職場の人間関係を良くするヒント 〜管理部門にできること〜

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

クラブ活動と応援団

会社で働く以上、職場の人間関係というものは避けて通ることができないものです。起きている時間の内、ほとんどの時間を過ごす職場における人間関係は、労働者の精神面に非常に影響し、仕事に対するパフォーマンスにも影響を及ぼします。

職場の人間関係に悩み、ストレスを抱えてしまい、それが離職につながることもあります。厚生労働省の公表している「平成28年上半期雇用動向調査結果の概要」によれば、転職者の離職理由で「職場の人間関係が好ましくなかった」が男性で6.7%、女性で11.2%となっており、「定年・契約期間の満了」、「その他の理由」以外では、男性で4位、女性では2位の理由となっています。

「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、「賃金等の収入が少なかった」といった理由が毎年上位を占めていますが、それらの基本的な労働条件に次いで、人間関係が働く上で重要な点になっていることが分かります。

では、管理部門として職場の人間関係を良くしていくためにどんなことができるでしょうか。具体的に考えていきましょう。

職場の公式行事を開催する

昔は「飲みニケーション」と称し、仕事の後に上司が部下を連れて飲みに行くなどということが当たり前でしたが、昨今では若い人があまりお酒を飲まなくなっていたり、家庭を優先する人も増えてきていることから、そういったことをあまりしない職場も多いかと思います。

確かに、人それぞれの事情を考慮するとなかなか難しいことではありますが、職場以外の場所で職場の人と一緒に過ごすことによって緊張がほぐれたり、就業時間中は話しづらいことも話せるきっかけにもなります。

職場の公式行事として、新人歓迎会、納会、新年会など、節目の時に飲み会等を開催することは、職場の人間関係を円滑にするのに大いに役に立つと思います。

ただ、参加を無理強いしたり、酒席で性的な言動をするセクシャルハラスメントや、お酒が苦手な人に無理やり飲ませるなどのアルコールハラスメントは逆にトラブルの原因となりますので、十分に注意した上で開催しましょう。

個人のスキルアップにつながるような情報を提供する

忙しい職場では、日々の業務をこなすことに追われ、個々の労働者の状況に配慮する余裕がなくなってしまうことがあります。つい結果重視になり、個々人のためになるようなこと、個々人の能力を向上させることについてまでは考える余裕はないという職場も多いでしょう。

そういった職場の雰囲気はぎすぎすしたものになりがちです。しかし、個々の労働者のためになるような情報提供を積極的に行うことは、職場の人間関係の改善に効果的です。例えば、雇用保険には教育訓練給付といって、雇用保険加入者が、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合に、その払った経費の一部を支給してくれる制度があります。そういった情報を提供することによって、個々の労働者が興味を持っていたことに挑戦できたり、苦手意識を持っていることについて取り組むことで、状況を打開できるきっかけになるかもしれません。

個々の労働者のスキルアップを実現することは、職場全体のパフォーマンスを向上させるという意味でメリットがありますし、働くことに対する労働者のモチベーションをアップさせることにもつながります。個々人のためになるようなことを推奨してくれる職場に対しては、労働者からの信頼や好感が得られるので、帰属意識が高まり、職場の雰囲気も良くなると思われます。

社内のクラブ活動を支援する

仕事だけではなく、社内でその他の活動を行うことも人間関係を良くするのに効果的です。通常、職場の人間関係というと仕事しか共通点がないので、どうしても希薄なものになりがちです。

会社内に趣味のクラブやサークル等があれば、共通点が増えます。会社から活動をサポートするための補助金が支給されれば、様々な集まりが発生し、活動を活発にすることができます。仕事以外の活動を一緒に行うことによって、より親密さが高まり人間関係が良好になるので、仕事にも良い影響を与えるでしょう。

