給与計算実務能力検定試験ほか、人事労務の資格まとめ
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
日ごろ人事・労務業務に携わっているみなさん。業務に必要な知識をどのように身に着けていますか? 漫然と勉強するよりも、なにか目的を持って学ぶのも知識が定着するために有効な方法です。「目的」としていちばん身近なのが資格。今後のキャリアアップや転職も見据えて考えたいところですね。今回は人事・労務関連の資格をピックアップしてみました。
※関連記事:[社労士試験] 2016年の合格者が語る、合格までの道のり。
ワークルール検定 〜働く人を守る法律に関する知識を習得〜
「ワークルール検定」は2013年から始まった新しい資格。一般社団法人日本ワークルール検定協会が認定する民間資格です。
どんな資格?
「働くときに必要な法律やルール」=ワークルールに関する知識を習得できているかを検定します。
資格の種類は、労働に関する法律の初歩的な知識の習得をめざす「初級」、初級合格者を対象とした「中級」の2種類。初級は受検資格不問で、人事・労務に携わる人はもちろん、アルバイトやパートなども含め、働く人すべてが知っておくべきワークルールの習得が目的となっています。「中級」を受検するには、初級検定の合格が必要になります。
アピールポイントは?
労働基準法をはじめとする、人事・労務関係の法律やルールに関する知識を身に着けていることの証明になります。初級は法律知識を問うものが中心ですが、中級は実際の職場での事例にからめた設問が中心になります。中級で問われる内容は、人事・労務業務にも直結したものなので、資格をアピールするなら中級に合格しておくことをおすすめします。
難易度は?
初級の合格基準は正答率70%以上。検定は一年に2回ありますが、2015年5月実施では合格率74.7%だったのに対し、11月実施では48.51%でした。
中級も合格基準は正答率70%以上。検定は年1回で、2015年5月実施での合格率は、48.6%でした。 協会が発行している公式テキストなどを使い、しっかり対策を立てましょう。
資格取得に必要なお金は?
- 検定料:初級…2900円(税込)
- 中級…4900円(税込)
学習に必要な費用:通信講座や専門学校内の講座はありません。公式テキスト・問題集を使い、独学で学習を進めましょう。
- 初級: 約3000円。公式テキスト『ワークルール検定 初級テキスト』(旬報社、本体1200円+税)や、『ワークルール検定 問題集』(旬報社、2016年度版は本体1300円+税)で出題範囲をカバーできます。
- 中級: 公式テキスト『ワークルール検定 中級テキスト第2版』(旬報社、本体2400円+税)や『ワークルール検定 問題集』(旬報社、2016年度版は本体1300円+税)で学習しましょう。また、以下の書籍もおすすめです。- 『ワークルールの基礎 しっかりわかる労働法』(道幸哲也、旬報社、本体2000円+税)- 『おしえて弁護士さん 職場のギモン48』(開本英幸・淺野高宏編、旬報社、本体1800円+税)
検定会場・方法は?
- 受検資格: 初級…なし、中級…初級合格者
- 検定日程: 毎年5月、11月(初級のみ)
- 検定方法: マークシート方式の筆記試験。初級45分間、中級80分間
- 検定会場: 北海道、岩手、東京、岐阜、京都、広島、高知、大分など全国12か所
- 申込期間: 検定日の約1週間前まで
詳しくはワークルール検定の公式HPでご確認ください。
給与計算実務能力検定試験 〜給与にまつわる税と社会保障に関する知識を習得〜
内閣府認可の一般財団法人職業技能振興会が認定する公的資格。この資格も2013年から検定試験が開始されました。
どんな資格?
企業等では、給与計算は必要不可欠です。単純に給与を計算するだけでなく、社会保険料の計算や源泉所得税の計算、年末調整まで幅広い専門知識が必要です。給与計算業務に関する知識と実務能力を測定するのが、この検定試験です。
1級と2級があり、2級は一般職員として通常の月次の給与計算業務をこなせるレベル、1級は給与計算業務のリーダーとして管理ができるレベルが求められます。なお資格取得後は、2年に1回有料(5,000円)で更新する必要があります。
アピールポイントは?
履歴書だけでは分かりにくい、給与計算の実務能力がどれぐらいあるかを示すことができるため、企業等への就職には有利に働きます。各級でアピールできる点は以下のとおりです。
2級
- 実務上の基礎となる労務コンプライアンスについての正しい理解がある
- 基本的な給与計算の計算を行い、明細を作成出来るレベルつまり、一般職員として、通常の月次の給与計算業務をこなせる者である
1級
- 労働法令や税務について正しく理解し、その企業ごとの複雑な給与体系にも対応できる
- 年末調整を含め、年間を通じて給与計算に関するすべての業務を行うことができる
- 社会保険や税務等の計算だけでなく手続きまで行うことができ、給与計算業務のリーダーとして管理できる者である
難易度は?
実務ができることを目的としている資格試験のため、難易度はあまり高くなく、1・2級ともに7割以上得点を獲得すれば合格です(1級は、加えて計算問題の正答率6割以上が必要)。合格率は1級、2級とも毎年60%~70%程度です。どちらも1回の試験あたり600人~700人程度が受験し、合格者は400人~500人程度です。
資格取得に必要なお金は?
受験料:1級10,000円 2級8,000円。なお、合格後認定料が2,000円かかります。
学習に必要な費用:普段、給与計算実務に携わっている人なら、特に専門学校の講座などを受ける必要はありません。公式テキスト1級、2級(どちらも2,000円+税)で勉強すれば十分でしょう。専門学校の受講料は、専門学校により異なりますが1万円~3万円程度です。
検定会場・方法は?
