休職期間満了時に関する相談|契約解除0社労士・寺瀬学の「人事労務相談BEST5」 [第1回]

執筆: 寺瀬学

みなさんこんにちは。S&Tプロフェッショナル社会保険労務士法人の寺瀬学です。

私たち社労士は、顧問先である会社から、日々、人事や労務に関する様々な相談を受けます。
 

私の事務所の場合、顧問先の業種は飲食店チェーンや学習塾のほか、製造業、小売業、そして航空会社など、規模も数名から3,000名を超えるところまで様々です。相談内容は、業界特有のものであったり、大企業ならではのご相談といったものもありますが、どこの顧問先でも必ずといっていいほどご相談をいただくトピックがいくつかあります。
 

本シリーズでは、人事労務相談としてご相談を受けることが多いトピックについて5回に分けて、ご紹介していきます。あくまでも一例を紹介するものではありますが、日々の人事労務管理のヒントになれば幸いです。
 

第1回目のトピックは「私傷病による休職期間満了時に関する相談」についてです。
 

契約解除0社労士・寺瀬学の「人事労務相談BEST5」目次

  1. 休職期間満了時に関する相談
  2. フレックスタイム制導入の相談
  3. 休職の従業員が復職後また休職。期間はどう通算する?
  4. 副業で働いた時間も通算?労基法38条との関係

 

「休職期間満了時」に関する相談とは

近年、メンタルヘルス疾患の患者数が急増し、メンタルヘルスの不調を訴え会社を欠勤したり、または休職する従業員が多くみられます。
 

人事労務のご担当者の中には、こうしたメンタルヘルス疾患を抱えた従業員の対応について頭を悩まされている方々も多いものと思います。
 

私たち社労士にも、こうした対応に関してさまざまなご相談をいただきますが、その中でも特に多いのは「休職」にかかわるものです。
 

休職制度は、法的に定めることは要請されておらず、あくまでも会社が任意に定める制度ではありますが、実際には多くの企業で制度化されています。
 

休職制度の意義は、私傷病により労務を提供することができない従業員を直ちに解雇せず、一定期間(=休職期間)療養に専念させることで復職のチャンスを与えるというものです。
 

しかし、もしその休職期間中に病状が回復せずに復職できない場合、原則として休職期間満了をもって退職(または解雇)となります。
 

退職となると、休職者の生活に大きな変化が生じます
。人事労務担当者はこの「原則」を適用することについて大いに悩むのではないでしょうか?
 

休職期間満了時の対応について

具体的に寄せられるご相談は、次のようなものです。
 

「メンタル疾患を理由に休職を命じ、休職期間満了が近づいてきたので、主治医の診断書を提出させ、内容を確認したところ、一定の就業制限のもとで復職可能と書かれていた。ただ、本人と面談しても業務を行えるまでに病状が改善したようには思えず、復職は難しいのではないかと考えており困っている。どうしたらよいか。」
 

こうしたメンタルヘルス疾患での復職をめぐる問題は、身体疾患とは異なり復職の可否判断が難しいため、労使間トラブルに発展することも多く、裁判例も豊富です。
 

私たち社労士は、こうした裁判例に照らし合わせながら、メンタルヘルスを抱えた従業員と企業双方にとって納得できる対応策を慎重に検討します。
 

対応策としては、産業医による診断および意見聴取を行うことや、一定期間リハビリ勤務をさせてその結果を踏まえて復職の可否を決定する、などが考えられますが、社労士としての知識と経験を駆使して具体策を提案します。
 

ご相談の際に必ず話していること

ご相談に対して必ずお話しするのは、「健康保険の傷病手当金」についてです。
 

傷病手当金は、業務外の病気やケガ(私傷病)による療養のために労務不能となり、4日以上欠勤して給与が無給の場合に支給されるものです。加入する健康保険が「協会けんぽ」の場合、支給額は次のとおりとなり、最長1年6ヵ月支給されます。
 

  • 1日あたりの支給額=【支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均額】/30日×2/3

 

一般に休職期間中は無給となるケースが多いので、その場合「傷病手当金」の給付を受けるものと思います。
 

この「傷病手当金」について、会社を退職したらもらえなくなると誤解されている方が多くいらっしゃいます。
 

傷病手当金は、退職日までに健康保険の加入期間が1年以上あり、かつ退職前に傷病手当金の給付を受けているといった一定の条件を満たしていれば、退職後も残りの期間の傷病手当金を受けることができます
 

傷病手当金のしくみを説明することで円満に解決することも

ご本人が、退職したら生活の糧がなくなると考えた場合「なんとか復職したい」と考えます。また、労務に詳しい医師から聞いた話ではありますが、主治医も傷病手当金の知識がないため、本人の意向をくみ取り、一定の条件付きで復職可能とした診断をすることもあるようです。
 

もし、退職後も傷病手当金を受けられることを知っていれば、無理に復職をせずに当面は療養に専念することも選択肢として考えられるかもしれません。そして、病状が安定したところで再就職し、環境を変えることが、むしろご本人にとってよい場合もあるでしょう。
 

現に今までのご相談においても、ご担当者からご本人にこの傷病手当金のしくみを説明してもらうことで、ご本人が納得のうえ、前向きに退職されたということがありました。
 

休職期間満了時の問題については、個別具体的に対応を検討していく必要がある難しい問題ですが、こうした制度の丁寧な説明が事態を解決することにつながることもあります。
 

一つのアプローチの仕方として、ご参考にしていただければ幸いです。
 

それでは、次回またお会いしましょう。
 

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参考情報

 

契約解除0社労士・寺瀬学の「人事労務相談BEST5」目次

  1. 休職期間満了時に関する相談
  2. フレックスタイム制導入の相談
  3. 休職の従業員が復職後また休職。期間はどう通算する?
  4. 副業で働いた時間も通算?労基法38条との関係

 

Profile

寺瀬学
寺瀬学
S&Tプロフェッショナル社会保険労務士法人・代表社員
1999年東京大学理学部卒。日商岩井㈱(現双日)、㈱ヒューマンテック経営研究所(社会保険労務士法人併設)を経て、2015年3月に当法人を設立。著書に「さまざまジョブリターン制度」(経営書院刊「進化する柔軟な雇用管理システム」所収)、「単身赴任の対応と支援策」(経営書院刊「人事異動・転勤支援ハンドブック」所収)ほか。