求人票に苦情が少ない公務員・金融保険業。逆に多いのは?
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
求人票に書かれた労働条件と実際の労働条件の相違についてハローワークが取りまとめ、公表しました。
それによれば、求人票に関する申出・苦情は年間約1万件あり、産業ごとに数値に変化があるとの結果が出ています。
今回は、申出・苦情の内容、産業ごとの数値比較、ハローワークの対応についてご紹介します。
相違関連の申請数
2016年度にハローワークへ提出された求人票の記載内容と、実際の労働条件が相違していると申出・苦情のあった件数は9,299件でした。前年度(10,937件)より15%減少しています。
申出・苦情等の内容
内容別でみると、賃金に関する申出・苦情が最も多く、全体の1/4を突破しています。次いで、職種・仕事の内容、選考方法・応募書類となっています。
- 賃金:2,636件(28%)
- 職種・仕事の内容:1,311件(14%)
- 選考方法・応募書類:1,065件(11%)
- 休日:936件(10%)
- 雇用形態:729件(8%)
- 社会保険・労働保険:646件(7%)
※1件の申出等で複数の内容を含むものは、それぞれの内訳に計上しています。
申出・苦情等の要因
申出・苦情は、記載された内容の相違だけではなく、雇う側の説明不足や、誤解などにより発生します。
- 求人票の内容が実際と異なる:3,608件(39%)
- 求人者の説明不足:2,335件(25%)
- 言い分が異なる等により要因を特定できないもの:915 件、10%)
- 求職者の誤解:576件(6%)
- ハローワークの説明不足:116件(1%)
※1件の申出等で複数の内容を含むものは、それぞれの内訳に計上。
産業別件の申請数
産業(業界)別に、申出・苦情の数はどのように異なっているのでしょうか。下記図は、今回発表があった申請数、及び産業別従業員数を元にして、業界別申請・苦情数を比較しています。
公務や、金融・保険業などの比率が低く、不動産業、物品賃貸業、その他が高くなっています。
# | 産業名 | 申請数 | 従業員数 | 申請/従業員数 |
---|---|---|---|---|
1 | 公務 | 74 | 2300000 | 0.0032% |
2 | 金融業、保険業 | 65 | 1630000 | 0.0040% |
3 | 農林、林業 | 116 | 2250000 | 0.0052% |
4 | 教育、学習支援業 | 178 | 3100000 | 0.0057% |
5 | 製造業 | 1337 | 10570000 | 0.0126% |
6 | 複合サービス事業 | 78 | 580000 | 0.0134% |
7 | 卸売業、小売業 | 1505 | 10680000 | 0.0141% |
8 | 宿泊業、飲食サービス業 | 543 | 3830000 | 0.0142% |
9 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 347 | 2390000 | 0.0145% |
10 | 建設業 | 730 | 4930000 | 0.0148% |
11 | 情報通信業 | 327 | 2160000 | 0.0151% |
12 | 学術研究、専門・技術サービス業 | 376 | 2400000 | 0.0157% |
13 | 医療、福祉 | 1514 | 8270000 | 0.0183% |
14 | 運輸業、郵便業 | 728 | 3330000 | 0.0219% |
15 | 不動産業、物品賃貸業 | 273 | 1180000 | 0.0231% |
16 | サービス業(他に分類されないもの) | 1108 | 4190000 | 0.0264% |
※サービス業(他に分類されないもの)に含まれる産業:電気・ガス・熱供給・水道業、分類不能の産業、鉱業、採石業、砂利採取業、漁業
どのように対応されたか
求人票に書かれた条件と、実際の労働条件の相違について、労働者はハローワークに相談します。ハローワークは相談があった際にどう対応するのでしょうか?
ハローワークはまず事実確認を行い、その結果に従い必要な是正指導を行います。また、法違反の可能性がある場合は、当該求人の職業紹介の一時保留や求人そのものを取消します。
ハローワークによる対応
- その他(求人票が無効等):1,789件(50%)
- 求人票の内容を変更:982件(27%)
- 職業紹介の一時保留:330件(9%)
- 求人取消:311件(9%)
- 求人票に合わせ労働条件等を変更:196件(5%)
求人票の相違に関する相談・対応フロー
ハローワークは、電話や直接訪問による相談を受け付けています。電話番号は下記となります。
ハローワーク求人ホットライン
- 03-6858-8609 (全日8:30〜17:15)
まとめ
ハローワークが先日発表した、2016年度の求人票に関する申出・苦情は約1万件ありました。求人の際にトラブルを避けるためには、求人票を分かりやすく記載するだけでなく、説明する際にも細心の中を払う事が大切です。応募者に誤解を生じさせてトラブルになった場合、労使双方にとって時間や費用の浪費となります。
出典・参考情報
- 平成28年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数を公表します
- 平成 28 年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数
- 「求人票の内容が実際と異なる」件数(全国計)について
- ハローワークにおける求人票と実際の労働条件の相違への対応
- 労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)5月分 (2017年6月30日公表)
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