[マイナンバー制度導入] 企業への法定義務と対応策まとめ
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
2016年1月からマイナンバー制度が開始されましたが、これによって企業にはどのような義務が課されるのでしょうか?
まずは、マイナンバー制度の沿革を確認しておきましょう。
マイナンバー制度の沿革
マイナンバー制度の事の起こりは、古く1968年に遡ります。この佐藤内閣の時代にも「国民背番号制」の導入が検討されていましたが、頓挫した経緯がありました。
その後、2007年(第一次安倍内閣時代)に、国のずさんな年金記録の管理が明らかとなり、いわゆる「年金記録問題」が発覚しました。このことによって、行政における管理体制の整備の必要性が再認識されたのです。
その後、2011年に管内閣が「社会保障・税番号大綱」について決定をしましたが、政権交代があって廃案になってしまいます。
そして2013年、第二次安倍内閣において、ようやく「社会保障・税番号制度」、いわゆるマイナンバー制度が導入されることが決定されました。その後法律が整えられて、2016年1月から施行されています。
法律で定められた企業への義務一覧
次に、マイナンバーの取り扱いについて企業に課される義務を確認します。
- 本人確認
まず、企業は従業員の税金や社会保険などの事務を取り扱うので、そのために従業員からマイナンバーの提出を受けます。このとき、必ず本人確認をしなければなりません(マイナンバー法16条)。
また、マイナンバーの提供を受ける際、その利用目的を特定する必要があります(個人情報保護法15条)。
- 利用の制限
マイナンバーの提供を受ける場合は、「個人番号を記載した書面」(源泉徴収票などの役所に提出する書類)を提出するとき以外は利用できません(マイナンバー法19条)。
- 提供を受ける場面の制限
さらに、「個人情報を記載した書面」の提出以外の場面で、マイナンバーの提供を求めることもできません(マイナンバー法14条、15条)。
- 収集・保管の制限
役所に必要な書類を提出する場面以外ではマイナンバーを収集・保管することもできません(マイナンバー法20条)
- 情報ファイル作成の制限
マイナンバーをまとめた情報ファイルについては、役所に必要な書類を提出するために必要な範囲を超えて作成することはできません(マイナンバー法28条)
マイナンバーを取扱う時に注意するポイント
企業がマイナンバーを取り扱う際に注意すべきポイントをご説明します。
- 取得時に利用目的を告げる
まず、従業員や取引先からマイナンバーを収集する際には、必ず利用目的を告げる必要があります。
利用目的としては、給与所得や退職所得についての源泉徴収票、雇用保険の申請や届出、健康保険や厚生年金保険の申請や届出、労災請求に関する事務などに利用することを告げましょう。
- 本人確認とその方法
次に、マイナンバー収集の際には、本人確認が必要です。
提出者が個人番号カード(マイナンバーカード)を取得している場合には、これ1枚でマイナンバーと本人確認ができます。
提出者が個人番号カードを取得していない場合には、マイナンバーの通知カードと免許証などの他の身分証明書が必要です。
通知カードを紛失している場合には、マイナンバーの記載された住民票と免許証などの他の身分証明書が必要です。
- マイナンバーの適切な管理
収集したマイナンバーを管理する方法にも注意が必要です。
マイナンバーは、必要がある場合にのみ継続して保管することができます。
必要があると認められるのは、翌年以降も継続して従業員を雇用する場合や、法令によって、マイナンバーの保存が一定期間、義務付けられている場合などです。それ以外の場合には破棄しましょう。
また、漏えいを防ぐために、保管方法には細心の注意を払う必要があります。
法律違反した場合の罰則について
マイナンバー法に違反すると、罰則がありますので、以下でご紹介します。
正当な理由なく、収集したマイナンバーの記載された個人情報ファイルを提供した場合、4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科されます(67条)。
不正な利益を得ようとしてマイナンバーの提供を受けたり盗用したりした場合は、3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金又は併科されます(68条)。
人を騙したり暴行・脅迫したり、不法侵入、不正アクセス等によってマイナンバーを取得した場合には、3年以下の懲役又は150万円以下の罰金(70条)となります。
偽りやその他の不正な方法によって個人番号カード等を取得した場合には、6月以下の懲役又は50 万円以下の罰金となります(75条)。
このように、マイナンバー法に違反すると、重い刑罰が科されることになるので、注意が必要です。
まとめ
今回は、企業がマイナンバーを取り扱う際の義務と注意点について解説しました。企業は、従業員の税金や社会保障などの事務のためにマイナンバーを収集する必要がありますが、その目的や管理方法には制限があります。法律に違反すると罰則もあるので、くれぐれも慎重に対応するようにしましょう。
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