住宅手当は非課税になるのか?非課税の給与手当、標準報酬月に含まれる手当を徹底解説

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

給与規定を作る時に悩ましいのが、給与手当の内容です。

従業員に少しでも多くの手当てを支給したいのが経営者の本音ですが、手当には所得税や社会保険の対象になるものがあります。

結果的に従業員の手取りアップにつながるようにするには、所得税や社会保険の対象にならない手当てを多く支給するのが望ましいです。そのためには、給与手当と所得税や社会保険の関係を理解しておく必要があります。給与手当の種類、所得税や社会保険との関係について、確認してみましょう。

手当一覧

給与の構成は給与規定に示します。大抵の会社では、基本給手当割増賃金の3つの構成になっています。
基本給は毎月変動なしですが、手当と割増賃金は待遇や月の状況によって変動します。

ここでは、手当にはどんなものがあるのか、確認してみましょう。
手当には、以下のものが挙げられます。

  • 通勤手当は、通勤に要する定期券の購入費相当額になります。支給限度額を設定する場合には、限度額を給与規定に示します。この限度額の例で多いのが非課税限度額までという設定です。
  • 家族手当は、従業員が扶養する配偶者や子供がいる場合に支給されます。この場合も扶養1人につきいくらという設定をして、給与規定に示します。
  • 役付手当は、職務上、管理的地位にある者に対して、職務に応じて支給します。例えば、主任手当5,000円、課長手当10,000円などです。
  • 皆勤手当は、賃金支払の締切期間中の欠勤、遅刻、早退がない従業員に対して支給します。
  • 食事手当は、会社が従業員に対して、残業や宿日直した場合の食事代として支給するケースが多いです。
  • 住宅手当は、従業員が通常支払っている家賃の補助として支給します。

所得税が非課税になる手当・ならない手当

ここでは、給与手当のうち所得税の非課税額について、確認してみましょう。

通勤手当

通勤手当の非課税額は、通勤に電車やバスを利用している人、マイカーを利用している人で異なります。
具体的には以下のように定められています。

電車やバスを利用している場合の非課税となる限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
新幹線鉄道を利用した場合の運賃等の額も「経済的かつ合理的な方法による金額」に含まれますが、グリーン料金は含まれません。
最も経済的かつ合理的な経路及び方法による通勤手当や通勤定期券などの金額が、1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります。

引用元:国税庁

マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さです。)に応じて、次のように定められています。

マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表

片道の通勤距離1か月当たりの限度額
2キロメートル未満(全額課税)
2キロメートル以上10キロメートル未満4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満28,000円
55キロメートル以上31,600円

出典元:国税庁

食事手当

食事手当の非課税額に関する内容は以下のようになります。

役員や使用人に支給する食事は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。

  • 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
  • 次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
     (食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額
    この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を差し引いた金額が給与として課税されます。

また、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与として課税されます。なお、残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっています。
引用元:国税庁

住宅手当

住宅手当は従業員が支払う家賃の補助として、支給されますが、所得税の課税対象となります。非課税とするには。社宅手当として支給する方法があります。ただし、この場合には従業員から一定の家賃(家賃の基準の50%以上)を徴収する必要があります。家賃が8万円なら4万円の徴収が必要です。また、社宅の物件は会社があらかじめ契約した物件であることも必要です。

標準報酬月額に含まれる手当・含まれない手当

標準報酬月額は、基本給以外に、通勤手当、残業手当、役職手当などの諸手当が含まれます。また、現物で支給される食事や住宅に関する支給分も含まれます。ただし、賞与(年間3回以下)は含まれません。
標準報酬月額は、健康保険や厚生年金の計算のもとになるもので、4月から6月の報酬の平均値で算出します。
健康保険や厚生年金は従業員と会社が折半で負担するものです。したがって、なるべく負担を少なく設定したいところです。例えば、残業手当はある程度コントロールできるので、4月から6月の残業は抑えるなどの工夫が必要でしょう。

割増賃金の基礎に含めない手当

割増賃金の基礎に含めなくてよい手当は以下のようになります。

 

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、家族手当、通勤手当、住宅手当は一律に支給されるものは除外の対象にはなりません。
例えば、家族手当が扶養人数に関係なく一律1万円、通勤手当は距離に関係なく一律5,000円、住宅手当は賃貸住宅の場合、一律1万円などの場合です。
参考元:厚生労働省

まとめ

給与手当は労働とは関係なく発生するものが多いです。ただし、目的は従業員の手取りアップであり、せっかく手当を支給しても、所得税が増えれば従業員の負担増となります。

また、標準報酬月額に含まれれば、従業員および会社の両者の負担増となります。よって、手当を支給する場合は、従業員および会社の双方にメリットが出るように、手当と所得税および社会保険との関係を理解しておく必要があります。