「メンバーが欲しい制度」ではなく「メンバーに成長機会を創出する制度」を。Loco Partnersの人事制度を2時間インタビューした
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
26歳の新卒メンバーが上海の子会社社長に抜擢され、インターンから新卒入社したメンバーが会社の主力に成長し、全社合宿ではメンバーが感動して涙を流す。一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」を運営する株式会社Loco Partnersの人に関する仕組み作りはどのように行われているのか。組織デザイン部・部長の徳山 耕平さん2時間に渡ってインタビューをさせていただきました。
採用の仕組み
新卒1年目の社員でも面接官を担当する採用プロセス
採用とは最大の経営課題の解決であり、人事だけでなく全員が深くコミットすることが重要と考えています。そのため、各部門に採用活動の裁量を渡して、部門の判断を軸において、人を採用しています。そのためOKRとしても、採用人数を目標として設定し、部署と各部署の個人に割り当てています。
正社員の採用のフローは原則として3段階で行っています。1次面接から現場のメンバーを中心に面接官にアサインして、管理職じゃないと採用に関わってはいけないなどのルールは設けていません。むしろ真逆で、なるべく多くの現場社員が関わるようにしています。
1人1人がオーナーシップを持って、自分の能力を開発するだけではなく、組織・チームとして成長していくというマインドを大事にしています。
ケースバイケースではありますが、各部門の現場メンバーとリーダーを中心に1次面接を行った後に、2次面接や最終面接では部門長や代表の篠塚が担当しています。
弊社には約70名の正社員がいるのですが、そのうち新卒入社メンバーが15名くらいいます。1次面接の採用現場では、新卒1年目、2年目のメンバーも面接官を担当してもらっていて、年齢など関係なく、全員がオーナーシップを持って、組織を強くしていくことにコミットしてくれています。
これまで新卒で入ったメンバーの多くが、学生時代に弊社でインターンをし、入社するケースが多く、その場合は新卒入社時点で既に2年、3年くらい働いていることになります。創業初期くらいからインターンで大活躍しているため、会社のことを深く理解しており、採用の面接官として全く問題ないと考えています。
採用で深堀する「WHY」
対外的にもよく言っているのですが、スキル・ポテンシャル・ロイヤリティという3つの要素を採用の判断軸にしています。
スキルとポテンシャルも大事なのですが、特徴的なのがロイヤリティだと思います。ここでいうロイヤリティとは、「WHY」の部分です。何を目的として仕事をしているのか、それがLoco Partnersである必要性があるのか、という価値観のすり合わせに時間をかけて、採用判定をしています。
会社として目指している方向・ミッションに共感できることが何より大切だと考えています。
まだまだベンチャーなので、ハードなこともありますが、しっかりと会社のミッションを共感してもらっていれば、乗り越えられると思います。その人が何に熱意を注げる方なのか、その熱意を注ぐ方向が、会社と共通する方向にあるのかをじっくりお話しています。
あと、共通言語として採用の場面でも重要視しているのは「Locoship」と呼んでいる5つのバリューです。そのバリューに共感してもらえるか、ということも重要ですね。
- BE HONEST 「すべてに素直であれ」
- ONE TEAM 「ひとつのチーム」
- OWNERSHIP 「高い当事者意識」
- ROCKET SPEED 「最高速のアウトプット」
- FAIL HARDER 「大胆に失敗しよう」
採用において行う質問
原則として、固定の質問は設定していません。候補者の方に合わせて、質問も各チームで考えています。あえて、よく聞く質問を挙げるとすれば、先ほどのロイヤリティにつながる「なぜLoco Partnersなのか?」という深堀はやらせていただいていますね。
旅行が好きな方はたくさんいらっしゃると思いますが、旅行に関する事業を行っている会社はたくさんあります。そういった企業の中から、なぜLoco Partnersに共感するのかという部分を明確にしたいと思っています。
事業拡大のニーズに合わせて契約パターンも多様化
ほとんどが正社員やインターンですが、いろいろな働き方のニーズの中で契約社員・アルバイトという契約パターンも設けています。また規模が拡大していく中で人手不足になることもあるので、柔軟にリソースを調整できるように主婦の方などに、部分的に業務をお願いしたり、エンジニアでフリーランスの方を受け入れるケースも増えてきています。
