事業所内託児所が社員50名の会社に?! 躍進するドクタートラストを支える「働き方改革」の話を聞いてきました!
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
産業医や保健師と企業を繋ぐサービスを中心に、2004年の創業から継続的に成長を続ける株式会社ドクタートラスト。実は従業員の約7割を女性が占め、男女関係なく活躍できる柔軟な就業環境が好業績と結びついているのだとか。
今回は、株式会社ドクタートラストの高橋雅彦社長に、同社独自の働き方改革について話を伺いました。
就業環境や従業員の構成に、特徴はありますか?
東京と大阪にオフィスがあり、東京は約50人、大阪は6人の従業員がおります。従業員は女性が多く、全体の約7割が女性です。
当社では新卒採用も積極的に行っているのですが、業務内容が健康管理に関係するというイメージ的な問題もあってか、男性は採用が難しいです。当社だけでなく業界そのものについての認知がそもそも低いという状況があると思います。
女性の場合、例えば新卒採用においてもお医者さんとの関係づくりを面白いと思ってくれたりしますし、実際の現場ではお医者さんと話す際に動じないのは女性の方が多い印象です。このような理由で、結果的に現在は女性従業員が多いという特徴があります。
それでは、働く女性を支える制度があれば教えてください。
はい。では、保育室の話から。最初のきっかけは、課長職をしていた女性のお子さんが、保育園に入れなかったことです。なんとかしてくれと言われて、保育室を開設しました。
50人規模の企業で保育室を開設するというのは珍しいですよね。
はい、珍しいと思います。開設してみて気づいたのは、1人の保育士の場合、3人までしか保育できないんですが、まだ当社はその上限に達していません。これだと、保育士が1人しかいなくて、休めないんですね、彼女が。ほんとにいい保育士なんです。
ですので、保育士を最低2人にしたいのですが、そうすると6人のお子さんが妥当なんです。しかしなかなか6人のお子さんがいない。どうしようかなあと思っています。
ということで、従業員だけでは足りないので、当社で働いているお医者さんにもお声掛けしている状況です。
いま居るオフィスは渋谷再開発の影響で立ち退く必要があります。次のオフィスでは保育室を拡大しようと思っています。
業務時間に、お子さんが遊びにきたりするのはかわいいですよ。社内がほんわかします。いま議員さんがお子さんを連れてきて問題になったりしていますが、職場に連れてきても受け皿がきちんとあれば、まったく問題ないと思いますけどね。退社時にお子さんと一緒に帰ればいいだけですので。
ちなみに従業員の保育室利用料は月1万5千円に抑えつつ、保育士には正当な報酬をお支払しています。
さすが、業績の良い会社はすごいですね。笑
いやいや、業績はそんなにもですよ。笑
むしろ、いい人材をなんとか確保することが小さな会社の一番のポイントなので、そのためには彼女・彼らを支える制度の整備が必要なんです。
もともと私は銀行出身ですが、優秀な従業員がほとんでしたので、この会社を始めるときに、どうしたらそういう人が来るんだろうと考えました。でも何も施策しなければ、来るわけないんです普通は。有名でもなんでもないし、CMもやってないし。でも、保育室の整備や、6万5千円の家賃補助など働きやすい環境を整備することで、だんだん来るようになってくるんですね。そうすると、業績にも繋がり、良い循環ができてくる。
当社は保健師も重要な存在でいるのですが、彼女・彼らは通常2〜3年で転職して、キャリアアップしていく、ちょうど外資系企業のような業界なので、良い人を留めるということについて、必要に迫られてこういう制度にしたというのも、正直ありますよ。
他にも「働き方改革」に関連する制度はありますか?
