様々な役職を有するようになります。日本企業にも、職責に応じて様々な役職があります。しかし、従来の日本の形式的な役職には当てはまらない新しい役職が今注目されています。それがチーフ・ハッピネス・オフィサー(CHO)です。これは、従業員の幸福度の向上に努める役職です。発祥はシリコンバレーを中心としたアメリカのIT企業で、従来の企業文化とは逆の「従業員の幸福度の向上が企業の業績向上につながる」という幸福学の発想に基づくものです。実際にCHOの創設により業績の改善が見られたというデータもあり、日本企業としても、様々な方法でこのような幸福学の企業文化への導入を検討すべきではないでしょうか。