従業員が結婚した場合の確認事項と届出、手続きとは?
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
従業員から結婚の報告を受けた場合、会社としてはどのような手続きをすればいいのでしょうか。結婚すると、氏名や住所変更の他様々な手続きが必要になります。どのような手続きが必要になるのかを見ていきましょう。
事実確認チェックリスト
まず、結婚によってどのような変更があるのかを確認しましょう。主な確認事項は以下の通りです。
氏名の変更はありますか?
→ある場合、雇用保険、社会保険共に変更手続きをして被保険者証の名前を変更する必要あり。
住所の変更はありますか?
→ある場合、社会保険の変更手続きが必要。
配偶者は被扶養者になりますか?
→配偶者の年収等の確認して、もし被扶養者になる場合、社会保険の手続きをして保険証発行の手続きが必要。国民年金第3号の届出も必要かも…。
給料の変更はありますか?
→通勤費を支給している場合には引っ越しによって金額が変更になったり、配偶者が被扶養者になることで扶養手当を支給する必要あり。社会保険料に影響するかも?
雇用保険の手続きは?
雇用保険については、氏名変更がある場合のみ手続きが必要です。住所変更は必要ありません。氏名変更がある場合には、「雇用保険被保険者氏名変更届」を速やかに管轄公共職業安定所に提出しましょう。氏名変更がある人の「雇用保険被保険者資格取得届」を提出した際に交付された「雇用保険被保険者証」の上の部分が、「雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届」になっているので、それを使用すれば以前の名前や雇用保険番号が印字されているため便利です。もし見当たらないという場合には白紙のものを使用してもOKです。公共職業安定所でもらえるほか、インターネットでもダウンロードできます。提出すると、新しい名前の「雇用保険被保険者証」が発行されますので、本人に渡してください
<添付書類>
特になし。
<記入上の注意点>
・①届出書上部に書いてある届出書名の「資格喪失届」の文字と下部に書いてある「第7条第1項」の文字を二重線で消しましょう。
・②2.「被保険者番号」を必ず記入しましょう。
・③10.「新氏名」「フリガナ(カタカナ)」を記入しましょう。フリガナは、濁点や半濁点も1文字とするので注意しましょう。姓と名前の間は1文字あけます。
・④外国人の被保険者の場合のみ、14.「被保険者氏名(ローマ字)または新氏名(ローマ字)」の欄に新氏名を記入しましょう。
・⑤19.「被保険者氏名」には変更前の氏名を記入しましょう。
・⑥24.「氏名変更年月日」には入籍の日付を記入しましょう。
社会保険の手続きは?
雇用保険に比べ、社会保険の方が行うべき手続きが多くなります。もれがないように一つずつ確認していきましょう。
(1)氏名変更する場合
氏名変更する場合には、「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更届」を速やかに管轄の年金事務所に提出しましょう。提出後、新しい氏名の健康保険証が事業所に届くので、本人に渡します。
<添付書類>
旧氏名の健康保険証。忘れずに回収するようにしましょう。
<記入上の注意>
引用元:健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更届(日本年金機構)
・様式上部の届出書名は、健康保険か厚生年金のどちらか片方のみの加入の場合には、加入している方を〇で囲んでおきましょう。両方加入している場合にはそのままでOKです。
・①事業所整理記号、②被保険者整理番号を忘れずに記入しましょう。
・③年金手帳の基礎年金番号は、年金手帳や、基礎年金番号通知書を見た上で間違いのないよう記入します。
・⑤被保険者の氏名(変更後)に変更後の氏名を、㋑変更後の氏名に変更後の氏名を記入します。変更後の氏名にはフリガナを正確にふりましょう。
・外国人の被保険者の氏名が変更になる場合には、この用紙のほかに「厚生年金保険被保険者氏名ローマ字氏名届」を提出しましょう。
(2)住所変更する場合
結婚すると、引っ越して住所が変更になることが多いと思います。その場合には、「健康保険・厚生年金保険住所変更届」を速やかに管轄の年金事務所に提出しましょう。
<添付書類>
特になし。
<記入上の注意>
・様式上部の届出書名は、健康保険か厚生年金のどちらか片方のみの加入の場合には、加入している方を〇で囲んでおきましょう。両方加入している場合にはそのままでOKです。
・①事業所整理記号、②被保険者整理番号を忘れずに記入しましょう。
・③年金手帳の基礎年金番号は、年金手帳や、基礎年金番号通知書を見た上で間違いのないよう記入します。
・⑤に新しい住所を、イに以前の住所を記入します。
・変更年月日には、引っ越した日付を記入します。
・結婚して配偶者を被扶養者としている場合、被扶養配偶者の住所変更欄に被扶養者の情報を記入します。
・⑥被扶養配偶者の基礎年金番号⑦生年月日⑧配偶者の氏名を記入します。被保険者と同居の場合には、(□被保険者と配偶者は同居している。)の□にレ点を記入すれば、⑨~⑫欄は記入しなくてOKです。
・被保険者が厚生年金に加入している場合で、20歳以上60歳未満の配偶者を被扶養者としている場合には、「国民年金第3号被保険者住所変更届」も必要となります。年金事務所等の窓口で用紙をもらった場合には複写になっており、「健康保険・厚生年金保険住所変更届」の2枚目がそのまま使用できますが、インターネットでダウンロードする際にも忘れずに両方とも提出するようにしましょう。
(3)配偶者が健康保険の被扶養者となる場合