短時間正社員制度もありますし、フレックス勤務も可能です。また、勤務時間は通常8時間が所定労働ですが、7時間半としています。さらに現在は30分の早上がりを推奨しています。もともと残業禁止と言ってきたのですが、こうやって推奨することで、短時間正社員制度などを利用する従業員だけでなく、まわりも刺激されて早く切り上げるようになりました。
でもかつては、難しいことがあるとみんなでだらだらと働くような時代が当社にもありました。何度もそういうことがあって、なんとかしろと厳しく言っていました。そうすることで、一時的に仕事が不十分になる事もあるかもしれません。それよりもカルチャーを作った方が後々の成果につながると言いました。
長時間の勤務を恥ずかしいと思うカルチャーを作ることを優先したのです。お客様に健康経営を勧める会社ですので、ここは今後も大切にしたいと考えています。
ちょっと話がずれますが、仕事と家事や子育てを両立している人は時間管理がすごく上手いですよね。世間には残業代稼ぐためにだらだら働く人もいると聞きますが、両立している人にはまったくそういう考えがありません。
ちゃんとルールを決めて、育児・介護で休むときは無給になるという事はみんなに適応させるというのは徹底しています。そういうルールは徹底し不公平感がでないように工夫しています。
社内制度を利用する際、どんな手順・申請が必要ですか?
まだそんなに大きな会社ではないので、私(社長)か管理部門にまず提案します。まだ制度化されていない仕組みは、従業員から私に直接「こんなことできませんかね?」と相談されて制度化することが多いんです。
例えば、週20時間しか働かないんだけれど、社会保険に入れないかと言ってきた従業員がいました。通常週30時間ないと社会保険には入れないのですが、届出を出せば20時間でも適用されるという事を彼女はいち早く知って、私に「こんな制度あるけど」と言ってきたんです。で「いいじゃんいいじゃん」ということで、制度化しました。
そしてその制度を知って、すごいいい方が入社してくれたということがありました。産業保健業界で、全国1位2位といわれる大西という者がいるのですが、定年退職した後、週に3日程度、後進の育成を仕事にしたいと考えていたところ、ドクタートラストは20時間でも社会保険適用になると知って、門を叩いてくれました。彼女は国内でも数少ない産業看護師を指導できる資格(産業保健看護上級専門家)の資格を持っており、当社で優秀な若い従業員を育ててくれています。
育児や介護といった理由でなくても、短時間制度の利用ができるんですね。
はい。ぜんぜん大丈夫です。
あと成績が良い営業マンの中には、給料は保ったまま、出勤日を減らしてくれと言ってくるものも出てきました。週休3日にしてくれと。
それを受けて、まず成績優秀者だけを集めたチームを作り、そのチームで週休3日・出勤4日をやってみました。
やってみたんですね!面白いです。
はい。ところが繁忙期は、結果的に出勤してくるようになりました。どうしても仕事がまわらない。そして半年間やったんですが、最後はみんな週5日出勤に戻ってしまいました。
次にチャレンジしてみたのは、今年1年間やったんですけれど、産業カウンセラーの資格取得の支援です。社内表彰制度でMVPを過去にとった者で希望する者がいれば、費用は全部会社負担で、木曜日は講義に出席して出社しなくても良い、と言ったところ3名手を挙げてくれました。
彼女・彼らは来春に試験があり現在頑張っています。週休3日にもかかわらず全員が社内の目標数値はクリアしています。他の社員と全然遜色ない結果です。こういう人は、週休3日に向いているということがわかりました。
科学的な検証の姿勢を感じます。
はい。私もともと理系なんです。笑
でもまだ、全員には広げられないんですね。収益をもう少し良くして、仕事量を減らすことを徹底的にやる必要があります。1日6時間勤務で週休3日、給料がお医者さん並というのが、私の目指すところです。それができたら、さらにスーパーいい人材が集まる会社になると思います。
「長時間労働」を無くす事が大事なんですね。
はい、いろんな日本の問題のほとんどは長時間労働が原因だと思っています。少子化や離婚、夫婦の不仲とか、消費が伸びないとか。長時間労働を是正できれば、もっと暮らしやすくなると思います。
