障害者雇用率の引上げと税制優遇の最新情報 [2017年版]

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

障がい者手帳

ハローワークが、2016年度の障害者雇用の状況を公表しました。

  • 新規求職申込数:191,853件(対前年度比2.5%増)
  • 就職件数:93,229件(同 3.4%増)
  • 就職率:48.6%(同 0.4ポイント上昇)

新規求職申込数、就職件数、就職率とも前年比増となっています。

今回の記事では、障害者雇用に大きく影響を与える障害者雇用率制度と、障がい者雇用時の税制優遇を説明します。

 

障害者雇用率制度とは

事業主は、全労働者のうち一定率(法定雇用率)以上の身体障害者・知的障害者を雇用する義務があります。この義務は「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められています。

 

なお、「精神障害者」についての雇用義務は無いですが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したのと同じようにカウント可能です。

2013年4月1日〜2018年3月31日の間の民間企業の法定雇用率は2.0%で、2018年4月1日から2.2%に変更となります。

つまり、従業員を50人以上雇用している場合、障がい者を1名人以上雇用する必要があるということになります。

「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、法定雇用率は「労働者の総数に占める身体障害者・知的障害者である労働者の総数の割合」を基準として設定し、少なくとも5年ごとに、この割合の推移を考慮して政令で定めるとしています。

2013年(平成25年)4月1日に変更があったため、その次は2018年(平成30年)4月1日までに変更するというわけです。

参考:雇用率設定基準の計算式(一般民間企業向け)

  • 障害者雇用率 = 身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者及び知的障害者の数 / 常用労働者数 + 失業者数

特別なルール

  • 短時間労働者:1名を0.5名としてカウント
  • 重度身体障害者、重度知的障害者:1人を2人としてカウント
  • 短時間の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウント
  • 精神障害者は、雇用義務の対象ではないが、各企業の実雇用率の算定時には障害者数に算入することができる

特殊法人、国及び地方公共団体の場合は、一般の民間企業の率を下回らないよう定めることとされています。

障がい者雇用率の引上げ

先に説明したとおり、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、少なくとも5年ごとに雇用率を見直す必要があるとしています。これを受け厚生労働省は、2018年4月1日より雇用率を引き上げると公表しました。現在(2017/9/21)時点での予定は、以下の通りです。

障害者雇用率の引上げ予定

民間企業

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.0%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.2%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.3%

国・地方公共団体・特殊法人

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.3%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.5%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.6%

都道府県等の教育委員会

  • 2013年4月1日〜2018年3月31日:2.2%
  • 2018年4月1日〜当分の間:2.4%
  • (当分の間後〜2021年3月31日迄のいつか)〜:2.5%

障がい者雇用時の税制優遇制度

これまで説明したとおり、企業には一定の障害者雇用の義務がありますが、障害者雇⽤に積極的で、一定の基準を満たす企業には、以下のような税制優遇制度があります。

  1. 機械等の割増償却措置(法人税所得税
  2. 助成⾦の非課税措置(法人税所得税
  3. 事業所税の軽減措置
  4. 不動産取得税の軽減措置
  5. 固定資産税の軽減措置

 

(1)機械等の割増償却措置(法人税・所得税)

適用期限:〜〜2018年(平成30年)3⽉31日

次のいずれかの要件を満たす事業主が、減価償却を⾏う際、その事業年度、またはその前5年以内に開始した各事業年度に取得・製作、建設した機械や設備など(障害者が労働に従事する事業所にある資産に限ります)について、普通償却限度額に加えて、機械は24%、工場用建物は32%の割増償却をすることができます。

  1. 労働者の総数に占める障害者の割合が50%以上
  2. 雇用している障害者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障害者の割合が25%以上
  3. 法定雇⽤率を達成している事業主で、雇⽤している障害者数が20人以上であり、かつ雇⽤障害者に占める重度障害者の割合が50%以上

障害者が労働に従事する事業所にある資産」とは、以下の事です

  1. 障害者が労働に従事する事業所に設置されている機械及び装置
  2. 障害者が労働に従事する工場用建物及びその付属設備

 

(2)助成⾦の非課税措置(法人税・所得税)

適用期限:なし(恒久措置)

国や地方公共団体の補助⾦、給付⾦、障害者雇用納付⾦制度に基づく助成⾦の⽀給を受け、それを固定資産の取得または改良に使った場合、その助成⾦分については、圧縮記帳により損⾦算⼊(法⼈税)、または総収⼊⾦額に不算⼊(所得税)とすることができます。

障害者雇用納付⾦制度に基づく助成⾦とは

  • 障害者作業施設設置等助成⾦
  • 障害者福祉施設設置等助成⾦
  • 重度障害者等
  • 通勤対策助成⾦
  • 重度障害者多数雇⽤事業所施設設置等助成⾦

 

(3)事業所税の軽減措置

適用期限:なし(恒久措置)

  • 従業員割:事業所税の課税標準となるべき従業員給与総額の算定について、障害者に支払う給与総額を控除できます。資産割のみ以下の要件を満たす必要があります。従業員割には特に要件はありません。
  • 資産割:障害者を多数雇用する事業所の事業主が助成⾦の支給を受けて施設の設置を⾏った場合、その施設で⾏う事業にかかる事業所税について、課税標準となるべき事業所床面積の2分の1に相当する部分について控除できます。

資産割のみ、下記要件を満たす必要があります

  • 事業所の要件:雇用している障害者数が10人以上であり、かつ労働者の総数に占める障害者割合が50%以上

対象となる助成⾦

  • 雇用保険二事業に基づく「中⼩企業障害者多数雇⽤施設設置等助成⾦」
  • 障害者雇用納付⾦制度に基づく「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成⾦」

 

(4)不動産取得税の軽減措置

適用期限:〜2019年(平成31年)3⽉31日

障害者を多数雇用する事業所の事業主が助成⾦の支給を受けて事業用施設を取得し、引き続き3年以上、事業用に使用した場合には、その施設の取得に伴う不動産取得税について、取得価格の10分の1相当額に税率を乗じた額が減額されます。

対象となる事業所の要件

  • 雇用している障害者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障害者の割合が50%以上

対象となる助成⾦

  • 雇用保険二事業に基づく「中⼩企業障害者多数雇⽤施設設置等助成⾦」
  • 障害者雇⽤納付⾦制度に基づく「重度障害者多数雇⽤事業所施設設置等助成⾦」

 

(5)固定資産税の軽減措置

適用期限:〜2019年(平成31年)3⽉31日

障害者を多数雇用する事業所が助成⾦の支給を受けて事業用施設を取得した場合には、その施設についての固定資産税の課税標準は、当初5年度分に限り、課税標準となるべき価格から取得価格の6分の1に障害者雇用割合を乗じた⾦額が減額されます。

対象となる事業所の要件

  • 雇用している障害者数が20人以上であり、かつ労働者の総数に占める障害者の割合が50%以上

対象となる助成⾦

  • 雇用保険二事業に基づく「中⼩企業障害者多数雇⽤施設設置等助成⾦」
  • 障害者雇⽤納付⾦制度に基づく「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成⾦」

まとめ

事業主には、「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められた障がい者雇用義務があります。民間企業の場合、2013年4月1日〜2018年3月31日の間は法定雇用率:2.0%です。つまり、従業員を50人以上雇用している場合、障がい者を1名人以上雇用する必要があるということになります。

法定雇用率は、少なくとも5年ごとに見直す事が規定されており、2018年4月1日には2.0%から2.2%に変更されます。

出典・関連情報