給与計算できる従業員を見分ける方法
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
この記事のポイント
- 人事労務担当者の、給与計算の実力を把握するのは困難
- 「給与計算実務能力検定試験®」は、実務能力を判断するのに役立つ
- 資格の概要について解説します
過去の経歴から把握しづらい、給与計算の実力
間違いを犯すと、従業員からの信頼を失墜しかねない、給与計算。
社労士や税理士事務所にアウトソーシングしている企業もありますし、給与計算ソフトを導入し、自社で行っている企業もあるでしょう。また、自社で1回計算した後、問題がないかアウトソーシングして再確認する企業もあると聞きます。
ところで、給与計算に関わる従業員が、実務に関してどの程度理解できているか把握していますか?
職務経歴に、大手企業の人事労務部門にいたとあったので大丈夫。という理屈は通りません。なぜなら、社労士や、税理士事務所に給与計算を丸投げして、給与計算の仕組みを理解していないという可能性もあるためです。もしくは、上司が設定した給与計算ソフトに、勤怠情報をインポートする程度しか、経験が無いかもしれません。
従業員の給与計算の実務能力を把握するのは、思ったより大変です。
「給与計算実務能力検定試験®」を知っていますか?
「給与計算実務能力検定試験®」は、給与計算業務の知識と、実務能力を評価するための試験で、内閣府認可の一般財団法人職業技能振興会が認定する資格です。
2014年から始まった検定試験ですので、まだご存じない方も多いと思います。
以下、給与計算実務能力検定試験の概要を説明します。
等級について
2級、1級と2種類あります。受験資格等は無く、だれでも受験可能です。
各級が取り扱う内容については、以下の章で詳しく説明します。
試験時期について
2級は年2回、3月と11月に実施、1級は1年に1回、11月に実施されます。
試験会場について
試験会場は、東京、大阪、その他主要都市となります。
2017年3月に行われた試験では、札幌、仙台、宇都宮、埼玉、東京、新潟、静岡、金沢、名古屋、大阪、岡山、広島、福岡、大分、熊本、鹿児島、沖縄の全国17会場で実施されました。
受験料について
受験料は、2級:8,000円/1級:10,000円です。
出題範囲
給与計算業務に必要な基礎知識、給与計算実務に必要な法的知識(労働基準法等)、演習問題(実際の給与計算)とされています。
原則として試験実施月の前々月の1日に施行されている法令等により出題されます。3月試験の場合は同年1月1日現在の、11月試験の場合は同年9月1日現在施行されている法令等になります。
資格の更新
「給与計算実務能力検定」は、2年毎に更新しなければ失効します。有効期限の3ケ月~6ヶ月前に、更新料(5,000円)を支払う必要があります。
給与計算実務能力検定試験・2級について
2級の評価として公式サイトでは、「実務上の基礎となる労務コンプライアンスについて正しく理解し、基本的な給与計算の計算を行い、明細を作成できるレベル。一般職員として、年末調整以外の通常の毎月の給与計算業務と賞与の計算ができる。」と記載しています。
具体的な出題範囲は、公式ガイドブックの目次から推察できます。
【目次】
- 第1章 給与計算とは
- 第2章 「勤怠欄」からわかる給与計算のしくみ
- 第3章 「支給項目欄」からわかる給与計算のしくみ
- 第4章 「控除項目欄」からわかる給与計算のしくみ
- 第5章 社会保険の事務手続き
- 第6章 賞与計算と年末調整
- 第7章 給与計算担当者が知っておきたい法律
- 第8章 給与計算担当者が知っておきたい社会保険制度
- 第9章 給与計算の演習問題1~15
- 巻末付録 給与所得の源泉徴収税額月額表、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表、健康保険・厚生年金保険の保険料額表など
試験概要
- 出題問題数:40問
- 試験時間:120分
- 出題形式:知識問題35問(四肢択一、マークシート方式)、計算問題5問(四肢択一、マークシート方式)
- 点数配分:知識問題1問2点(計70点)、計算問題1問6点(計30点)
- 備考:試験時には、計算時に必要な料率表等が配布されます。
合格基準など
出題問題のうち、7割以上の得点獲得が合格基準点となります。
過去の合格率は、下記のとおりです。
- 2014年11月試験:70.74%(受験者704名中、498名合格)
- 2015年3月試験:66.57%(受験者661名中、440名合格)
- 2015年11月試験:63.87%(受験者703名中、449名合格)
- 2016年3月試験:60.40%(受験者755名中、456名合格)
給与計算実務能力検定試験・1級について
1級の評価として公式サイトでは、「労働法令や税務についても正しく理解し、複雑な制度やイレギュラーな給与体系にも対応可能、また年末調整も含め、年間を通じて給与計算に関するすべての業務に精通したレベル。社会保険や税務等付随する手続きを行うことができ、給与計算業務のリーダーとして管理ができる。」と記載しています。
具体的な出題範囲は、公式ガイドブックの目次から推察できます。
【目次】
- 第1章 賃金および労働時間等に関する法令の基本
- 第2章 賃金および労働時間等に関する法令
- 第3章 社会保険制度と主な事務手続き
- 第4章 給与・賞与・退職金の計算と手続き
- 第5章 年末調整の計算と手続き
- 第6章 給与計算の演習問題1~17
- 巻末付録 健康保険・厚生年金保険などの保険料額表、給与所得の源泉徴収税額表、速算表など
試験概要
- 出題問題数:40問
- 試験時間:120分
- 出題形式:知識問題30問(四肢択一、マークシート方式)、計算問題10問(記述式)
- 点数配分:知識問題1問2点(計60点)、計算問題1問4点(計40点)
- 備考:試験時には、計算時に必要な料率表等が配布されます。
合格基準など
出題問題のうち、7割以上の得点獲得を合格基準点とし、かつ計算問題を6割以上正解していることが合格基準です。
過去の合格率は、下記のとおりです。
- 2014年11月試験:65.52%(受験者613名中、401名合格)
- 2015年11月試験:69.52%(受験者643名中、447名合格)
次回、2017年11月5日(日)の試験について
第8回2級試験、第4回1級試験が、2017年11月5日(日)に実施される予定です。
申込みは、2017年9月15日(金)までなので、ご興味のある方は公式サイトご確認ください。
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