結婚により、配偶者の人を健康保険の被扶養者にする場合には、5日以内に「健康保険被扶養者(異動)届」を管轄の年金事務所に提出しましょう。被扶養者にするためには、以下の要件を全て満たさなければなりませんので、よく本人に確認してください。
- 配偶者の年収が原則130万円未満(60歳以上である場合又は障害厚生年金を受けられる程度の障害を持っている場合には年間180万円未満)
- 被保険者と同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(必ずしも半分未満でなくても、年金事務所で総合的に判断してくれることがあるようです。)
- 被保険者と別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
年収130万円未満とは、給与等の収入で言えば月額108,333円以下、雇用保険等の受給金額で言えば日額3,611円以下となります。この場合の年収は、あくまで今後の見込みであるため、結婚と同時に退職するなどして収入がなくなったり、減少した場合には、それ以前の年収は関係ありません。ただし、被扶養者の年間収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金、出産手当金も含まれますので注意してください。
<添付書類>
- 所得税法の規定による控除対象配偶者となっている場合
事業主の証明があれば添付書類は不要です。しかし、提出が遅くなり60日以上遡るような場合には、その他の場合と同様添付書類が必要となりますので注意してください。
- ①以外の場合
ア)退職したことにより収入要件を満たす場合:「退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し」
イ)雇用保険失業給付受給中の場合または雇用保険失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合:「雇用保険受給資格者証の写し」
ウ)年金受給中の場合:現在の年金受取額がわかる「年金額の改定通知書などの写し」
エ)自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合:直近の確定申告書の写し
オ)上記イ~エ以外の収入がある場合:上記イ~エに応じた書類及び「課税(非課税)証明書」
カ)上記ア~オ以外:「課税(非課税)証明書」
※①および②に共通:障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税対象となる収入がある場合には、別途「受取金額のわかる通知書等のコピー」が必要。
- 内縁関係(別姓)である場合
ア)「内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本」
イ)「被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)」など
<記入上の注意>
・㋛「被扶養者になった理由」は状況に応じて選択します。
- 結婚したため(元々自身の健康保険・厚生年金の被保険者資格なし):ウ「婚姻」
- 退職して自身の健康保険・厚生年金被保険者資格を喪失したため:エ「被扶養者の離
職(2号喪失)」
- 以前は所得要件で扶養に入れなかった場合で、所得が減少したため:オ「被扶養者の
所得減少」
・⑩「被扶養者になった日」に記入した日から被扶養者となるため、他の被保険者資格と重複しないように、かつ1日もあかないように注意しましょう。例えば被扶養者になった理由がイ)の時、前職が9月30日退職の場合、資格喪失日は10月1日となるため、被扶養者となった日は10月1日となります。
・㋞「収入」は、障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税対象となる収入も含んだ金額を記入します。
・㋡「住所」は被保険者と同居の場合は「同居」と記入するだけでOKです。
・所得税法の規定による控除対象配偶者となっている場合には、㋬「収入に関する証明の添付が省略されている者は、所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族であることを確認しました」のところに〇をしてください。
・添付書類が必要なのに、事情があってどうしても添付書類が用意できない場合には、「扶養に関する申立書」のところに被保険者本人が状況を記入してください。
(4)配偶者が国民年金第3号被保険者となる場合
厚生年金に加入している被保険者の配偶者が被扶養者(年収130万円未満)で、かつ20歳以上60歳未満の場合には、「国民年金第3号被保険者該当届」を5日以内に管轄の年金事務所に提出する必要があります。様式は(3)健康保険扶養(異動)届とほとんど同じです。年金事務所等で配布される様式は「健康保険扶養(異動)届」が3枚複写になっており、3枚目が使用できますが、インターネットでダウンロードする際にも3枚全て提出するようにしてください。
<記入上の注意>
・配偶者基礎年金番号、国民年金第3号被保険者の基礎年金番号を正確に記入しましょう。
・右下の「届出人」の欄に、忘れず国民年金第3号被保険者(厚生年金保険の被保険者ではなく、被扶養者となる配偶者)の住所、氏名、電話番号を記入して押印してもらうようにしてください。
・配偶者が外国人で、国民年金第3号被保険者に該当する場合には、「国民年金保険第3号被保険者ローマ字氏名届」を提出してください。
(5)給料が変更になる場合