いまアルバイトとかパートをしている、元々大企業で働いていた女性がいますが、6時間労働であれば、介護も育児もしながら働き続けることができたのではないかと思うんです。なんとか8時間でなく6時間労働にしたいと思っています。
そうやって優秀な人材をうまくとりこんでいかないと、競争には勝てなくなってきています。まわりの30代とか40代をみわたすと、働いていないという女性はほとんどいませんが、正社員で責任のある仕事をしているかというと、そうでない人が多い。派遣労働の方も多いです。そういう人たちに、責任を持って仕事をして欲しい。
あと、男性ももっと早く仕事を上がれるようしたいと思っています。みんながみんな、6時間しか働かない職場であれば、6時間勤務の人にも大きな責任を与えて仕事をしてもらうことができるようになりますから。
実は私も実家の父が要介護度2で、今日これ(この取材)が終わったら千葉に行って身の回りの世話をしにいきますが、残業してたらこんなことできませんからね。
長時間労働撲滅を進めていけば、多くの人が働き続けられます。国民総生産も飛躍的に上がると思います。
当社では、無駄な仕事を無くし、上司部下間でコミュニケーションを密にとってボツになる仕事を無くし、やったことをそのまま納品できるようにしていけば、あと2〜3年で6時間労働にできると思ってやっています。
基本的には気持ちの問題だと思います。昔は大企業だと、終電まで働くのが普通だったのが、だんだん8時までになってきてと徐々に変わっています。そうやっていけば最終的に、みんな6時間勤務になると思っています。
他にも、働き方改革関連の制度はありますか?
勤務間インターバル制度を導入しています。制度の途中で、インターバル時間を変更しました。最初13時間だったのですが、そうするとどんどん出勤が遅くなって弊害になったので、通常の11時間に戻しました。
あと、プレミアムフライデーを活用しています。ただ当社の場合は、第2金曜日にしています。最終金曜日はバタバタして無理だと考え、第2金曜日にしようと。
プレミアムフライデーを、「労働時間の短縮」とみなすと、導入できない会社が多いと思いますが、当社は従業員同士のコミュニケーションを活性化する場だととらえ、先輩や後輩で飲みに行ったり、共通の趣味をともに行ったりしています。最近では私自身、プレミアムフライデーが待ち遠しくて仕方ないです。笑
それから月2回ノー残業デイがあります。この日は帰らないと本当に怒られます。大阪支社も、帰ったという証拠写真の提出を求められます。
(大阪のオフィスとは常時ビデオでつながっていました)
こういう制度があることで、それ以外の日も早く帰ることが習慣化して、仕事が早くなっていると思います。
リモートワークについては、どう思われますか?
私自身で考えると、、サボるかなあと。笑
サボるというか、言い訳しちゃうと思うんです。でも、育児中の人が出社できないという時に、スカイプを使って仕事をするとか、そういう事は実現したいと思っています。実際にリモートワークで働いている保健師もおりますし、退職後に『産業保健新聞』という当社のオウンドメディアのライターとして、業務委託をしている元従業員もいます。
最初は時給制でやっていたのですが、ものによって「今日は4時間でした」「今日は30分になりました」とか。人によって納品物と時間のバランスが違ったりして不公平感がでてきてしまうので、納品物単位でお支払する感じにして問題は出てこなくなりました。ちょっとアルバイトっぽくなってしまいますが。
ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。最後に、繰り返しになりますが、私は8時間でできる仕事と6時間でできる仕事って、本質的にそれほど違うと思えないんです。経営者的目線で考えても、残業代をバシバシ出すより6時間で働く人にきちんと給与を払うことの方がよっぽど良い事だと思います。そこに早く気づくかどうかが大事だと思います。
編集後記
取材が終わった後、雑談をしていたら、副業でライターをされている従業員もいるとのこと。「ネットワークが広がるからぜひ続けて欲しい。」と高橋社長は仰っていました。
本文中に出てきたように、事業や組織づくりの中で、科学的検証(仮説・実行・評価)の姿勢が徹底しているから、副業禁止のようなマイクロマネジメントは不要なのだなと感じました。
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