より自由な異動希望を出せる仕組みをつくる

異動希望というのは、時に本音で語りにくいことがあるものです。例えば、今とは全く異なる分野の部署を希望している場合などは、労働者とその直接の上司との間で意見が違ってくることが考えられます。また、本人が希望を出しても直接の上司が異動に関して大きな権限を持っている場合、本人の意思とは違ったキャリアを歩んでいくことにもならざるを得ません。希望外の部署で延々と納得のいかない仕事をさせられている職場の雰囲気というのは、決して良いものとは言えないでしょう。

一番の理想は、労働者本人が心から希望するキャリアを歩めることです。そのためにも、直接の上司の目に触れずに異動希望が出せ、また、決定権がより上の部署にあるような人事システムがあることが望ましいです。社内公募制度などがその例です。労働者が自身のキャリアに対し希望を持つことができれば、より生き生きと働ける職場になるでしょう。

副業を認める

一般的には、副業が禁じられている会社が多いと思います。しかし昨年12月、安倍晋三内閣は「働き方改革」により、厚生労働省の提示するモデル就業規則の副業についての規定を「原則禁止」から「原則容認」へ方向転換していくことを明らかにしました。一部の大手企業でも、副業を容認する会社が増えてきています。

このような流れの理由としては、優秀な人材が他社に流れることを防ぎたいという会社の意図があります。しかしそれだけではなく、副業を認めれば、職場の風通しがよくなり、自由な空気が生まれることにもなります。営業職であれば、業務を通して社外の様々な人と広く関わることができますが、社内勤務者にとっては、社内の人間関係が全てとなり、閉鎖的な空気になりがちです。そのような空気の中では、なかなか新しいアイディアが生まれにくかったり、職場の慣習に流され、現状に問題点があっても誰も指摘できずにそのままにしてしまったりといった弊害が起こります。

また、閉鎖的で密な人間関係は、社内いじめなどの人間関係のトラブルの原因にもなりえます。今の職場以外に別の職場を持ち、社外の様々な人達とビジネスコミュニケーションをとることにより、今の職場を客観的に見ることができるようになり、ひいては職場での自由な人間関係を築くことにつながります。勿論、副業がメインになって本業がおろそかになってしまうようなことは避けたいので、勤務時間等のルールを設けたり、優秀な人材には評価に見合った対価を与え、本業へのモチベーションを与え続けることが重要となります。

まとめ

労働者にとって、働く上で職場の人間関係は、賃金や労働時間等の基本的な労働条件に次いで重要なものとなっています。職場の人間関係を良くすることは、労働者の精神面によい影響を与え、職場全体のパフォーマンスを向上させるためにも効果的です。

管理部門として、職場の人間関係を良くするためにできることとして、まず職場の公式行事を開催することが挙げられます。新人歓迎会、納会、新年会など、節目の時に飲み会などを開催することで、緊張感がほぐれ、職場では話せないようなことも話すきっかけになります。ハラスメントに注意した上で開催しましょう。

次に、個人のスキルアップにつながるような情報を提供することです。例えば、雇用保険の教育訓練給付などの制度を活用するように勧めたりすることで、労働者が仕事に対するモチベーションを高めたり、職場に対する信頼や好感を高めることにつながります。

社内のクラブ活動を支援することです。趣味のクラブやサークルがあれば、共通点が増え、より親密な関係を築くことができます。会社が補助金を支給することで、様々な集まりができ、活発に活動することが可能になり、仕事にも良い影響を与えることになります。

また、より自由な異動希望を出せる仕組みを作ることも重要です。直接の上司の目に触れず、決定権がより上にあるような仕組みを作ることで、より労働者の希望を叶えやすい異動システムとなります。

最後に、副業を認めることがあります。特に社内勤務で内部の人間関係だけで仕事をしていると、新しい発想が得られなかったり、閉鎖的な関係の中で社内いじめなどのトラブルが起こることもあります。より広い人間関係の中で仕事をすることにより、職場の雰囲気が開放的で自由なものになります。本業より副業がメインにならないよう、勤務のルールや待遇面などを工夫しながら導入しましょう。