女性社員が躍動するクレディセゾン、女性社員が輝き活躍できる会社であり続ける理由とは
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
全社員の8割が女性であるクレディセゾン。多くの女性社員が活躍する同社が、いかにしてその体制を築いてきたのか、その歴史と工夫について戦略人事部の外丸久美氏にお話を伺います。
10,000名が働くクレディセゾングループと人事チームの体制
クレディセゾングループの組織人数について教えてください。
クレディセゾン単体として社員は3,000名ほど在籍していまして、アルバイト・契約社員などを含めて6,000名の従業員がいます。また関連会社などを含めたグループ全体では10,000名ほどの組織規模となっています。各関連会社に人事セクションがあるので、各社が主体的に人事制度などを作っています。
外丸さんの所属されているチームのミッションについて教えてください。
戦略人事部という部署を3年前ほどに作りまして、そちらに所属しています。このチームでは戦略的に人事のあり方を検討し、経営に資する人事を実行していくことをミッションとしています。戦略人事部は40名ほどが所属しています。例えば総合職社員の人事制度を変えたり、働き方を多様化させるための雇用フレームをどうするのかなどを検討してきました。
クレディセゾンの女性社員が躍動する歴史的背景
(戦略人事部の外丸久美氏)
なぜ女性社員が多いのでしょうか。理由などありましたら教えて下さい。
現在のクレディセゾンの前身が1950年代に創業していた「緑屋」という割賦販売の事業をする会社でした。70年代後半にその緑屋が経営破綻しまして、80年に西武クレジットとして再出発を行いました。そのときに、男性社員がたくさん会社を離れていった中で、女性社員が会社に残り、これから自分たちで会社を盛り立てていかなければならないという状況におかれました。会社の重大な危機を、多くの女性社員の努力により乗り越えた、そういった歴史的背景がそのまま今に至り、強い女性が多い会社となっています。
クレディセゾンの中で女性社員だからこそより貢献している役割や領域はどのようなことでしょうか。
特定の役割・領域において女性の活躍が目立つということはなく、すべての分野で女性も男性も活躍していると思っています。カードに関する総合案内を行うセゾンカウンタ-やお客様からのお問い合わせに対応するコールセンターで女性社員の割合が高くなっていますが、他の部署でも女性はたくさん在籍し、あらゆる部署で活躍をされています。これは会社のカルチャーも影響していると思うのですが、自分自身が夢中になれる領域に積極的に異動したり、チャンスに手をあげたりすることを受け入れる風土が根付いているため、男女問わず特定分野に限らない活躍が実現できていると思います。
何よりも貴重な先輩女性社員のノウハウが循環する組織作り
オウンドメディア「SAISON CHIENOWA」
女性社員が働く上で、どのような仕組み・ルールが重要だと思いますか。
根本にある考え方としては、「働き続けられること」だと考えております。働き続けられて、働きがいを感じられる会社を目指しています。その考え方を支える制度として、具体的には短時間勤務はお子様が小学4年生になる春まで、通常よりもかなり長期にわたって取得できるようになっています。またご家族などの介護を続けている社員に短時間勤務を期間の定めを撤廃し、必要期間取得することができるようになっています。社員それぞれの状況に合わせた働き方を適用することを意識しています。
また仕組みではないのですが、弊社の代表取締役の林野が、会社の風土作りの考え方として「女性活躍度No1を目指す」ということを常日頃から提唱しています。トップダウンで本気度を示しているということが重要で、細かな施策や制度を受け入れる企業文化を形成していると思います。現在クレディセゾンの課長職以上の女性割合は約20%となっており、さらに高い数字を目指しています。
