副業としての有償ボランティアとは
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
自然災害、高齢化社会、地方過疎、子どもの教育などの社会的課題の解決に、政府や企業と別のスタンスで取り組むNPOは、私たちの生活に欠かすことが出来ない存在です。
全国の認証NPO法人は、2017年2月28日現在、51508件あります。
NPOを支えているのは、自ら志願し、自発的に活動に身を投じるボランティアです。ボランティアは、無給で行うイメージが強いかもしれません。しかし、交通費や食事代、手間賃などの意味合いで「謝礼」「謝金」を受けとる「有償ボランティア」という関わり方も存在します。
有償ボランティアとは
NPOに従事する人のうち、約13%が有償ボランティアと言われています。
NPO法人の有給職員、ボランティア数推計結果(2004年)
1団体あたり平均人数 | 総人数(千人) | 比率 | ||
---|---|---|---|---|
役員 | 8.96 | 131.3 | 35% | |
有給職員 | うち有給役員 | 0.46 | 6.7 | |
正規職員 | 1.4 | 20.5 | ||
非正規職員 | 2.95 | 43.2 | ||
出向職員 | 0.08 | 1.2 | ||
小計 | 4.89 | 71.7 | 19% | |
ボランティア | 有償ボランティア | 3.34 | 49 | 13% |
無償事務局ボランティア | 1.33 | 19.5 | ||
無償その他ボランティア | 7.06 | 103.5 | ||
小計 | 11.73 | 171.9 | 46% | |
合計 | 374.9 | 100% |
参照: http://www.mhlw.go.jp/topics/npo/01/
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が、2006年に実施した調査「NPOの有給職員とボランティア」が行った調査によれば、時間あたりの謝礼金額の高さと、活動の継続性には相関関係が見られます。つまり「有償」であることが、活動継続の重要なインセンティブとして作用していると考えられます。
ボランティア検索サイト「ACTiVO」には、2017年4月18日現在、41件の有償ボランティア募集が掲載されています。(その中には、アルバイト募集も含まれています。ここの問題点は後の章で説明します。)
副業で、有償ボランティアする理由
現在、安倍政権が強力に推進している「働き方改革」。その中で、副業/複業は「原則OK」とする事が、企業に期待されています。安倍首相は副業について「普及は極めて重要」と発言していますし、日本が置かれた社会的状況(高齢化社会、人口減少社会等)を考えると、労働力不足を補い、雇用の流動化にもつながる「副業」が一定の重要性を持っていることは間違いないでしょう。
さて。では、副業が原則OKになったとして、ビジネスパーソンの多くが、コンサルタント業や、営業代行、執筆、イベント業、芸能活動などを始めるのでしょうか?おそらく、そうはならないと考えられます。すべての人が、利潤追求型の経済活動を、本業の他にさらにやろう!と思うとは考えづらいためです。
そこで考えられるのが、NPOでの有償ボランティアです。利潤追求型の副業や、アルバイトとは異なり、自発的に社会貢献するので、「やりがい」「満足感」を得られやすい。かつ、有償であるという点が、活動に継続性をもたすインセンティブとして機能するためです。継続的に活動すれば、強い人脈も得られ、新しい経験も多く得るため、本業へのポジティブなフィードバックも得られるでしょう。
有償ボランティアと、アルバイト(労働者)
有償ボランティア募集を探そうと検索したら、結果リストにアルバイト募集が含まれていることがあります。しかし有償ボランティアと、アルバイト等の有償スタッフは、明確に区分される必要があります。
有償スタッフの場合は、労働基準法・最低賃金法の適用対象となります。また、労災保険の適用となる他、一定の勤務時間を超えれば、社会保険や雇用保険も適用されます。一方、有償ボランティアの場合は、労働者では無いと判断されるため、上記のような保護対象となりません。
「有償ボランティア」募集の中には、あきらかな「アルバイト(有償スタッフ)」募集も含まれています。アルバイトである場合は、どれだけ社会的意義のある活動をしていたとしても、労働者として最低賃金を受取り、時間外労働や休日出勤が発生した場合は、割増賃金を受けとる必要があります。
参考)NPOで活動する人々の類型
内容 | 民間企業の場合 | ||
---|---|---|---|
有給役職員 | 役員 | 理事長、理事、監査役など。NPO 法人の場合は、理事報酬を支給される者は全役員の3分の1と法で定められている。ただし実際の労働を伴う報酬の支給についての規定はない。 | 「役員」 |
正規職員 | 管理職、一般職員で団体の中心となる者で、比較的長時間勤務(フルタイム勤務)する者。主に月給制。専従、常勤職員とも呼ばれる。 | 「正社員」「正規従業員」「常勤」 | |
非正規職員 | 専従職員に比較して短時間(短日数)勤務する者で、「パート」「アルバイト」等職員。登録制で個人の都合にあわせて働く場合もある。主に時給制。専従、非常勤職員とも呼ばれる。 | 「非正社員」と総称されるパート、アルバイト、契約、派遣社員など | |
出向職員 | 自治体の職員や企業の社員などで出向、派遣で活動している者。出向元の仕事を兼務している場合もある。賃金支払いは出向元の場合が多い。 | 「出向社員」 | |
有償ボランティア | 経費や謝金の支給を受ける者。大きく次の3通りが考えられる。 1)交通費など活動経費の実費支払いを受ける者 2)活動経費として一定額の支給を受ける者 3)謝礼的な金銭の支給を受ける者 この他に海外派遣などで、生活費などの支払いを受ける者も少数存在する。 | ☓ | |
無償ボランティア | 役員 | 有給の役員と同様。理事長、理事、監査役など。専従で熱心に活動する者もいれば、理事会のみ出席する者もいる。 | ☓ |
事務局ボランティア | 比較的長時間活動し活動の中心となるスタッフで、主に事務局の役割を担う | ☓ | |
その他ボランティア | 依頼された場合など不定期に活動する者。事務局ボランティア以外のボランティア。 | ☓ |
参照: http://www.jil.go.jp/institute/reports/2006/documents/060.pdf (P.8)
まとめ
2017年3月現在、日本国内には5万以上の認定NPOが存在しています。そして、さまざまな課題を、独自の視点で解決しようと活動しています。NPOには、有償でボランティアとして参加するという方法があります。
「働き方改革」が推進され、ビジネスパーソンの「副業」が原則OKの流れになりつつある今、有償ボランティアを副業先の選択肢のひとつに入れることは、合理的です。
ただし「有償ボランティア」募集とうたって、実際は低賃金労働者を募集しているだけの組織もあるので、注意が必要です。
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