また外国籍の方の採用も積極的に行っています。弊社はまさにインバウンドで日本にいらっしゃる方への価値提供を強みとしているので、海外の方が日本に観光でいらっしゃる時の橋渡しをしたいという想いを持つ方にジョインしてもらっています。色々な言語に対応出来るメンバーもいるので、海外の方へのサポート品質の向上に貢献してくれています。
オンボーディングの仕組み
2週間の入社時研修によるオンボーディング
組織デザイン部・部長の徳山 耕平さん
入社から2週間くらいかけて、入社時研修を受けてもらっています。主なコンテンツは
・人事部パートで、基本的な会社のルール、制度などを説明
・代表 篠塚から会社の歴史、大切にしていることを説明
などですね。
また会社内で人数・部署が増えてきているので、どの部署が何をやっているのかが見えづらくなっています。各部署責任者が自分達は何をミッションにやっているのか、どういうメンバーがいるのか、こういうことで困ったらいつでも相談してほしいということも入社時研修のコンテンツに盛り込んでいて、しっかり話をしてもらっています。
1コマ30分〜60分で、1日3コマくらいを2週間かけてやっています。
毎月新しく入ってくるメンバーがいるので、継続してやっていくとかなり大変なのですが、新しい仲間が気持ちよく働ける環境は重要なことなので、手を抜かずしっかり時間をかけてやっています。
新メンバー自ら組織に溶け込む仕組み「ウェルカムスタンプ」
メンバー間で仲良くなれる
独自の制度「ウェルカムスタンプ」を入社から2か月間限定でやっています。スタンプカードを渡して、新しく入ってくるメンバーにスタンプラリーをやってもらうイメージです。色々なミッションが項目として記載されています。
例えば
・20人以上とランチに行く
・飲み会の幹事を1回やる
・社内勉強会を1回実施する
などですね。
新メンバーを受け入れる側の働きかけも重要だと思いますが、一方で入ってくる側も積極的に動いていくことが大切だと思い、この制度を作っています。一応、期間内にすべてのミッションをクリアしてスタンプが集まったら、1万円分のReluxクーポンを付与しています。みんなと仲良くなれたら、旅行へお得にいけるクーポンももらえるという素晴らしい制度だと思います(笑)
異なる部署からアサインするメンター制度
メンター制度も設けています。新メンバーの配属部署とは異なる部署に所属する人をメンターとして2か月間アサインしています。メンターは月に1回ランチかディナーに行ってもらっています。その際には、事前にメンティーの所属部署の上長などに現状のパフォーマンスやメッセージングしておきたいことなどをヒアリングして、ランチ・ディナーに臨んでもらっています。
メンターのアサインは人事が草案を作り、現場のリーダーなどに意見をもらって決めています。
草案を作成する際には、今後のことを考えた業務上の連携を意識したり、新メンバーが持つスキルや経験値に照らして、よりプラスになるようなメンターをアサインするように心がけています。
各部署内での研修も各自がプログラムを作って、運用してくれています。例えば営業チームであれば、営業として独り立ちするまでのプロセスを研修プログラムとして設計していて、Googleスプレッドシートで進捗状況などを管理してもらっています。
またメンター以外にも教育担当をアサインしています。新メンバーの配属先の部署内で1名アサインをしているので、実務レベルの相談、サポートをやってもらっています。
目標管理の仕組み
普段のコミュニケーションまで落とし込まれたOKR
目標の管理運用はOKRでやっています。OKRの設計は管理職以上で、全メンバーの個別目標までじっくり落とし込む作業をやっています。
マネージャー合宿をクォーターごとに1回開催しています。期初の合宿で、1年間の事業戦略とそれに基づきOKRを作り込む作業を、2日間で20時間くらいかけてやりました。全社目標から部署目標を作って、個人目標も全員分作り込んでいます。個人ごとの目標達成が、会社の目標にどのようにつながっているのか、しっかりと図としても作り込んでいます。
OKRは全員で話して作り上げられるものではないと思いますし、会社として期待する役割を伝える意味合いも込めているため、管理職以上で作り込んだものを個別に伝えていく方向で運用しています。ただ、実際にやりながら、現場の状況を見ながら変えていくことも都度やっていく必要はあります。