若い女性社員にとっては、生涯にわたってやりがいを持って働けるのか心配になることもあると思います。その点、弊社では先輩の女性社員があらゆるジャンルで活躍していて、たくさんのロールモデルがいることが大きな効果を生み出しています。出産や育児などを経て、活躍されている社員が多いからこそ、社員間で仕事のみならず、育児のやり方や短時間勤務での働き方などの情報を共有することが出来ます。戦略人事部でも社内報やセミナーの機会を作ることで、先輩女性社員の経験やノウハウを若手社員に発信することができます。先輩女性社員の存在こそが「ずっとやりがいを持って働ける会社なんだ」という安心を醸成しています。
女性社員のライフサイクルに合わせて、どのようなサポートをされていますか。
若いときから、しっかりと成功体験を重ねることで、大変で長い出産・育児期間も乗り越えて、職場に復帰しても活躍することができると考えております。そのため目標管理を自らでしっかりと行い、その達成度が評価と連携しています。仕事に対して、簡単にあきらめずに取り組めるような人間形成ができるような風土であると考えています。
また出産後に職場復帰しやすく、新たなチャレンジができるきっかけとして捉えられる人事制度を目指しています。休職時に一度、所属を人事付にして、復職後に柔軟なキャリアプランの選択を取れるようにしています。復帰をする際に戦略人事部と面談を行って、多様な希望を聞く機会を設けています。そのまま前の所属部署に復帰をすることも可能ですし、ご家族や本人の人生を考えて、本社での短時間勤務や全く異なる部門に異動することもできます。出産育児による休業をチャンスと捉えて、本人の希望に合わせた新たなチャレンジができるサポートをしています。
社内には家庭と仕事をどちらもしっかりとこなすノウハウを持つ女性社員が沢山いますので、先輩方と若手社員が積極的に交流できるような空間を作り上げることを意識しています。また育児期間中の短時間勤務が明ける前には、その後の本格的なキャリアデザインに関するセミナーもし、生涯やりがいを持って働きたい女性社員のサポートに力を入れています。あとは希望に応じたジョブローテション制度や、ビジネススクールへの派遣を行ったりもしていますし、育児・介護に関連して働き方の調整を申請することも手軽にできるようになっています。また、「SAISON CHIENOWA」という新しい働き方、暮らし方をテーマにした自社メディアの運営に多数のワーンキングマザーを含む有志社員が参加しており、育児休業中の社員も企画や記事執筆などで貢献してくれています。
女性社員が輝く組織における人事の役割の捉え方
(戦略人事部の外丸久美氏)
女性社員が躍動するために取り除かなければならない誤った考え方などはありますか。
役職者の女性社員割合など数値目標が一人歩きすることは危険かなと思っています。数値目標自体は否定するものではないですが、そこに至る土台や意味合いこそが重要だと考えています。事実として女性社員がいろんな仕事にチャンレンジすることができ、その結果に応じて評価が普通に行われることが実現できた上で、数値目標を達成しなくては意味がありません。
弊社では、有期雇用も多いのですが有期雇用から毎年、10人ほど社員登用していますし、女性に限らず、高齢者や障害者、有期契約社員も積極的に活躍の機会を設けて、手をあげる人には、チャンスを公平に提供出来る会社と言えます。
クレディセゾンはいい意味で「人事が弱い」と考えています。あくまで現場の声が最も重要だと捉えています。人事の部署が隔離されておらず、日々新たなニーズや、既存ルールの課題を職場の社員からフィードバックしてもらうことができます。社員から出てきた声を聞き、いかに具体化させていくか考え、仕組み化していくことが一番重要なことかと思います。今後もクレディセゾンはダイバーシティを尊重した人事戦略を展開していきます。育児、介護、障害など社員の状況に合わせて、カスタマイズされた働き方が実現できる環境を目指し、会社ルールの制約が社員の自由な活躍を妨げないような制度設計を目指していきます。
人事は本当にめまぐるしく、常に知識や情報をキャッチアップしていかなければ、職場の動きに取り残されてしまいます。手をぬかずに、常に最新の会社と職場の声を聞き続けることが重要ですね。
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