- 受検資格: なし
- 検定日程: 3月・11月(3月は2級のみ)。合格発表は試験実施日からおよそ6週間後。
- 検定方法: 1・2級ともにマークシート式筆記試験、120分間
- 検定会場: 東京・大阪など全国主要都市(毎年会場は変わります)
詳しくは職業技能振興会のHPをご確認ください
中小企業診断士 〜中小企業の総合アドバイザー〜
中小企業診断士は中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家で、国家資格です。
どんな資格?
この資格を持っていると、財務や労務、生産、事務といった領域において、企業の成長戦略策定や経営の合理化などのコンサルティング業務に当たることができます。また、企業が実施する研修や教育訓練の社外講師として講義や講演を行います。
アピールポイントは?
会社と行政・金融機関等を繋ぐパイプ役として重宝されるため、この資格を持っていると社内でも活躍できます。また、一般企業や経営コンサルタント会社への転職にも有利ですし、独立開業のチャンスもあります。なお、資格を維持するため、5年ごとに資格の更新登録を行う必要があります。
難易度は?
現在、国内で登録している中小企業診断士は約23,000人。試験の難易度はやや難しめです。試験は1次試験と2次試験があり、どちらも合格率はここ数年20%代で推移しています。
1次試験は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」など7科目。3年以内に全科目に合格することが1次試験の合格条件となります。
2次試験は、中小企業の診断や助言に関する実務の実例について出題されます。その後、口述試験で中小企業の診断および助言に関する能力が試されます。
これらの試験をパスしたのち、試験合格後より3年以内に実務補習(15日間または8日間×2)を行い、ようやく中小企業診断士として登録することができるのです。
合格基準
- 1次試験: 総点数の60%以上の得点率で、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと。また、科目合格(後述参考)については、満点の60%以上の得点率で合格となります
- 2次試験: 総点数の60%以上の得点率で、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと。また、口述試験(後述参考)については、評定が60%以上の得点率で合格となります
資格取得に必要なお金は?
受験料
- 1次試験: 13,000円
- 2次試験: 17,200円
学習に必要な費用:中小企業診断士試験に独学で合格するのはなかなか難しいので、専門学校などの講義を受講する必要があります。受講料は、専門学校によっても異なりますがおおよそ25万円前後です。
試験会場・方法は?
- 受検資格: 1次試験は制限なし。2次試験は1次試験合格者
- 試験日程: 1次試験…8月上旬ごろの2日間、2次試験…10月下旬ごろ、口述試験…12月中旬ごろ
- 受付期間: 1次試験…5月上旬~下旬まで、2次試験…8月下旬から9月中旬まで
- 受験会場: 1次試験…札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇、2次試験…札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡
- 合格発表: 1次試験…9月上旬、2次試験…12月上旬、口述試験…12月下旬
詳しくは一般社団法人中小企業診断協会のHPで確認してください
社会保険労務士 〜人事・労務のエキスパート〜
社会保険労務士(社労士)とは、労務に関する法律や労務管理の知識を持ち、企業等に適切な労務管理や労働社会保険に関する指導を行う専門家で、国家資格です。
どんな資格?
社労士は次の業務を行うことができます
- 労働保険、社会保険の新規加入手続やそれぞれの各種申告手続一般
- 労務管理や社会保険など、人事・労務管理全般に関する指導、助言
アピールポイントは?
社労士は人事・労務にかかわる業務について、指導的立場になるため企業の人事・労務部門の要となります。一般企業はもちろん、社会保険労務士事務所へも転職ができます。また、独立することもできます。
難易度は?
社労士は全国で約40,000人程度います。難易度はやや難しめ。例年、合格率は5%~10%ぐらいの間で推移し、おおよそ7%です。年々難しくなっており、2016年は4.4%(受験者数39,972人、合格者数1,770人)でした。
試験科目は「労働基準法及び労働安全衛生法」「雇用保険法」「健康保険法」など8科目。それぞれに「選択式試験」(正しいものまたは誤っているものを選ぶ)と「択一式試験」(穴埋め問題)があります。
【 配点 】:
- 選択式試験: 各問1点とし、1科目5点満点、合計40点満点
- 択一式試験: 各問1点とし、1科目10点満点、合計70点満点
【 合格基準 】:次の2つの条件を満たしていることが必要です。
- 選択式試験: 得点23点以上かつ各科目3点以上(ただし、労務管理その他の労働に関する一般常識及び健康保険法」は2点以上)である
- 択一式試験: 総得点42点以上かつ各科目4点以上(ただし、労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識、厚生年金保険法及び国民年金法は3点以上)である
資格取得に必要なお金は?
- 受験手数料: 9,000円
- 学習に必要な費用: 社労士試験は独学で合格するのは難しいため、専門学校などの講座を受講する必要があります。受講料は専門学校によって異なりますが、おおよそ20万円前後です。
試験会場・方法は?
- 試験日程: 年8回
- 受験会場: 東京、大阪など全国主要都市
- 申込期間: 4月中旬から5月31日まで
- 受検資格: さまざまな規定があります。公式HPで確認しましょう。
詳しくは社会保険労務士試験オフィシャルサイトのHPで確認してください
まとめ
今回は4つの資格をご紹介しました。民間資格(団体や企業が認定する)、公的資格(管轄省庁や大臣が認定した審査基準をもとに民間団体が試験を行うもの)、国家資格(法律に基づき、国や国から委託受けた機関が認定するもの)の中からそれぞれピックアップしましたが、一般的に国家資格は難易度が高く、独学では難しい傾向にあります。しかし、受験資格が設定されていない民間資格や公的資格でも、日々の業務や勉強を怠っては合格できません。比較的合格率が高く、仕事と無理なく両立できる資格からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
※関連記事:[社労士試験] 2016年の合格者が語る、合格までの道のり。
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