OKRの振り返りは週次で行っています。週に1回経営会議があって、その会議の内容自体がOKRをベースにしていますね。今OKRの数値部分はどうなっているのか、来週はOKRに貢献する施策としてどういうことをやるかということを話しています。
また個人でも、少なくともマンスリーで上長と1on1をして、OKRベースで状況を振り返っています。
目標と評価の関連性については、OKRとバリューで2軸の評価をしています。OKRの達成度がどうなっているのかという点と、バリューを体現する具体的な行為があったのかという部分を査定対象としています。
メンバーの能力開発の仕組み
事業を運営する上で必要となる資格取得に対して手当を支給しています。例えば旅行業の免許を取得した社員に対して、資格取得時に手当を支給しています。
またOFFJTとしては半年に1回全社研修を開催しています。前回は100名近い人数で、合宿を行いました。初日が研修で、2日目がアクティビティというプログラムでした。合宿初日は営業をストップして、金曜日から合宿に行きました。
全社合宿でのみなさんの写真
毎年テーマは変えているのですが、今回の1日目の研修でやったことは、会社のミッション・ビジョンを起点として、部署ごとのミッション・ビジョンに落とし込んで、さらに個人まで落とし込むという作業をやりました。組織の方向性と個人の方向性を揃えることに時間をかけました。時間をとって「なぜここで仕事をするのか」というWHYの部分をしっかりと深堀する作業をやったおかげで、現時点の仕事がなぜ必要なのか?という声が上がることがほとんどありません。
2日目のアクティビティは人事部以外の部署から幹事を決めて、何をするのか決めてもらいました。今回は箱根散策を行いました。部署ごちゃまぜで参加者全員を5名ごとのチームに分けて、それぞれのチームに制限時間まで箱根を散策してもらいます。最後に箱根の魅力を見つけて、チームごとにムービーを作ってもらうというプログラムでした。
メンバー間で交流する仕組み
自然発生的な部活チーム
非公式なものだと、部活があります。フットサル・バスケ・カート・バンドなどメンバーが自主的に仲間を募って、運営しています。会社として金銭的な支援は特にしていないです。自由で主体的にこういった組織が活動している方が健全かなと思い、金銭的な支援は行っていません。今後部活が活発になって、大会に出るなどの状況が発生すれば、支援体制なども整えるかもしれません。
月次締め会
月次の締め会の様子
月次の締め会をやっていまして、前半真面目パート、後半が懇親会となっています。
前半では、会社からお知らせを周知したり、各事業部長からサマリー情報を2~3分で話してもらう形で、各事業部の成績を全員で共有しています。
その次に、代表の篠塚からよもやま話をしてもらっています。経営の数値とか細かい話ではなく、篠塚が今見ている風景や時代の動き、経営で大事だと思うことなどを共有してもらっています。
そのパートが終わった後に、全体でのパネルディスカッションがあります。各事業部長や篠塚が前に立って、全メンバーから質問を受け付けて、リアルタイムに回答しています。
このパネルのいいポイントは、その場で生の声を聞くことができるので、文章で内容を配信するよりも、納得感や信頼感が高まることです。
締め会の後半ではみなさんでお酒も飲むとのこと
後半の懇親会では、営業部隊など全国を飛び回っていて普段なかなか顔を合わせる機会のないメンバーも部署を超えて、交流することができます。オフィスでお酒も出して、みんな本当に盛り上がるのですが、ちょっと盛り上がりすぎて、遅くまで飲んでるメンバーもいるので、今後は少し調整をしようかなという案もあります(笑)
月締め会とは別に、クォーター終了月にも締め会をやっており、内容をさらに濃密にしています。場所もオフィスではなく、別にお店や研修施設を借りるなど、貸切にしてやることもあります。事業部ごとの数値報告もより細かく話してもらったり、研修などのコンテンツもくっつけてやっています。
あと交流する仕組みとして、忘年会や新年会にちゃんと幹事をアサインして、コンテンツを企画してもらっていますね。
労働時間・働き方
10:00~19:00の定時勤務にしていますが、自由な働き方はある程度許容しています。
病院などそういった個人的事情には配慮しています。
ただ権利と義務の考え方で、信頼関係ができていない中で、いつも外で仕事するなどは原則として認めていません。
またフルリモートも原則禁止にしています。組織が急拡大する中で、部署を超えて連携をしていく必要があるので、そういった信頼関係を築きづらくなる仕組みは適さないかなと思います。時短勤務などは一部始まっていて、個別の事情を考慮してやっています。
インセンティブ・モチベーション
