死亡災害が対前年で9.6%増加、特に8月は猛暑が影響か。

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

2017年1月〜8月の労働災害による死亡者が、対前年比で9.6%増加したため、厚生労働省は「職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請」を労働災害防止団体、関係事業者団体(約250団体)に対して行いました。
 

業界別:死亡労災と、休業4日以上の死傷災害

カバー図は、業界別(産業別)の、死亡労災数と休業4日以上の死傷災害数です。
 

死亡者数は、全体で557人。前年同期に比べ9.6%(49人)も増加しています。業界別では、林業(35.0%)、陸上貨物運送事業(30.2%)、建設業(20.0%)で大幅な増加が見られます。
 

休業4日以上の死傷者数は、全体で66,485人。前年同期に比べ0.9%(600人)増加しています。業界別で見ると、第三次産業が2.0%(583人)、陸上貨物運送事業が3.9%(316人)増加していることがわかります。

月別の死亡災害状況

月別死亡災害状況

8月の死亡者数は66人。対前年同月比で、57.1%(24人)の大幅な増加となっています。

業界別:死亡労災の傾向と対策

傾向と対策

死亡者数が大幅に増加している業界に対し今回、厚生労働省は取り組むべきポイントを明示しています。

林業

  • 「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」に基づく対策の実施

陸上貨物運送事業

  • 「荷役5大災害防止対策チェックリスト」を活用した荷役作業での安全対策の実施
  • 「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施

建設業

  • 労働者の立ち入り制限や誘導員の配置など、車両系建設機械などとの接触防止対策の実施
  • 高所作業における作業床の設置、安全帯の着実な使用などの墜落・転落防止対策の実施
  • 「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施

「職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請」全文

職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請
 
労働災害の発生件数は、労使の皆様をはじめ、関係各位のご尽力により長期的には着実に減少してきており、特に死亡者数は、昨年は2年連続で過去最少となりました。
 

しかしながら、休業4日以上の死傷者数は、昨年は前年より増加し、平成29年も減少傾向がみられない状況です。また、平成29年は死亡災害が夏場に急増し、対前年比で9.6%(8月末現在)の増加となっております。
 

この傾向が続けば、死傷災害、死亡災害ともに前年に比べ増加という極めて憂慮すべき事態も十分想定されます。
 

特に、8月単月では、死亡災害は、前年同月比57.1%の大幅な増加となっており、ここ最近発生した死亡災害を個別にみると、基本的な安全管理の取組が徹底されていないことによるものが多数見られ、企業の景況感が改善する中、人手不足が顕在化し、安全衛生管理体制がおろそかになっている状況が懸念されます。
 

一方、第12次労働災害防止計画では、死亡災害、死傷災害ともに平成24年比で平成29年までに15%以上減少させることを目標としていますが、平成29年度が最終年度であり、上記の労働災害発生状況を踏まえると、相当の危機感を持って労働災害防止対策に取り組む必要があります。
 

労働災害は本来あってはならないものであり、特に死亡災害の撲滅を目指した不断の取組が必要です。また、労働災害のない職場づくりは、人材を確保・養成し、企業活動を活性化する上でも、大きなメリットをもたらします。事業者の皆様におかれましては、死亡災害の撲滅及び労働災害全体の減少に向け、基本的な安全活動の着実な実施・確認という原点に立ち返って企業の安全衛生活動を今一度総点検していただくよう要請いたします。
 

その上で、労使の皆様をはじめ、関係者が一体となって以下の取組を徹底し、労働災害防止に努めていただきますよう、併せて要請いたします。

  1. 安全作業マニュアルの遵守状況を確認するなど、職場内の安全衛生活動の総点検を実施すること
  2. 安全管理者、安全衛生推進者、安全推進者等を選任し、その職務を確実に遂行させるなど、事業場の安全管理体制を充実すること
  3. 雇入れ時教育等を徹底するなど、効果的な安全衛生教育を実施すること

 

平成29年9月22日
 

厚生労働省労働基準局
安全衛生部長 田中誠二

出典

 

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