結婚により、交通費の金額が変更になったり、社内で定めている扶養手当が支給されるようになるなど、給料の金額が変更になることがあるかと思います。通常であれば、月々の社会保険料の等級は4・5・6月に支給された給料の平均値によって、毎年1回9月分から変更されますが、固定的な賃金が変更になる場合には、通常の決定のタイミング以外でも社会保険料の等級が変更になることがあります。これを標準報酬月額の変更と言いますが、これに該当する場合には「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を管轄の年金事務所等に提出する必要があります。しかし、全ての人が必要になるわけではなく、以下のようなケースだけになります。
①昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
②変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上である。
固定的賃金には、固定的な手当も含まれます。例えば毎月定額で支給している交通費の金額が変更になったり、結婚して配偶者が被扶養者になり、扶養手当が毎月支給されることになることも、固定的賃金の変動になります。このような給料の変更があった月から3か月の平均を取って、以前の等級と2等級以上差が出るような場合には、4か月目の保険料から等級が変更になります。ただし、標準報酬月額等級表で一番高い等級と一番低い等級が関係する変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となるので要注意です。
<添付書類>
原則不要ですが、改定月(保険料が変更になる月)の初日から起算して届け出が60日以上遅延した場合、または等級が大幅に(5等級以上)下がる場合には以下の添付書類が必要となります。
- 被保険者が法人の役員以外の場合
ア)賃金台帳の写し
固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
イ)出勤簿の写し
固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで
- 被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
以下のア~エのいずれか1つおよび所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し(固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで)
ア)株主総会または取締役会の議事録
イ)代表取締役等による報酬決定通知書
ウ)役員間の報酬協議書
エ)債権放棄を証する書類
※ その他の法人の役員の場合は、これらに相当する書類
<記入上の注意>
引用元:健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届(日本年金機構)
・提出する時に給料の締日と支払日をきかれることがありますので、あらかじめ様式の上の方に記載しておくとよいでしょう。
・㋗「算定対象月の報酬支払基礎日数」は、月の欄には給料の支払月を書くのですが、日数の欄にはその月の給料支払いの対象となった日数を書きます。例えば月給者であれば暦の日数、時給者であれば出勤日数になります。また、休んだ日数だけ欠勤控除される場合には、就業規則等で定められた所定労働日数から欠勤日数を引いた日数になります。給料の支払い月の暦日数や給料の支払日ではありませんので注意しましょう。この日数が17日未満の月がある場合には、今回の月額変更の対象にはならないので、その点も確認してください。
・㋘「通貨によるものの額」には、固定的賃金、非固定的賃金関係なく、全ての給料を合わせた総支給額を記入しましょう。
・標準報酬月額が改定される年月を必ず記入してください。改定される年月は、㋗に記入した3か月目の翌月です。
住民税の手続きは?
住民税を特別徴収している場合ですが、氏名変更があっても、特に届出をする必要はありません。また、住所変更があった場合も、毎年1/1に住民票がある市町村にて納付するため、特になにか手続きをする必要はありません。次回の給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届出書にて、氏名や住所の変更を届け出てください。
その他の社内手続きは?
(1)氏名変更する場合
氏名の変更がある場合は、現在使用している会社の名刺や、アドレス、給料の振込口座の変更が必要になります。
(2)社内独自の福利厚生がある場合
会社によっては、就業規則等で様々な福利厚生が定められていると思います。例えば結婚した場合に支給するお祝い金等です。就業規則等で定められている金額や、現金支給か口座振込か等の支給方法を確認し、口座振込であれば振込口座を本人に確認するなどしましょう。
また、特別休暇が定められている場合もあるかと思います。付与する休暇日数を確認し、いつ取得するのかを本人に確認しましょう。
まとめ
従業員が結婚した場合、まず最初に事実確認をすることが大切です。氏名、住所、被扶養者、給料手当の変更があるかどうかによって、手続きが異なってきます。
雇用保険については、氏名変更をすればOKです。新しい雇用保険被保険者証がすぐに発行されますので、本人に渡してあげましょう。
社会保険については、氏名変更、住所変更、扶養異動届、月額変更届など多岐に渡ります。氏名変更した場合には、健康保険証の名前も変更になりますので、旧姓の保険証は忘れずに回収しましょう。扶養異動届は、被扶養者の状況によって添付書類が必要になることがあるので、よく本人に確認することが大切です。
住民税については、特段すぐにするべき手続きはありません。
その他社内での変更事項は会社によって様々あるかと思います。細々したことから、従業員のためになる制度まで、本人が知らないこともあるかと思いますので、担当者の方がもれのないように気を付けて手続きをしてあげてくださいね。
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