ピアボーナス
Uniposをピアボーナスとして導入して使っており、週に400ポイントをメンバー間で送ることができるようになっています。1ポイントあたり、3円分のReluxクーポンを提供しています。
金額が小さいことが逆にいい効果を生んでいて、もし毎月数万円だと結構慎重になってしまいますし、不正なども起こるリスクもあります。小さい金額だからこそ感謝を伝えるハードルが下がっていると思います。利用状況としては、97%くらいのメンバーが毎月使ってくれています。
家賃補助
オフィスの近所に住んでいる社員に対して一律3万円を支給しています。この手当の効果もあって、全社員の30%くらいの社員は近距離に居住しています。
MVP
月次・クォーター・通期の単位で、全社からMVPを選出して表彰しています。
クォーター・通期のMVPと表彰は締め会や全社合宿などでしっかり表彰しています。全社合宿で、通期のMVPを発表した際にはとても感動的なイベントになりまして、涙を流しているメンバーもたくさんいました。
全社合宿での写真
MVPの選び方は、全メンバーからの推薦をベースにしています。誰を推薦し、なぜ推薦するのかという理由を定量的情報と定性的情報で記述して投票してもらいます。ただ完全民主主義ではありません。
完全に投票だけにしてしまうと、目立つ成果を上げたメンバーに票がかたまってしまいます。もちろん目立つプロジェクトも素晴らしい成果ではあるのですが、一方で地道に成果を出し続けているメンバーもたくさんいるので、そういったメンバーに光をあてられるように、篠塚を含む各部門長の合議で決めています。
あと営業チームでは、目標の達成度に応じてインセンティブが設定されています。チームと個人それぞれに目標があり、それぞれにインセンティブがあります。チーム目標も個人目標も両方とも達成した場合には、両方のインセンティブが支給されます。また細いところですが、営業チームのリーダーはチーム目標によるインセンティブの方が比率が高くなっていたりもします。
その他の福利厚生では、スタディー支援という制度がありまして、書籍などを自由に購入できる制度があります。一応会社の資産とするので、読み終わったら会社の本棚に置いてもらっています。結構活用されていますね。
本に関連する余談ですが、今年の新卒メンバー5名に対しては、代表の篠塚が課題図書を毎月設定していて、感想・学びなどを毎月レポートしてもらったり、読み合わせ会などもやっています。本からもしっかりと学んでいく文化も根付いていると思います。
年齢関係なく、新しいチャレンジを認めるカルチャー
私の例でいくと、当初Loco Partnersには営業で入社したのですが、法務、労務、総務、広報など本当に幅広くやらせてもらったりしました。手を挙げていけば、様々なことをやれる環境は間違いなくあると思います。
また上海の子会社の社長は今26歳なのですが、インターン時代からグローバル事業の立ち上げを任されていて、そのまま正社員になりました。台湾・香港・韓国で成果を出して、中国のマーケットを作るために、1人で上海で立ち上げをやってもらっています。年齢関係なく、責任あるポジションを任せるカルチャーがあることの代表例だと思います。
人事制度を作る時に大切にしているポイント
代表の篠塚がいつも言っているのは、「ここに集まってくれる人には、人一倍の成長をして欲しいという思いがある。」ということです。
新卒メンバーも優秀なメンバーが多く、大手企業・商社などでも全然活躍できるであろうメンバーが、その選択肢ではなく、Loco Partnersを選んで入社してくれている。
だからこそ、とにかく個人としての成長機会を作りたい。そのためにも事業を成長させていきたいと常に話しています。
私が入社したての頃、全メンバーの前で「自分がみんなにできる唯一のことは、みんなに成長の機会を作ることだ」ということを語っていて、この人はすごい経営者だなと思いました。
この篠塚の想いが、すべての人事制度の根底にあると思います。メンバーから「これが困っているから作ってください」と言われたから作るのではなく、その制度が、メンバー一人一人の成長につながるかどうかを軸に判断を繰り返していますね。
そんなLoco Partnersに興味を持った方へ
エンジニア、営業、PR、事業開発、マーケティング、人事などなど、業容拡大のために幅広く人材を募集中です。
まだまだ課題だらけでハードなことも少なくないですが、自ら成長機会を求めていける方にはとても良い環境だと思います。ご応募、お待ちしています!
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