アスベスト(石綿)による労災と、労働安全衛生法について [2017年度版]

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

厚労省・労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令のパンフレットより

アスベスト(石綿)は極細繊維素材で、熱、摩擦、酸やアルカリに強く丈夫で変化しにくいため、かつて日本をはじめとする世界中で建材や摩擦材、断熱材に利用されてきました。
 

しかし肺がんや中皮腫を発症する発がん性があることが分かり、1975年に吹き付け作業を原則禁止、1995年に茶石綿(アモサイト)と青石綿(クロシドライト)の製造等が禁止、2004年に白石綿(クリソタイル)の製造が禁止となりました。2006年には代替できない一定の適用除外製品等を除き、石綿および石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての製造等が禁止されています。
 

そのアスベスト(石綿)を仕事中に吸い込んだ事が原因の労災件数について、2016年度の速報値を厚生労働省が発表しました。申請と認定数は以下の通りです。

  • 労災申請:1106件(同43件増)
  • 労災認定:981件(前年度比12件増)

今回の記事では、アスベスト(石綿)による労災の現状と、労働安全衛生法・関連法令の最新情報を紹介します。
 

業種別の状況

業種別の支給決定状況(2016年度)

2016年度のアスベスト(石綿)による労災・業種別支給決定状況(速報値)は上記グラフのような状況です。
建設業が55%と最多で、製造業(36%)、運輸業(3%)が続いています。

都道府県別の状況

労災保険法に基づく保険給付
労災保険法に基づく保険給付・2016年度で件数の多い都道府県は以下のとおりです。

都道府県請求数支給決定数
東京137118
大阪9895
北海道8380
神奈川10077
兵庫8472

 

石綿救済法に基づく特別遺族給付金
石綿救済法に基づく特別遺族給付金・2016年度で件数の多い都道府県は以下のとおりです。

都道府県請求数支給決定数
大阪93
埼玉44
愛媛21

 

出典

石綿関連の労働安全衛生法、衛生法令の最新情報

労働安全衛生法関係の法令等(石綿)

これまで見てきたようにアスベスト(石綿)は、禁止されてからかなり期間が経過しているにも関わらず、いまだに労働安全衛生において大きな懸念となり続けています。
 

厚生労働省のWebサイトでは、アスベスト(石綿)関連の情報を大幅に追加して注意喚起をしています。

分かりやすいパンフレットも多数公開されていますので、ご懸念のある方は下記Webサイトを参照してください。