フレックスタイム制導入の相談|契約解除0社労士・寺瀬学の「人事労務相談BEST5」 [第2回]

執筆: 寺瀬学

フレックスタイム制導入の相談
みなさんこんにちは。S&Tプロフェッショナル社会保険労務士法人の寺瀬学です。
 
人事労務でご相談の多いトピックをご紹介するシリーズ。第2回目のトピックは「フレックスタイム制導入」についてです。
Gaku Terase

 

契約解除0社労士・寺瀬学の「人事労務相談BEST5」目次

  1. 休職期間満了時に関する相談
  2. フレックスタイム制導入の相談
  3. 休職の従業員が復職後また休職。期間はどう通算する?
  4. 副業で働いた時間も通算?労基法38条との関係

 

「フレックスタイム制」を導入しようとする会社が増えてきている

現在、政府主導により「働き方改革」の取組みが強力に推進されています。そのテーマには、長時間労働の是正をはじめ様々なものがありますが、その一つに柔軟な働き方の実現も掲げられています。
 

今回取り上げるフレックスタイム制も柔軟な働き方の一つであり、この制度を活用しようと考えている会社も多いようです。
 

私どもでも、顧問先のご担当者から「フレックスタイム制の導入をしたいと思うのだけれども、導入するにはどうしたらよいか。」というご相談をよく受けるようになってきました。
 

フレックスタイム制は、就業規則にフレックスタイム制を適用する旨を定め、必要な事項を定めた労使協定を事業場の過半数代表者または過半数組合と締結することにより導入することができます。
 

したがって、私どももその導入方法についてご案内することになりますが、よくよくご担当者のお話を聞いていると、フレックスタイム制について誤解されているケースが多くみられます
 

フレックスタイム制を誤解して導入しようとしていた例

実際に相談があったケースで、次のようなものがありました。
 

「フレックスタイム制であれば、ある日に1時間残業させ9時間勤務したとしても、その翌日に1時間遅れて出社し定時まで勤務(7時間勤務)させればよいと聞いた。導入の方法について教えてほしい。」
 

そこで、私どもから「フレックスタイム制は、始業時刻は本人が決めることになるので、その翌日に、例えば2時間遅れて出社してくることもあるわけですが、それはどうですか?」と伺うと、ご担当者から「それでは困る」といった答えが返ってきました。
 

そもそも、フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を従業員本人が決めるもので、勤務時間については清算期間(通常1ヵ月)内で勤務すべき総労働時間数を勤務すればよい、という制度です。
 

そうしますと、先ほどの相談のケースでは、勤務時間の考え方としては間違っていないのですが、会社が出社時刻を指示するのであれば、フレックスタイム制とは言えないことになります。
 

より詳しく話を伺うと、どうやらその会社では、フレックスタイム制での時間外残業の取り扱いに魅力を感じた部分もあったようです。
 

といいますも、フレックスタイム制では、清算期間(1ヵ月)に実際に勤務した実勤務時間数が、勤務すべき総労働時間数を超えた場合に、その超えた時間が時間外残業時間となります。したがって、1日の勤務時間が8時間を超えても、あるいは週の勤務時間が40時間を超えたとしても、総労働時間数の範囲内であれば時間外残業は発生しないこととなるからです。
 

また、時間外残業の集計作業の面でも、清算期間(1ヵ月)の合計時間をもとに時間外残業時間が算出することができるので、集計作業が容易であることも理由の一つであったようです。
 

しかしながら、フレックスタイム制は、従業員が始業・終業時刻を決めるがゆえに、従業員の一人ひとりが計画的に勤務しなければ時間外残業がかえって増える可能性があります。
 

ご相談された会社には、フレックスタイム制にはそうした面があることをお伝えすると、導入の採否について再度検討することとなり、最終的には導入を見送ることとなりました。
 

フレックスタイム制を誤解して運用していた実例

もう一つの実例ですが、すでにフレックスタイム制度を導入している会社において、始業・終業時刻を8:00-17:00、9:00-18:00、10:00-19:00、11:00-20:00とした4つの勤務パターンを従業員が選択して勤務する運用を行っているところがありました。
 

この運用は、従業員は始業・終業時刻を選択することができるのでフレックスタイム制の趣旨に合致しているようにみえますが、これでは与えられた複数のパターンから選択することしかできませんし、1日の勤務時間は8時間に固定されたものであることから、フレックスタイム制として正しい運用にはあたりません。これは、いわゆる時差出勤制度といわれるものです。
 

 なお、フレックスタイム制では、従業員が全くの任意で始業・終業時刻を決められるようにしなければならないかといいますとそのようなことはありません。必ず勤務しなければならない時間帯としてコアタイムを、勤務することができる時間帯としてフレキシブルタイムを設定することができます。
 

そこで、この会社においては、実情をふまえて、コアタイムとフレキシブルタイムを設定することにより運用を見直すこととしました。
 

フレックスタイム制導入前と導入後
 

まとめ

今回、2つの実例をご紹介しましたが、フレックスタイム制の趣旨に照らしますと、仕事と生活の調和を図ることを目的として導入するもので、日ごとに繁閑があって、個々の従業員の業務の遂行方法に裁量性がある職場において適した制度であるといえます。
 

したがって、私どもではフレックスタイム制を導入したいとのご相談の際には、その会社の状況をふまえ、フレックスタイム制の本来の目的とあり方に照らして採否についてアドバイスしています。また、すでにフレックスタイム制を導入している会社においては、運用に問題があれば、正しい運用への改善、または場合によっては制度廃止のご提案をすることもあります。
 

皆さまにおかれては、フレックスタイム制の導入を検討する際に、または既に導入している場合にはその運用状況を確認する際のヒントにしていただければ幸いです。
 

それでは、次回またお会いしましょう。
 

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  2. フレックスタイム制導入の相談
  3. 休職の従業員が復職後また休職。期間はどう通算する?
  4. 副業で働いた時間も通算?労基法38条との関係

 

Profile

寺瀬学
寺瀬学
S&Tプロフェッショナル社会保険労務士法人・代表社員
1999年東京大学理学部卒。日商岩井㈱(現双日)、㈱ヒューマンテック経営研究所(社会保険労務士法人併設)を経て、2015年3月に当法人を設立。著書に「さまざまジョブリターン制度」(経営書院刊「進化する柔軟な雇用管理システム」所収)、「単身赴任の対応と支援策」(経営書院刊「人事異動・転勤支援ハンドブック」所収)ほか。